勇者と死霊
どうしてこうなった…
どうしてこうなった!?
ううう…!
ポテイエリアは、魔物が侵入したことで大騒ぎになっていた。
廃棄勇者達を孤児院に連れて行くだけだったのに…
「どうしたんだその…姿は」
俺が心の中で悶絶していると、大輝が聞く。
「あ〜これ?気になる?」
気怠げに答える。
もう敬語とか使わない。
魔物になってまで人間に媚びへつらうのはあんまりだし、何より今はそういう気分じゃない。
「脱走してからさ、ゾンビに殺されちゃってさ。な〜んか生き返ったらこうなってたのよ」
適当に答える。
廃棄勇者のことを話そうと思ったが、どうせ信じで貰えないだろうと思い、やめた。
なんだか…なんだか凄くスッキリした気分だ。
転生前は皆の顔色を伺ってばかりだったからだろうか。
適当にあしらうって頭使わないから良いな。
そういえば異世界に来て旅に出たいって思ったのも、何にも気を遣わずにのびのび暮らしたいとか考えてたからだったな。
「おい!お前ホントにもやしなのかよ!!」
「はいはいもやしですよ〜」
適当に答える。
「でも…モンスターだし…」
チンピラが言い淀む。
それにしてもこいつ誰だっけ?
クラスにいた記憶はあるが名前が思い出せん。
「そういやお前誰だっけ?」
「あ”あ”!?てめぇっ!!」
「いや檻の中でイジメてくださったのは覚えてるんだけどさ、名前が浮かんでこなくで」
「あ”あ”!!!教えてやるよ!!!俺はこの一ヶ月で一番早くレベルの上がった天才、岡崎大河様だよ!!!」
ウワースゲー
一応、ここに来るまでにレベルが5になった【鑑定】を使っておく。
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名称:タイガ・オカザキ
Lv:23
HP:120
MP:57
適性:暴、悪
ステータス:
攻撃力:143
防御力:156
魔法力:57
素早さ:84
固有スキル:
【身代わり】Lv2、【騙し討ち】Lv5
通常スキル:
【剣術】Lv:2、【恐喝】Lv:3、【拳術】Lv:2
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【〖鑑定〗のレベルが5から6へ上がりました】
問題のないただの雑魚だ。
いや弱いわけではないんだろうけど、俺が魔物になった時にかなり強化されたからな。
「ふっその程度か」みたいなね?
というかスキル構成がチンピラすぎる。
これ称号に【チンピラ】とかあるんじゃないか?
レベルも上がったし、もう一度鑑定してみるかな?
いやこいつのことなどどうでもいいのだ。
俺は大輝の方を見て鑑定する。
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名称:ヒロキ・ワタナベ
Lv:19
HP:241
MP:168
適性:聖、剣
ステータス:
攻撃力:259
防御力:274
魔法力:168
素早さ:138
固有スキル:
【聖剣】Lv3、【聖弾】Lv5、【身体強化】Lv:2、【聖結界】Lv:2
通常スキル:
【剣術】Lv:4、【統率】Lv:3、【話術】Lv:6
称号:
【勇者】
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問題なくない。
普通に強い。
いや何?レベル19でこの強さ?
