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泉の美女

そろそろ書き溜めたストックの底が見えかけてきました(早いっ!


そしてすいません!!

頭の文飛ばしてました…

再度編集し直して挿入しましたので更新をお願いします。

 「世界を救え?? 冗談じゃない」


 寝耳に水とはまさにこのことであり、とんでもないことを押し付けられてしまった。

 であれば何で俺みたいなモブ属性にそんな途方もないミッションを課すんだよ。


 ソウマはふと立ち止まった。


 「……まさか…俺以外にも…転生者がいる?」


 よくよく考えてみたらギフト選びの時から違和感満載だった。

 魔法と魔物が蔓延る世界。最初にそう意識をリードさせられていたからあのギフトの内容をすんなりと受け入れてしまったが、あの中に気になるギフトは山の様にあった。


 「ギフト…勇者…」


 そう、転生ポイント数200で取得できる【 勇者 】というギフトがあったのだ。

 今回は2323という途方もない転生ポイントを与えられたので、それ以上のギフトを探したのだがそんなラノベ顔負けのテンプレの塊のようなギフトが存在していたってことは今までも俺みたいな転生者がいることは全然あり得る話だった。


 「だとすれば…むしろ好都合じゃね?」


 今回俺は人の領域では取得できないギフト【 創生 】を手に入れることが出来た。

 まぁそれをオーラというギフトに変えてしまったが、恐らくこれは望むギフトを創生出来るという部分が破格の転生ポイント数を要求されたに他ならないだろう。


 であれば、だ。


 一般的に相当徳を積んだ人が手に入れられたとすれば転生ポイント数200~400前後だろう。

 それはあの時、一般的な転生ポイント数は俺の十分の一、そう言っていた。であれば世界の救済というミッションにドハマりな勇者ギフトを持った転生者がいても全くもっておかしくはない。

 

 「よし。世界を救うというミッションはそのテンプレ勇者殿にお任せしよう。そうしよう」


 俺は俺でこの世界でよろしくやって行く。

 これをこの世界での目標とするか…


 「そうと決まれば…神様にもらった飯でも食って少しでも早く人の居る場所へと移動だな」


 俺は早速神様の慈悲袋の中をまさぐる。


 「さて…神様が恵んでくれた飯はどんなんだろうなぁ」


 袋から出した固形物を見てまたしても目が点となるソウマ。


 「インスタント…食品…お湯ねぇと食えねぇじゃねーかよっ!!!」


 そして夜は更けていった。



 ◇◆◇◆


 朝焼けが空を次第に覆っていく。

 雲一つない紺色の空は次第に抜けるような青色へと染まって行った。


 「腹減った…のどが渇いた…」


 嫌がらせ大好き神様からもらった食料はご丁寧に全てお湯が必要なインスタント食品ばかりだった。それでも食わないよりはマシか? とそのまま食べようかとも思ったがこんな乾燥物を食べてしまうと口中の水分が持っていかれて今度はのどの渇き問題が加速しそうだったのでやむを得ずそのままにしてある。あー腹減ったぁ。


 当てのない旅。当てもなくさすらう旅人を何の準備もなくやっちゃうなんて…前世でこんなことやるなんて考えてもいなかった。


 だが不思議なことに俺の身体は疲れてはいるものの、まだまだ足取りは十分である。

 やはり異世界で、それもステータスがあると違うものなのか。はたまた俺がハイヒューマン仕様? だからなのだろうか。なんにしても前の肉体よりも頑丈になっていることだけは確かだ。



