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デス・ドリーム  作者: T.HASEGAWA
惑星〈ドラン〉
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惑星〈ドラン〉4

「おれがこの事件に関わったことさ」

「しょってるわね。自信だけは人の十倍はあるみたいね」

『そうともいい切れんぞ。なにしろ彼は王国の英知アーノルド・セイヤーだ。なにかいいアイディアを出してくれるに違いない。おっと、そういえば挨拶もしていなかったな。セイヤー博士。久し振りじゃな』

「じーさんも元気そうでなによりだ。一年ぶりかな?」

「ちょっと待って、二人とも知り合いなの?」

「数回しか会ったことはないけどね」

「おじいちゃん酷いじゃない。あたしがずっと前からセイヤー博士に会いたがってたの知ってたはずなのに黙ってるなんて……」


 メカフェチのクレアはとにかく最新の機械が好きで、特に兵器や宇宙船、コンピュータ等の新型が出ると、触ってみずにはいられないほどだった。それで、この分野での第一任者セイヤー博士の次の発明品が、気になって仕方がなかったのだ。


『すまんすまん。報道管制が凄かったからな。セイヤー博士個人に関わることは親兄弟とはいえ、話すことまかりならんと、きついお達しがあってな』

「確かに、ほとんど情報が入ってこなかったし、私立探偵に調べさせようとしたらいきなり断られたりで、確かに凄いとは思ったけど、親兄弟にも話すなってのは行き過ぎじゃない?」

「そうでもないさ。前の女王様には替え玉を使った方がいいっていわれたんだけど、それじゃその人が危険になりすぎるから、架空の人物を作りだした。でもあんまり報道されるとばれるから厳しく報道規制したんだ。なにしろおれの発明品の中にはけっこう危ないのがあるから、誘拐はもちろんのこと、そいつが市場に出回ると困るやつらからは、殺し屋を差し向けられるわで、けっこう大変だったんだぜ。でもこんな辺境の海賊にばれてるってことはそろそろ限界かな?」

『そうだな。表の世界なら報道管制も利くが裏の世界では、規制のしようがないからな。ぼちぼち明かしていくしかないじゃろう。それよりも今の状況をどうするかだ。このまま海賊どもが約束通り解放してくれたとしても王国には打つ手がない。

 約束を破ってわしらを皆殺しにしたとすれば王国はこのことを知らず、気がついた時には、王国、いや、銀河中が麻薬づけになっているだろう』


「それについては、すぐに答えが出るようなことじゃないので、後で考えてみますが、暗号を解くのに、後どのぐらいかかると思いますか? もしおれが連絡を入れなければ、次の捜索隊がくるでしょう。そうすれば少しはチャンスがあるかもしれません」

『暗号化のアルゴリズムは十分複雑だし、キーワードもかなり大きな乱数表を使っているから、そうとうてこずるはずだ。しかしこの基地のコンピュータは、惑星開発シミュレータを快適に動かすために、単体としてはおそらく最大規模じゃ。それに海賊どものコンピュータを繋ぎ能力を高めている。たぶん一週間ぐらいしかもたんだろう』

「一週間か……。おれが出発したのは五日前だ。一週間連絡がなければ次の捜索隊が出発する手筈になっているが、それでも二日後だ。それからすぐに中央から出発したとしても旧型なら一週間以上かかる。新型でも三日。向こうがどういう手筈を整えているかは知らんが、早くてもあと五日はかかる」

『こんな辺境ならば事故など当たり前だ。しかも、障害物の沢山あるこの宙域では一日や二日通信が途絶えるなど、珍しくない。そんなところに、新型の船を派遣するなどちょっと考えられん。さすがに一週間以上連絡がないと心配するかも知れんが……』

「あたしとミリナがいるんだもん。きっと新型で来てくれるわ。だってパパ、親ばかだもん」

「そうね。クレアのパパって、普段はきりっとしてるんだけど、クレアに甘えられると、みる影もないくらい崩れちゃうの」

『今なぞまだましじゃわい。クレアが生まれた時は仕事そっちのけで、そばからは離れようとせんかったからな』

「でもそれって、おじいちゃんも同じじゃない。こーゆー場合って、じじばかっていうのかな?」

『こら一本取られた。ミリナにはかなわんわ』


 グロムは、頭をかきながらてれ笑いをした。


「おっといけない。また二人のペースに乗せられてしまった。とにかく、向こうがどういう準備を進めているかわからない以上、あてにするわけにはいかないでしょう。一応こちらで色々な状況にあてはめたシミュレーションをしてみるつもりですが、最悪の事態は覚悟しておいて下さい」

『うむ。わかった。いま動けるのは君だけだ。君の判断に任せよう。もし、わしの命とクレアの命を引き替えにしなくてはいけない時は、迷わずクレアを助けてやってくれ』

「そんなこといわないで。あたしが絶対助けてあげるから。まだまだおじいちゃんにはじじばかしてもらうんだから……。あの船壊れちゃったから新しいの買ってもらわなくちゃいけないし、今度出たミニジェットも欲しいし。あっ、そうそう、今度テラに連れてってくれるって約束覚えてるよね?」


 クレアがなきべそをかきながら、喋りたてる。


『わしだって未練はある。まだまだ死ねん。だいじょうぶ、なんとかなるさ』


 グロムは優しくクレアにいった。


「それじゃあ変わった動きがあったら、また連絡して下さい」

『そっちもわしに聞きたいことがあったらいつでも連絡を入れてくれ』


 通信が切れ、クレアの鼻をすする音だけが残った。


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script?guid=onはじめてのぼうけんはおにいちゃんと~JSハーレムキングと呼ばれても冒険者はやめません~
を連載中です。こちらもよろしくお願い致します。
異世界のジョブズに、僕はなる ~定年SEの異世界転生業務報告書~
もよろしくお願い致します。こちらは異世界ファンタジーになります。
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