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帰り道、バッティングセンターでの出来事。

作者: 楓

これは、今から数十年前の出来事、あの日のことを今でも鮮明に思い出す。


「今度の日曜日、蓮とご飯食べに行こうと思っているけど、楓の予定はどう?」

私は、ちょうど日曜日は予定がなかったので、

「いいよ」と返信した。

「じゃ18時頃に迎えに行くから」と返信が来た。

当日、碧が約束通り、18時に車に乗ってやってきた。車に近づくと助手席のウィンドーガラスが開き蓮が手を挙げて合図した。

「やあ、久しぶり」

「久しぶり」と言いながら私は後部座席に乗り込み碧は街中まで車を走らせた。


車の中は子供の頃の話で盛り上がり、ご飯はお腹が空いたからいっぱい食べれるところにしょうと言う話になった。

地元では、有名な大盛りレストラン。

9月末日ともなると日没も早く、店に入る頃には薄暗くなっていた。

店の中に入り座席に座り碧と蓮が一緒に座り私は1人で座る。

2人はワンプレートに山盛りのピラフにハンバーグにエビフライ、サラダが乗っている。私はスモールにしたが、それでも多い。


話は最近の話題になり、蓮が急に怖い話を始めた。

「前のホラー番組見た? あれ怖くなかった?」

私は、怖い系の話は大の苦手で小刻みに首を振りながらもうやめての合図を送るが、2人は全く気づいていない。

碧も便乗し、

「それは見てないけど、怖い体験ならしてる。っていうか、ここでも心霊系の話になるなんてちょっとやばいな」

と独り言のように呟いた。

何この意味深な発言と私は思った。

「えー何なん。碧、なんかあったん」と蓮は聞きたそうにニヤニヤしている。

「んーまあちょっとこの1週間色々あって、話すと8時間かかるかもしれんから、ちょっとこのレストランでは話しずらいな」

「いや、2人とも怖い話は終わり、ご飯食べ終わったからここを出よう」と私。

「楓は怖がりやから、やめようか」と蓮。


お店を出る頃には、当たりは真っ暗となり街頭が点滅していた。なんだか不気味な気がして早く車に乗り込んだ。

碧は運転しながら「もう帰る? どうする?」と言いながら、行き先は帰る方向に向かって車を走らせている。

「うーんそうやね。どうしよう」と私は後部座席に乗り、助手席と運転席の間から顔を出し2人に伝える。

「とりあえず、トイレ行きたいから近くのコンビニに寄ってもらってもいいかな?」と蓮。

碧は近くのコンビニに車を止めた。


お店の中に入り蓮がトイレに行っている間、私と碧は本棚コーナーで雑誌を見ていると、碧がケータイを見ながら、顰めっつらの顔をして携帯を前後にしながら何度も画面をのぞいていた。

「やばいな。楓、これ何に見える? この人の後ろになんの動物がいると思う?」と携帯を私に渡す。

よく見るとファミリーレストランの中に笑顔の女性がピースをしている、なんの変哲もない画像。

「どこ?」と聞く私に碧は、この部分と女性の後ろを指差しながら丸で囲む。

「あゝこれ猿!?」

「やんな。やっぱり猿に見えるよな。」

「はっきり見える」

「これ、あまり、あれやけど、この女性の人がサファリパークに行きたいって言って、昨日、案内したんやけど、もしかしたらこのサファリパークから猿の霊を連れて帰ってるかもしれんわ」

「ええ、そんなことあるん」

ガシャンと蓮が出てきた。碧が蓮にも画像を見せる。

「これ、猿に見えるだけじゃない。偶然見えるだけ」

とあまり気に求めず2人の反応は、正反対。

みんなコンビニで飲み物を買った。


店を出て駐車場で、碧が私と蓮に向かって

「なんかさ、こう、このまま帰るのもちょっとなー。霊の話とかさ、吹っ飛ばしたいな。バッティングセンター行かん! 気分変えよう! このままじゃスッキリせんから、、、」