 それから数時間後。

 太陽が中天を指す頃、俺は不意に水の匂いを嗅ぎ取った。


 「水…水か?」


 水と意識した時はどこから嗅ぎ取ったのかが明確になって行く。


 「こっちの方向だ…」


 無意識に水の匂いがする方向へと走っていた。

 足取りは軽やかに、そして一刻も早く水の元へと。


 そこから10分程駆けた時、地平の先に木々生い茂るエリアを視界に捉える。


 「おぉ…おぉぉ!!! 水場だっ!!」


 足取りは更に軽くなる。そして更に加速する。

 100メートル金メダリストよりも早いと断言出来る程にトップスピードに乗った俺は颯爽と木々の中に飛び込んでいく。


 そして木々の先には…透き通った水を湛えた泉が姿を現したのだった。


 「おぉぉっ!!! み、水っだぁぁぁ!!!」


 かなりの速度で駆けていた俺は急に止まることも出来ずそのまま泉へと飛び込んでしまう。


 「うぉっっ!!! 冷めてぇっ!!!」


 思いっ切り飛び込んだ俺はまず泉の冷たさに驚き、そして慌てて水面へと顔を出した。


 「はぁはぁはぁ…真夏並みの暑さなのになんでこんなに冷たいんだよっ!」


 身体を投げ出し、そして水面に浮かんで空を見上げた。

 日差しが俺の顔を照らすため顔を少しだけ顰める。


 「はぁ…はぁ…はぁ…水…だぁぁぁ」


 数秒間そのまま身体を水面に預けた俺は身体を起こす。

 この泉はそこまで深くはなく足がギリギリ着く程度の深さだった。

 俺はそのまま顔を水面につけて水をすすった。


 「ゴホッゴホッ…はぁ…はぁ…う、うめぇ…生き返る…」


 干からびそうな程にカラカラだった俺の身体にこの冷たい泉の水は遠慮なく染み渡って行った。

 その冷たさが身体を癒して行く。


 その時であった。

 後ろからパシャン、と水面を何かが跳ねる音がした。


 その音に気付き振り向いた俺はハッと息を吞んだ。


 そこには一糸まとわぬ見事な裸体がそこにはあったからだ。


 「………おん…な?」


 ちょうど泉の縁にある岩へと水面から上がろうとする女がこちらに気付いて、そして目を合わせた。

 俺から見るその姿は後ろ姿ではあったが、くびれた腰から太ももへと繋がるカーブは芸術品と見まがう程に美しい曲線を描いていた。


 背中に滴る水滴が背中を滑りながら落ちて行く。

 濡れた銀髪の隙間からこちらを凝視するアーモンドアイが俺の心を震わせる。


 「……芸術品、だな」


 女は顔を背けると、岩場にあった布で身体の水滴を雑にふき取り、そして服を、装備品を身に着ける。


 ベルトに吊り下げる形式の長剣を帯刀するとまだ乾かぬ銀髪をシュシュの様な物で一つにまとめた。

 そして初めてその美女は言葉を発した。


 「さて…今生最後の言葉を聞いておこうか」


 「………不可抗力なんです」


 俺の言葉にハッと息を吞む程の笑顔を見せる美女に俺は「わかってくれたか」と安堵の息を吐く。


 「最後の言葉はそれでいいんだな。では散るが良い。乙女の純潔を破りし悪よ。次の生では真っ当に生きよ」


 そして長剣の柄に手をかけて抜刀すると何やら力を込め始める。


 「おいおいおい…話せばわかるって…あんたが居たなんて知らなかったんだって…」


 そして銀髪の美女は込めた力を開放するかのように剣を上段に構え、そして振り下ろした。


 「変態よっ! 散れっ!!」


 振り下ろした斬撃が信じられない速度で泉に浸かっている俺へと駆けて行く。


 「……っ!!!」


 俺は無我夢中で足に力を思いっきり込めて泉の底を蹴り上げた。


 「!!!」


 水柱が上がったその場所に斬撃が駆け抜け、中央を真っ二つに横断して行く。


 「マジかっ! 避けなかったらああなってたのかよっ! クソっ!」


 そもそも斬撃が飛ぶなんて漫画だけの世界だろと今目の前に起こったことに異世界転生という事実を肌身で感じてしまう。


 咄嗟のことで空中に今までの常識の中では信じられない程の跳躍で斬撃を躱した俺だが、驚いた表情を見せていた美女と視線が合う。


 「あ、不味いっ!」


 そのことに半テンポ遅れて気付いた銀髪の美女はニヤリと好戦的な笑みを見せると第二撃を放った。


 うかつにも飛んだら最後、空中へと飛んでしまった俺は躱す方法が無いことを後悔する。そしてその絶好の隙を見逃す訳も無く、あっさりと躊躇なく第二撃を放った銀髪を美女を尻目に俺は覚悟を決めた。

 

