転生。もしくは転移
説明会となります
声が聞こえる。
目がカピカピする。ちょっと何言ってるかわからないと思うが目を開けたまま寝ていた気分だ。
「では、早速...」
「いや、まだ来ていない。もう少し待つんだ」
薄暗い倉庫のような場所に、俺は...俺たちはいた。
目の前には、声の主であろう金色の刺繍があしらわれた白いローブを纏った老人と、同じ格好をした若い女がいた。
「あの...」
俺が話しかけると、老人はこちらを振り返った。
「ああ...起きたのか。悪いがもう少し眠って...」
なにか言いかけたところで、老人の胸ポケットが光る。
「いや、もういいか。」
老人が指を鳴らすと。俺の周りで寝ていたクラスメイトが起きる。
数名は寝たままだったが、いつの間にかいたローブの男に起こされていた。
「さて、君たちには今からこれをつけてもらう」
老人は悪趣味な首輪を取り出す。
いや何あれ?なんか黒いオーラみたいなのが出てますけど?
何なのだろう。なにかわからないかとじっと首輪を見つめていると。
【スキル〖鑑定〗Lv1 を入手しました】
頭の中に声が響く。
女性のような声だ。
てか鑑定って出たよな。これは異世界よろしくの鑑定でいいのか?いいんだな?
というかここ異世界?たしか俺、トラックに引かれた筈だし。転生?召喚?どういうことなんだ?というか今俺の頭の中に流た声は、神の声的な何かなのか?
疑問は尽きないが、とりあえずあの怪しい首輪を調べて見えることとする。
【〖奴隷の首輪〗】
...............それだけ?
まあレベル1って書いてあったしこんなもんか。
というか頭がくらくらする。軽い吐き気もする。これはなにか副作用のようなものか?
いや、問題はそこではない。奴隷の首輪?
こんなものをつけようとするなど、明らかにこちらに対して友好的ではない。
ここにはクラスメイトもいる。老人と女性だけなら戦ってもなんとか勝てるだろう。
しかし、先程男が現れたように、まだ誰か隠れているかもしれない。危険な行動は避けるべきだ。
俺が色々考えている中、声が上がった。
「いやいや、急に何なんなん?てかここどこ?」
優一の取り巻きその1、一村剛だ。顔もそこそこ良く、運動神経も良いが、それもそこそこで、完全に優一の劣化版だ。唯一優一に勝っていることと言ったら、素の力くらいか。ちなみに頭が悪く、学年最下位成績を持っている。
「やれ」
「おい、無視してんじゃ...」
直後、陰から老人と同じような格好の男が数十人現れ、クラスメイトに首輪をつけようとする。
「おい、なにしや...」
「きゃあああああああああああ!!!」
悲鳴が響き渡る。と、その時。
「突撃ーーーーー!!!!!」
騎士のような格好をした人たちが建物の中に入ってきた。
彼らはフードのを取り囲むと、抵抗を許さずに捕まえた。
あまりにもあっさりと捕まえたので、一瞬お芝居なのかと思ってしまった。
「大丈夫かい、君たち?」
騎士の団長らしき男が俺たちに話しかけてくる。
クラスメイトはパニックとなり、誘拐だと口にするものもいれば、騎士団長らしき男に恍惚とした表情を向けるものまでいた。
「すみません。私ちょっと理解が追いつかなくてっ、...」
慌てふためきながらも話しかけるのは副委員長の鈴木由紀だ。
面倒見が良く、しっかり者であることから、多くの人からは委員長より委員長してると評判である。が、気が弱く、何かを決定するのを戸惑ってしまうことがある。
ちなみに委員長は安志である。自ら望んだというより勝手に決められての決定だったが...
そんなことはどうでもいい。ここはどこなのか、このスキルっぽいのは何なのか。
この男ならなにか知っているかもしれない。
「無理もない。なにせ異世界から急に呼び出されたわけなのだからな。」
ファ!!??
はい。今この瞬間、俺の異世界転生が確定しました。
いや落ちつけ! 落ち着くんだ!まだ確定したわけじゃない。
ともかく男の話を聞いてみることにする。
「まず君たちはあの魔術集団によって違法に呼び出された勇者なのだ。」
「「「「「「「「????!!!!」」」」」」」」
落ち着けるわけがなかった
結論から言うと、俺たちは魔王を殺す使命を持った勇者なので、これから城で訓練を行い、魔王を倒すための力をつけるのだという。
「召喚は本来、王の間で行われるはずだったのだが、必要な魔導具が盗まれてしまってな、よもやこんなところで行われているとは」
この騎士団は、魔導具を探すために配備された特別部隊なのだそうだ。
そして、騎士団があれこれ説明している間に俺の所持金は500Gほど増えた。
…………うん。結論から言おう。盗んだ。
いやだって俺たち奴隷にしようとした連中よ?
奴隷にされかけた俺の正当な権利だと思わない?
それに俺も小遣いが欲しくてくすねた訳では無い。
そう。これは俺の大いなる目的のための必要経費。
一人旅用の費用なのだ。