とサッカー少年が野球の話をしている。

「まあ、気分変えるなら良いよ」と私は賛成。

「蓮は?」

「もちろんいいで」と即答する。

3人は車に乗り込み、碧がエンジンをかけた。


なかなか碧は出発しようとしない。

「どうしたん?」と聞く私に碧は答えた。

「ごめん、ちょっと、昨日、買った塩が車にあるからタイヤに巻いてくる、じゃないと事故に合うかもしれんから」と言って運転席の下から塩を取り出し4本のタイヤに塩を撒き始めた。

私は思う。この男は一体なぜ塩を車に乗せてるのか、1週間、色々あったと話してたけど、昨日、塩を買った? ってことは、昨日の女性と塩を買ったのか? それにしても異常だ。


コンビニからバッティングセンターまでは少し離れている。

碧は運転しながら、真剣な口調で呟く。

「本間、みんな。塩の力ってなめてたけど、本間に凄いから! でも人口の塩はだめ、粗塩じゃないとだめ、さっきタイヤにかけたのは、粗塩やから大丈夫やと思う。とりあえず、蓮も楓も舐めておいた方がええで。騙されたと思って」

運転しながら碧は蓮に塩を渡そうとした。

「いや、いいわ、本間に言ってるん?」

「そら、急に言われたら拒否するよなってゆうか、俺が舐めてないから拒否するのも当たり前か。じゃ俺、舐めておくわ!」

と言って運転しながら粗塩を摘んで舐めた。

「蓮、とりあえず騙されたと思って」と言って蓮に粗塩を渡す碧。

碧はなぜそこまでするのだろうか。舐めるわけないやん! と私は2人の会話を聞きながら思った。

「でも、碧がそこまで言うならちょっとだけ舐めておくわ」

「ええっ」と私は、思わず声を出してしまった。

「楓は?」

「いや、私はいいや!」

「いや、本間ちょっとでも舐めて置いた方がいいで、本間、効力がすごいから!」

何がすごいのだろうかと疑問。

「いや本間にいい!」と私は、両手を顔の前に出して拒んだ。

「まあ、正常な人間の判断やな、ごめん無理させてもた」

苦笑いの碧だけど、私は塩を舐めるなど到底できなかった。


駐車場に着き、車を止めて、3階まではゲームセンター、4階の屋上にバッティングセンターがある建物に入った。

階段を登り、バッティングセンターの扉を開けた。

「よし、とりあえず打とう!」

とサッカー少年の碧がテンションを上げている。

「楓がいるから、俺もスピードが低いところで打つわ。70キロのところで、蓮は90キロコースでもいいよ」

「じゃ遠慮なくそっちで打たせてもらうわ」

「私、70キロでも打てないわ」

「まあまあ、俺から打つから」と言って碧は70キロのバッターボックスに入った。

バットをホームランプレートにかざしてからバットを構えた。予告ホームランでプレートを狙っているのだろうか。

碧はフルスイングでボールを捉えることなく終わった。

「こんなもんかな」と言いながら碧は苦笑い。

横のレーンで蓮がスピード早い球を何球か捉えていた。

「じゃ今度は楓、打ってみる?」とバットを碧から受け継ぐ。

「じゃ行くよー」と少し打てそうな気がしてバッターボックスに入った。

1球、2球、3球と打てない。4、5、6球、今度こそ!と思った時、

ピッチングマシーンがドン! ドン! ドン! ドン!と鳴り響きボールが全く出て来なくなった。

「ええ!」と思わずバットを持ったまま振り返ると碧も首を傾げていた。

「とりあえず、バックネット裏に来た方がいい、急に球が出てきたら危ないから」

私はバックネット裏に行った。

まだ、ドンドン鳴っている。

「店員さん呼んでくる! 蓮、楓をよろしく」

碧が店員を連れて来てもまだドンドンと鳴り続けるピッチングマシン。

店員が一度、電源を切り再起動させて正常な動作を確認し戻ってきた。

「球が詰まっていたのですか?」と碧。

「いや、球は詰まっていなかったんですが、元に戻ったので打てますよ」と店員。

私は、ヘルメットとバットを碧に押し付け続きを打ってもらった。

「あかん、一発も当たらんわ。今日は、打てないな」と残りの球もフルスイングで一発も当たってなかった。

そのまま70キロのレーンを続けて碧が入りようやく何球か当たった。