元々がよっぽどのチートステータスでなければレベル19でここまで強くならんぞ。
おそらくだが、異世界チート組は俺が魔物になったときと同等ほどの強化をレベルアップするたびに受けているのだろう。
そうでなければ大輝が安志や優一とは比べ物にならないくらい強いことになってしまう。
まぁ今の俺なら負けることはないが。
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名称:ダーツ・ユーリッド
Lv:68
HP:305
MP:275
適性:身体強化、剣
ステータス:
攻撃力:328
防御力:385
魔法力:275
素早さ:197
固有スキル:
【剣強化】Lv6、【鋼防御】Lv5、【身体強化】Lv:6、【聖剣技】Lv:4、【限界突破】Lv:4、【衝撃派】Lv:5、【背水の陣】lv:4【痛み分け】lv:2
通常スキル:
【剣術】Lv:6、【統率】Lv:5、【解体】Lv:6、【連携】Lv:5、【忠誠】Lv:8
称号:
【王国騎士】
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どちらかといえばこの騎士のほうが警戒しなければならない。
戦闘になったときのために常に意識を割いておくか。
と、大輝が話しかけてくる。
「高橋。お前の身勝手な行為のせいでみんな気が気でないんだ。戻ってちゃんと詫びろ」
「なら俺は生きて楽しく旅してるよ〜って伝えとけばいい。俺はクラスメイトに会おうと思ってここに来たわけじゃないんだ」
「お前...」
「俺みたいな雑魚勇者、マオウグン倒すのに必要ないでしょ?お前だってどうせ俺連れ戻していい子ぶりたいだけだろ」
大輝に言う。
こいつはこうして自身の評価を上げるのが大好きなのだ。
そこを指摘されると、今みたいに青筋を浮かべてキレる。
もっとも、大輝の本性を知らないクラスメイトにとっては、俺が皮肉を言ったようにしか聞こえないだろうが。
すると、横から騎士の声が響く。
「一つ言っておくと、君はもう人間ではないんだ。我々に敵対的な態度をとったり、野良で好き勝手やるようであったら即刻処分しなければならない」
「いや...俺は変なことはしないって」
「魔物の言うことは信用できない」
くそぉ...
この騎士口がうますぎる。
いや単に俺が口下手なだけか。
いずれにせよ、俺としてもここでこいつ等との戦闘は避けたい。
「わぁかりましたよ。で、じゃあ俺はどうすりゃいいんだ?このまま見逃してもらえるってわけじゃないだろ?」
騎士の方を見る。
「そうだな。とりあえず城まで来てもらおうか」
騎士が後ろをむく。
そこで何かを思い出したように言い出す。
「ああそうだ。君には魔力を抑える首輪をつけてもらう」
騎士はクラスメイトの一人に会釈すると、運ばれてきた首輪を手にする。
騎士はそれをこちらをへと差し出す。
「これを」
「はいはいわかりましたよ」
はぁめんどくさい。
そこまで俺のこと警戒するなよ...
まぁ、なんかあったときのために一応鑑定してみるか。
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【聖人の首輪】
【聖なる魔法が込められた首輪】
【これをつければ、どんな悪人もたちまち聖人になってしまうことから名付けられた】
【不純な生を持つアンデットがこれをつけると、消滅する】
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あっっっっっっっぶねえぇぇぇえぇぇぇぇぇ!!!!!
死ぬとこだった!
鑑定しようと思った過去の俺に感謝!!
よく考えたら廃棄勇者のことを知ってるやつを生かしておくわけないよな。
騎士はなんともないような顔をして俺に首輪を勧めてくる。
「どうした。早く首輪を...」
「それ付けて俺を聖人にしようってか?」
「...」
直後、騎士が俺に斬りかかる。
俺はあっさりと躱し、距離を取る。
「皆!!戦闘だ!!!陣形を組んでこの魔物を殺せ!!!」
騎士が素早く言う。
「えっ!!えっ!!はいっ!!」
「わかりました!」
勇者たちが素早く陣形をとる。
「きゃあああああ!!!戦いよ!!!」
平民のうち一人が言う。
「皆逃げろ!!!」
「うわああああ!!!死にたくないいいいい!!!」
集まりつつあった野次馬も散り、街は再び絶叫に包まれた。
こうして、後にポテイエリアで語り継がれる、勇者VS死霊が始まった。
鑑定のレベルが上がるのが早い件についてですが、もやしは移動する度にそこらへんの草やら石やらを鑑定しまくっています。
こんなことしたら、普通の人間であれば脳が焼け焦げて死ぬんですけどね。
今から書き足しても、文章にうまく組み込める気がしないので、ここに書いておきます。