プロローグ
俺は学校で嫌な思いをしていた。
イジメと言わないのは、行為がクラスのカースト上位による嫌がらせ程度でしかないからだ。
俺自身も心からやめてほしいと思っているわけではない。ただ、あいつらの顔を見るたびにあのチンピラのような笑みを思い出すので極力関わらないようにしている。
今日は月曜日。多くの人にとっては一週間で最も、俺にとっては二番目くらいに憂鬱な日だ。
教室のスライド式のドアを開ける。あいつらはまだ来ていない。ほっと胸を撫で下した時、後ろから声がした。
「もやしじゃん。今日早いなぁ〜?」
振り返ると、嫌な顔がそこにはあった。
「うn...おはよう」
舌がもつれてうまく喋れなかったが、こいつにはこれくらいの対応が妥当だ。
「なんか元気ないねぇ〜。まあどうでもいいけど」
どうでもいいなら話しかけんなよというツッコミを押し殺し、そいつの頭を見る。少し雑なツーブロックに、平均よりやや高い身長。制服は自分と同じもののはずなのに、ややチャラい印象を受ける。このクラスのカースト最上位、「流石優一だ」。
優しいなんて漢字がついているが、性格は横暴の一言に尽きる。そして、俺のいう「あいつら」のうち一人だ。運動神経がよく、更にイケメンで、女子にそこそこモテるとかいう恵まれたスペックを持っている。この点は、名前の通り流石というほかない。もう少し性格が良ければ、学年の王子様ポジも狙えたであろうに。
「んじゃあなぁ〜」
優一が走り去っていく。本当に嵐のような人間だ。
俺はややオタク気質な陰キャである。肌が白く、少し痩せている。優一一行からはもやしなんてあだ名が付けられているが、別にそこまで痩せているわけでもない。変な呼び方はやめてほしいものだ。
もうすぐ朝の会が始まる。ちなみに、これまでに俺に話しかけてくれた人はいなかった。すると持っていた鉛筆が落ちる。消しゴムならいいが、鉛筆は芯が折れるのですごく嫌だ。だからなんだという話だが…
鉛筆はカッという鋭い音を響かせて、バウンドし、とある机の下に落ちる。俺が鉛筆を拾おうと近づくと、机の主が大声を上げる。
「わあああああああ!もやしがこっち来たあああゝあwwwwww!!!」
このやたらと高い声の持ち主は「山崎桃奈」だ。さっさと家に帰ってほしい。
「まじでお前ガリガリだよね!?何食ったらそうなんの?!」
低い身長にショートカットで、白いカーディガンを羽織った彼女は、いかにもギャルといった雰囲気を醸し出している。
「別に普通のもん食ってるよ…」
少し疲れたように言うと、彼女はふーんと言い、興味を失ったようでそっぽを向いた。しかし桃奈よ。遅いんだ。お前が上げた奇声のせいであいつらを含んだクラス中の意識が俺に向いているんだ。
だが、予想に反して何かを言われるようなことはなかった。一人の男子が教室に入ってきたからである。
彼はおはようも言わずに席に向かった。しかし、そこに優一がタックルを決める。
「随分遅いじゃねえか?あ”ゝ!?おはようも言えねえのか?」
優一の後ろで嘲るような笑いが起こる。
「おはようくらい言えよ!?そんなんもできないん?」
優一の取り巻きが言う
罵倒された少年、中津安志は、無視して席につく。
…俺が自身が受けている嫌がらせをイジメとしないのは、安志が受けている行為に比べれば自身への嫌がらせなど大したものではないと感じているからである。
優一が無視してんじゃねーよと悪態をつきながら近づこうとしたろころで、先生が入ってきた。
「ホームルーム始めるぞ〜」
優一が席に戻り、ホームルームがはじま…
ガッシャァアアアアアアアアアアン!!!!
…らずに、俺は意識を手放した。ぼやける視界の中で、かすかに2つのライトと飛散る血肉が見えた。
一作品目です。投稿ペースも不定期になりそうです。都合のいい状況や展開が存在しないリアルな異世界旅みたいなのを書こうとしてできた作品です。拙い文章ですが、何卒よろしくお願いいたします。