「機械もとに戻ったんや。90キロもなかなかいいで」と横のレーンで蓮が何発も当てている。

「もう機械直ってるから、楓も打ったら」と碧がバットを渡して来た。

「よし、今度こそ!」両手でバットを受け取りヘルメットを装着しバッターボックスに構える。

1、2、3、4球目でやっと当たった! 5、6、7、8球目も空振り。

次こそ!と思った瞬間、

また、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン! ピッチングマシーンの唸り声ごとく鳴り響く。

私は、不意に足をジタバタさせながらバットを両手で縦に持ちバックネットに振り返った。

「また!?」碧が驚きながら叫んだ。蓮もこっちを見てた。

「ちょっと店員さん呼んでくる!」と走って碧は呼びに行った。

私は、蓮のバックネットの後ろに移動した。

「また止まったん!?」と蓮。

碧が店員に状況を説明しながら戻ってくる。

「こんなことって普段ありますか?」

「いや、今までに2回連続で止まるのはないですね。そもそも球詰まりでもないので、ちょっと何でしょうかね」

直しますのでと言って、店員はドンドンと鳴り響くピッチングマシーンを止めてボールが出るのを確認し戻ってきた。

「これで直りましたんで打ってみて下さい」

「楓、直ったから打つ?」と碧が言うが、私は全力で首を振った。

「もういい、もういい、私はいいから!」

「そやね。これもう無理やね。」

「ちょっと残りは俺が打つわ」と言ってまた碧が打ってくれた。


蓮ももう十分に打ったようで、なぜか私だけスッキリできていない。むしろ怖くなった。そう思った時、

「楓、全然、打ててないから、最後に蓮のコースで打ったらいいんじゃない。90キロだけど気合いで打てるでしょ」と碧。

「こっちなら全部出てきたし、70キロのコースは調子が悪かったから、90キロでチャレンジ、チャレンジ!」と蓮は拍手しながら楓を90キロコースに立たせた。

私もその気になり絶対、一発はあの上のホームランのプレートに当ててやると思いバットをフルスイング。

なかな当たらない。球も順調に出てくる。しかし、70キロに比べスピードが早い、このスピードで蓮は何発も当ててたなんてさすがだ。

8球、9球、10球、あと半分、集中!集中!

ドンドンドンドンドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!さっきよりもかなり強く鳴り響いた。唸り声に近いような音、暴発しそうな音。

「あかん、もうだめ」

私は、急いでバックネットの後ろの観客席というか、仕切りの奥までバットを持ったまま移動した。

「うわ!」と蓮もびっくりして、私のあとに続き、碧も顔を背け、なんだか顔が引きっつていた。

「碧、早く店員さん!」

碧は正気を取り戻し「分かった」と走った。

碧と店員が走って戻ってきた。店員も首を傾げながら機械を再起動して戻ってきた。

「隣のコースで止まるなんて、ちょっと原因は球詰まりでもないですし、、、」と店員も首を傾げながら碧に伝える。

「一応、直りましたが、打たれますか?」と店員も辿々しい。

「いや、あのー、帰ります」と碧が店員に告げる。

「よかったらこれ、お詫びのクレーンゲーム無料券です」と店員はウエストポーチから券を出して来た。

私は、絶対いらないそう思った。

「はい」と碧は受け取る。

「もらったけどやって帰る?」

一刻も早くここから出たい。そう思い私は首を振る。

「碧、帰ろか」と蓮も私の味方。

「俺も速攻で出たいけど、もうここには来ない気がするから、これだけ使って帰ろう」

こんな時にもったいない精神はむしろ邪魔です。

碧はクレーンゲームを手短に終え、3人は車に乗り込んだ。


車を走らせて帰路に着く途中に碧が話し始める。

「さっき、楓が90キロのコースでピッチングマシーンが止まった時に、俺、怖くて後ろに目を逸らしたんやけど、その後ろがガラス張りで、そこに緑色で、こっちをみている女の人がそのガラスに写ってたんやわ、しかも、それが、昨日、サファリパークを案内した知り合いの女性と関係合って」

