雨乞い2.14の異世界は中世ファンタジーより酷い
「まずはヒャッハーじゃ」
「意味がわからん」
『そうですね~どう説明すれば』
俺達は死が隣から肩を組んでくる森からようやく脱出できることが出来た。ただ義輝ちゃんの発言で迂闊に行動することが出来なくなったのだ。
よく転移者が道を見つけて歩いて人のいる場所に行こうとするよね。それを義輝ちゃんに聞くと。
「よくそんな危ないことをするの~、半日もせずにヒャッハーに見つかって惨殺パーティーが始まるだけじゃぞ。あ、余は今はおなごじゃからしばらくは生き残れるが・・・嫌じゃのー」
と言うことらしい。
で、隠れて村に行こうと提案すると。
「まともな村長でなければヒャッハーよりタチが悪いのじゃ。特にフンドシまる出し達はシャレにならん。あやつらは近隣の村を襲っておなごを攫うし、ヒャッハーなんぞ現代風に言うとボーナスと言うんじゃったな。フンドシ連中は喜んで狩るのじゃ」
「俺ようやく異世界に転生したのを実感したよ」
『さすが血と鮮血が飛び散るほのぼの村育成ゲームを基本にして作られた異世界です』
マジどうしよう。
この世界では人を信じてはいけないがデフォなのか?
「まったく人は人を信じないと生きていけないのにな」
「余、これほど信じるという言葉を吐くのが似合わん奴は大名でもおらんかったと思うのじゃ」
『ご主人様は全ての人は自分に役立つか役立たないかでしか判別できと思ってました』
なんだよぅ、たまにまともな事を言ったら全否定かよぉ。テント張って三日ほど籠るぞ義輝ちゃん込みで。
しかしどうするかな。別に三人でも困らないがこの世界がどういうものか知っておきたいのだ。実体験の義輝ちゃんに情報のホネ子ちゃんがいればどうにかなるだろうが、いまいち俺の危機感が薄いのが少し怖い。
少し危険を冒して道を探すか、村を探して賭けで行ってみるか・・・。
「よし道を見つけたら見つからない所から監視するぞ」
『普通はその先に村か人がいる可能性があるから危険があっても行くのではないのですか?』
「はははは、何でそんなバカなことするの?すでに道が危険な事は知っている。村も危ない可能性が高い。なら道を通ってまともそうな連中がヒャッハーにでも襲われたのを助けて安全に村に行った方がいいじゃないか」
「・・・余、すこしは大名たちに悪いことしたかなぐらいは考えるようになったが、サクは死んでも考えることはないじゃろうな」
義輝ちゃんが俺から距離を取る。優しさというものは無料ではないんだよ最低でも自己満足があるのだ。俺にはそんなものはいらん、直の実利が欲しい。
というわけでカナリア義輝ちゃんを先頭に道を探すとあっさり見つかる。
「義輝ちゃんが一度も死ななかったぞ?」
「ふむおかしいのじゃ。この距離なら確実に死んどるのじゃが」
死亡の達人の義輝ちゃんが首を捻る。それくらい異常事態のようだ。
『もしかすると異世界化したおかげである一定の知識、まあ人なんですがプログラムよりも自分の意識のほうが優先になって行動が変化したかもしれません』
「といことは?」
『村は無駄に略奪するフンドシではなくまともな村になっていて、ヒャッハー達も暴走せずに普通の山賊をしているのかもしれません』
「そうだったら最悪だ・・・」
俺にとって本当の血と鮮血が飛び散るほのぼの村育成ゲームに変わったかもしれない。
「なぜじゃ普通になったのなら村にも普通に行けるじゃろうが」
キョトンと俺の言葉が理解できない義輝ちゃん。
『ご主人様は森の中の獣ように義輝を見た瞬間からただ襲う状態になる、まあゲームで敵を見つけたら損害を無視して突っ込んでくる相手が対処するには楽だと言いたいのです』
「何も考えないただの馬鹿だからな。無限村Pとヘイトを自動で集めてくれる義輝ちゃんがいれば理不尽な存在以外はどうにかなったんだよ」
そう所詮はゲームのプログラムで動くなら確実に攻略法があるはずだ。義輝ちゃんを生贄にして対処すればすればいいのに。
「なんじゃぁ~余は必要な存在なのじゃな~」
なぜか照れてる義輝ちゃん。
『あれですよ。神輿にはされても頼られるとか役に立っているとか言われるのは初めてなんですよ』
「可哀そうな最初の人生だったんだな・・・」
よしこれからは俺とホネ子ちゃんの為に身を粉にして働いてもらおう。主に生贄として。
「ま、することはあんまり変わらん。道で人の足跡か車輪の跡が多い場所を見つけて遠くから監視だ」
「その心は?」
「ヒャッハー達に襲われた金持ちそうな奴を助けて恩を売って、村か町の中枢に潜り込んで最初の偏見の目で見られるのをはぶく」
『さすがご主人様はクズで素敵ですっ』
「さすがの余もドン引きじゃ~」
というわけで道にを通らず、近くの草むらをこそこそ行っているとT字路当たった。
『足跡、車輪の跡ともに頻繁にあります。そしてヒャッハー達が襲う場所には最適です』
「よし俺のサーモグラフィーでこの一帯を定期的に調べるとして、後は絶対に見つからない場所で待機するぞ」
『何人まで死ぬのを容認しますか?』
「そうだな一番偉そうな奴さえいればいいんだが、そいつの身の回りが出来る連中もほしいな。義輝ちゃんはどう思う?」
「ん~今日から逃げるときは数十人はおるが途中で余の世話をさせるために最低限残したのは三人じゃったかのぉ」
「さすが逃げ将軍」
『最後以外はなかなかの逃げっぷりですもんね』
「照れるのじゃ~」
義輝ちゃんは結構役に立つよな。世界観が昔の日本だし将軍様でも時代の雰囲気はわかるだろうし、逃げまくっていたから村とかもなんとなくならわかるのだろう。
「よし襲われた人を助けて俺達の心は満足、相手は助けられて恩を感じる。そしてヒャッハー達は全滅して平和になる。一石三鳥作戦の実行だ」
『それ私達だけが儲ける作戦ですよ。でも素敵です』
「ん~余が幸せなら何でもいいのじゃ」
二人からの同意も得たことだから完全に見えない場所にテントを設置。
「にょ!?ま、まだ昼じゃぞぉ!」
「まあまあ、どうせホネ子ちゃんがサーモグラフィーで常時監視できるから暇だしな」
『アラームで教えますから大丈夫ですよ~。あ、私今から昔のロボットアニメを見ますから第二期もあるんですよね。長くなりそうです』
「というわけで」
【性欲無効を解除しますか?】
はいっとな。
「せ、せめてテントの中で脱がすのじゃあぁぁぁっ」
第二章の始まりです。
サク達は村を作ってないんですよね~。召喚で村人を喚べるのを忘れてやがる・・・(;´д`)