とある三人の決意
「はぁ…はぁ…」
荒い息をしながら、私はベンチに座り込む。
今は訓練時間。クラス全員が訓練場に集まる時間だ。
一週間に一度はここに集まり、訓練することが勇者の義務となっている。毎日来るような子もいるが。
「ユキ。少し君に話があるんだが」
私が休憩してると、騎士の一人が話しかけてくる。
「はい?何でしょう?」
私が答える。
「そうだね…とりあえず移動しようか」
騎士に手を引かれる。
私は大人しくついていく。
騎士はしばらく歩いたあと、小さな部屋に案内する。
中に入ると、刑事ドラマなんかでよく見る取調室のような場所があった。
中にはローブを着た老人がいた。
騎士は会釈し、私に座るのを促す。
「何をするんですか?」
私が騎士の目を見ながら言う。
「おや?すでに分かっているものかと思っていたが」
騎士が意外そうに言う。
そして再び口を開く。
「今回の目的は、勇者タカハシに関するものだね」
騎士が穏やかに言う。
やはり大輝達が報告していたらしい。
「助けられたって話ですね」
「そうだ」
騎士が答える。
「ヒロキの話では、確か盗賊たちを殺さずに捕まえたそうだが」
「はい」
騎士の威圧に耐えながら答える。
すると、横にいた魔術師が資料を机に並べる。
「これが、タカハシに殺されたと思われる人間の写真だ」
資料には、人間の死体がプリントされていた。
一応清掃はされているようだが、それでもかなり痛々しい。
「これは…?」
「タカハシに殺されたと思われる人間の遺体だ」
「えっ…」
つい声が出る。
「どういう…」
「どうもこうも、ここの写真は全員タカハシの被害者なんだ」
騎士が真剣な顔で言う。
「えっ…でも…高橋くんはそんな人じゃ…」
「遺体からアンデッドの魔力が検出された。タカハシのものと見て間違いないだろう」
騎士が信じられないことを言う。
だが、資料を信じるのであれば、高橋くんは人殺しということになる。
「君は、この事を知らなかったから、黙っていたんだね?」
「それは…はい…」
小さな声で答える。
騎士はそれを見て立ち上がる。
「それがわかって良かった。それと、次あってもタカハシに心を許さないように」
騎士がそう言って扉へ向かう
そして、何かを思い出したように歩みを止める。
「そういえば、タカハシから何か言われなかったか?」
「?いえ、何も?騎士に自分の事を秘密にしておけとしか。」
「そうか」
騎士はそれだけ言うと、ローブの老人を連れて部屋から出ていった。
「そうなの?高橋くん…」
私は、資料にプリントされた大河くんの顔を見つめながら言った。
もし…もし本当に高橋くんが魔物に成り果ててしまったのなら…
絶対に…止めて見せる。
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「本当に何も聞かされていないようですね」
たしか、ブランスという名前の魔法使いが言う。
「そのようだな。念のため始末しておくか?」
「いえ、あんなのでも一応は勇者です。生かしておきましょう」
プランスと会話する。
ユキの尋問は終わったが、結局なんの情報も得られなかった。
「廃棄勇者のことを知っているというだけでも危険なんだ。さっさと始末せねば」
足を鳴らしながら言う。
国王からの直接の命令だと言うのに、ここ数ヶ月は情報すら得られていない。
このままでは王国騎士としての面目がない。
「騎士様。お言葉ですが最も危険なのは廃棄勇者のことを知られているということではなく、勇者タカハシ自体であるかと」
ブランスが言う。これだから平民上がりの貧乏人は…
「はぁ…。いいか?大輝の報告を聞く限りではBランクだったと。確かに危険では在るが騎士団を出動させればどうとでもなる程度の戦力でしかない。それと、国の主戦力を失うかもしれない危険性など比べるまでもないだろう!」
「ですが…」
「ですがも糞も在るか!!今はただ奴を見つけることを考えろ!!」
そう言ってブランズから離れ、訓練場に向かう。
国王の命令だ…失敗すればどんなことになるか……
一刻も早く、タカハシを殺して見せる…
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騎士が去っていく。
私は王国の騎士団に所属する魔術師だ。
元々は国家親衛隊に選ばれるほどの実力を持っていたが、老いには勝てず、現在は騎士団にこき使われている。
「奴らは勇者タカハシの危険性を理解していない…」
小さな声でつぶやきながら廊下を歩く。
「通常であれば、レベルも低い子供がBランクのアンデッドになるはずがない。大体勇者がアンデッドになるなど前例が…」
これでも元は国家親衛隊だったのだ。
重要な機密事項も一通り知っている。
だが、勇者が魔物に変異するなど聞いたこともない。
「もし、もし…あいつが『超越者』になりうるなら…」
立ち止まり、頭を抱えて呟く。
「国家存続の危機だ…」
私はその場にうずくまる。
そして…再び立ち上がる。
「国の危機ならば、私が止めればいいではないか」
決意を目に宿し、そう言って再び歩き出す。
どんな手を使ってでもタカハシを殺して見せる。
三人が決意を持って歩き出す。
そんな大層な決意によって、国が滅ぶのは、少し後の話。