「その女の人は猿の画像送ってきた人?」

「そう、その人のカメラでサファリパーク周りながら記念撮影してたんやけど、一枚、妙に怖い写真が映ったんやわ」

「どんな写真?」

「それが、車で各セクションを回って行くんやけど、トラのエリアでその女性を運転席から撮った写真があって、案内した女性がピースしてこっち向いてるんやけど、その女性の顔の横に重なるように、こっちをみている女性が写り込んでて、その写り込んだ女性が、さっきのガラス一面緑色でこっちを見てて、しかも目が合った感じがしたから、マジ怖かった」

「それが本気なら、マジやばいやん」

「やんな、ちょっと無事みんなを家に送れるかな」

「怖いこと言わんといてよ」

「それで、その案内した女性はサファリパークから帰る時に、急に湊にも会いたいなって言ってきたんやわ」

湊は中学校からの友達で3人とも知っている。聞くと碧と湊とサファリパークを案内した女性は知り合いらしい。

どうやら、碧は女性とサファリに行ったあと、湊と合流した。湊はサファリパークの写真を見るなり頭が痛くなり、霊能力の知り合いに電話し、粗塩を買い自分たちの体に振った瞬間、体がかなり軽くなったのを感じたらしい。そして、その霊能力の知り合いから、あなたたちが無事に帰るならブレスレットを買いなさいと言われ近くのショッピングモールでブレスレットを買って帰ったらしい。それで昨日は無事に家に帰ることが出来たと碧は話したのだ。


「今日もちょっと、やばい気がするから一旦、湊に電話してもいい?」と碧。

私たちは、帰路の途中、湊の家に立ち寄ることにして、無事に湊の家に到着。湊を乗せた。

「蓮、楓、久しぶり! 今日もお前らなんかあったんか、とりあえず、俺が来たから大丈夫!」

頼もしい。ちょっと安心だけど、やはり怖い。もう夜も深い。

湊の腕にブレスレットが、碧はブレスレットはしていない。

「あれ、碧、昨日のブレスレットしてないやん」

「ちょっと忘れてて」

「運転手がしてないとか、危なすぎるんじゃない、蓮と楓の家の途中に碧の家があるから、取りに帰った方がええやろ」

「そうやな、とりあえず無事にみんなを家まで送り届けるから俺の家にもよるわな」

私たちは、碧の家に立ち寄ることにした。碧はブレスレットを見つけすぐに帰ってきたが、その手にはなぜか昨日お土産で買ったであろうサファリパークのぬいぐるみを手にして戻ってきた。

いや、なぜ、今それを手に戻ってくるのか理解に苦しむ。

碧もハッと手をみて「なんでやろなんか持ってきてるわ、なんか持ってこな、あかん気がした」

「まあまあ、碧がそう感じたなら守ってくれるわ、行こう!」と湊。

と車を発進させ蓮を家まで送り、私も無事に家についた。

あのあと、湊を送り碧も無事に家についたとのこと。


その出来事から数日、私はずっと軽い頭痛が続いていた。仕事帰りになんとなく立ち寄った神社。

そこは、幼い頃からよく親と行っていた神社。

神社に立ち寄った日から、頭の痛みがすっーとなくなった。

神社に寄ったあと、あの日の夜のことを思い出し護神用にブレスレットを買った。

その出来事から数年後、碧に久しぶりに会った時にブレスレットを見せた。

あの日からずっとつけてることを話すとびっくりしながら、頷いてたのを今でも思い出す。

もしあの時、私が粗塩を舐めていたらピッチングマシーンは正常に動いていたんだろうか。

振り返ると9月の秋のお彼岸だった。それも何か関係していたかもしれない。

はたまた、碧の一週間に巻き込まれた可能性もある。画像の写真の女性が猿を連れて帰ったように、碧がその女性の霊を連れて帰ったのだろうか。

湊がそのサファリの写真を見た時、頭が痛かったように私にもその現象が起きたのだろうか。

考えるほど分からない。

何が要因かわからないけど、この世界には不思議なことは起こると言う事実は確かだ。



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