 そして必殺の第二撃を放った銀髪の美女はほくそ笑む。

 確実に当てられるこの機会を逃す訳も無く、手を全くに抜かないその攻撃は確実に俺の元へと届けられた。


 硬い何かに刃物が当たった、言わば甲高い音が泉に鳴り響いた。

 その音に銀髪の美女は顔を顰めた。


 そのまま勢いよく俺は吹き飛ばされ、再度泉の中へと飛び込んでいった。

 俺は先程の斬撃の衝撃で半ば朦朧としていたが、すぐに意識をハッキリとさせ、あえて水面へ上がらずそのまま潜水で距離を取る。


 泉の端まで水中で潜った俺は勢いよく水中から地上へと飛び出し、銀髪の美女へと身体を向けた。


 「ゴホッゴホッ…おいっ! 待てってば!! お前の裸体を見てしまったことは謝罪するっ!!」


 小さな泉越しに俺らは向き合った。

 銀髪の美女は何故だか呆気に取られたような表情を見せていた。


 「なぁ? とりあえずその剣をしまってくれないか? 話せばわかると思うんだ」


 丸腰アピールを忘れずに手には何も持っていないことを必死にジェスチャしているのだがうんともすんとも言わない銀髪の美女。埒が明かないな、と思った時であった。


 「き、貴様…何者だっ! どこの血盟クランの者だっ!! 名を名乗れっ!!」


 「血盟クラン…? お、おい。一体何を言ってるのかもう少し分かりやすく言ってくれよっ

!」


 「あくまでも白を切る気か…面白い。私の剣技で傷一つ付かないとは正直驚いたが…高レベル者との相手をまさかこんな所ですることになるとは」


 銀髪の美女の周囲に何やら銀色のオーラらしき靄が現れる。


 「なんだ…それは…」


 「灰猫血盟、LV3…魔闘剣術師範…ルー・ディスクリハイム。この名を覚えておけ。それがお前を葬る相手の名だ」


 「あ、あの…ルー? さん?? 人の話聞いてます??」


 魔力を集中させたその身が僅かにだが薄く銀色に輝いている。


 「殺る気満々じゃねぇかよ…」


 身がぶれる。銀色をそこに残したまま残像が消えた瞬間、目の前に迫りくる銀髪の美女、ルーのその速力に俺は「噓でしょ?」と驚くことしか出来なかった。


 横薙ぎ一閃。


 確実に俺の首を狙ったその一刀は確実に俺の首を飛ばすだけの威力が込められていた。

 ルーも殺った、と確信の笑みを見せた。だが…


 ルーの手には僅かに何かが引っかかった程度の感触しか残らなかった。

 空気が切断した音が俺のすぐ近くを通り過ぎて行く。


 間一髪、ギリギリのタイミングで避けた俺は即座に距離を取る。

 10メートル程距離を取ったがこの美女にはその程度の距離はほぼ0距離に等しい。それは今のこの攻防で確認出来ている。


 「危ねぇ…少しでも気を抜いたらそこでやられる…」


 ギアを入れ替えよう。

 そう切り替えた瞬間、頭の中がクリアになって行く。

 あれだけ興奮していた俺の精神が穏やかな、まるで凪状態の海面のように波一つ立たないかのような精神がそこにはあった。


 不思議な気分だ。

 今までの俺を全否定するかのような心地に少しだけ高揚感が感じられる。


 そして俺は身体からオーラを発現させていた。


 (な、なんだ? 身体が…重い?)


 ルーは身体の異変を感じ取る。

 得体の知れない何かが自分の身体へと影響を及ぼしている、そう感じたルーはソウマを見据える。


 (これは…重圧か?! まるで歴戦の古豪と相対しているような、そんな重圧を感じるっ!!)


 ルーの額に汗が滲み始める。

 これまでとは打って変わって場が鎮まっているのだが、その静止した空間の中で強烈な重圧をルーは感じ取っていた。


 そんな中、ソウマが動く。

 緩やかな歩法でルーとの距離を削って行く。

 強烈な重圧はそのままだが、ノーガードで近付いて来るソウマにルーは絵も知れぬ恐怖を感じ取ってしまう。


 (話せばきっとわかる)


 (短期決戦で勝負を決める肚かっ!)


 両者の想いは全く違っていた。

 ソウマは取り敢えずまずは宥めすかして落ち着かせよう、そう思い引き続き「俺は何も武器を持っていない、危険な男では無いんだぜ!」アピールをしているつもりだった。


 だが、薄ら笑いをしながらオーラを全開にして来る薄気味悪い男をルーがそう感じるだろうか。

 実際の印象は全く逆で、「なんだこいつは…薄気味悪い笑みをこの私に…もう勝負は決まったとでもいうのか」という気持ちを抱いていた。


 お互いはどこまでもすれ違う。

 だが現実は無慈悲である。勝負は即座に決まった。


 この状況に耐え切れず攻撃に出たのはルー。

 上段に構えたまま超速の動きで距離を潰すと最速の剣撃を放った。


 (殺ったっ!)


 相手は自分の動きに反応していない、そう確信していたルーだったが次の瞬間まるで心臓を握り潰されたかのような気持ちになってしまう。


 この一瞬の出来事のはずなのに、何故かゆっくりと視線を合わせられたのだ。まるで時が止まっているかのように。

 防御態勢は取っていない男が薄気味悪い笑みをまた見せると、気が付けば剣身を指で触れており、そのまま力の方向を少しだけ変えるかのように指をゆっくりと走らせていった。


 剣身は空を切り、斬撃の余波はソウマの横を抜けていった。

 ルーの頬に汗が滴り落ちる。


 「今のは…なんだったんだ…」


 驚愕の面持ちでルーはソウマへ視線を向けた。

 視線が両者合う。無言の間が空間を満たしていた。

 そこで少しだけ口の端を吊らせながらソウマが口を開く。



「恐ろしく早い剣筋…俺でなきゃ見逃しちゃうね」



【※ここまで読んで頂いた皆様へ大事なお願いがあります※】


ここまで読んで頂きありがとうございます。

拙作ではありますが、少しでも「面白い!」や「続きが気になる!」等々


と心の中に少しでも抱いて頂けましたら


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