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謝罪の便箋

引き続きお楽しみください

 「はいはいはい! お楽しみのギフトターイム!」


 一人で拍手する俺以外にこの草原には誰もいない。

 邪魔者が居ないうちにさっさとギフトを選定してしまおうと思った俺だが思いもよらぬ事態に出くわしてしまう。


 「どうやって…ギフトを出すんだ?」


 そう言えば聞いてなかったギフトの使い方。

 俺は盛大に頭を抱えてしまう。


 「おいおいおい! 俺の馬鹿ぁ…あのクソ生意気な白い球体に聞くんだったぁ…」


 『おいおいおい! その白い球体って私のことですかねぇ?!』


 うずくまる俺の目の前にいきなり現れたあの白い球体にびっくりした俺はのけぞってしまう。


 「おっ!! ビックリさせんじゃねーよっ! ってか会いたかったぁ!!(はぁと」


 『キモッキモッキモッ!! キモいですっ! っていうかギフトの使い方をレクチャーしにきました!』


 何という親切仕様に俺は少しだけ白い球体を見直す。


 「お前…中々やるじゃん! さぁ教えてくれよ!!」


 『イラッイラッイラッ!! なんかムカつきますけどこれも仕事なので教えて上げますっ!』


 そう言うと目の前にあの創生の書が目の前に落ちて来る。


 『はよっはよっはよっ! その中に設定ページがあるのでそこで思い描いたギフトを念じ、落とし込むのですっ! てかはよせぇよ!』


 そう言うと白い球体は消えるのであった。


 「あいつ…放り投げやん…」


 まぁいい。気を取り直した俺は創生の書を捲り、該当ページを探し当てる。


 「これか…思い描いたギフト…となれば…アレしかねぇだろ」


 俺が脳裏に描いた熱き思いを創生の書へと落とし込む。

 そしてそのページにはこう書いてあった。


 < オーラ能力者 >



 「ククク…やってやったぞ!!」


 思い描いたギフトがハッキリと具現化し、文字に落とし込まれていた。


 「オーラ能力者…これよこれ! 魔法? そんなモンはいらねぇんだよっ!! 時代はオーラよっ! まぁ…実とかも少しは考えたけど…現実的に考えたらこれ一択だろ!!」


 目の前に浮かんでいた創生の書、オーラ能力者と書かれた文字が薄くなり、そして消えた。その瞬間だった。


 「……ッ!!!」


 急に頭の中に流れ込んで来た膨大な量の情報に半ばパニックに陥り、悶絶する。

 そして数秒後。流入が止まった俺は大量の汗をかいていた。


 「………そう言うことか」


 一人腑に落ちたような顔つきで立ち上がり、そして呟いた。


 「ステータスオープン!」


 目の前には黒いウィンドウが現れると、そこには俺のステータスが表示されていた。


 ************************************

 名前:ソウマ 年齢:17歳

 レベル:1

 職業:モブ


 HP:8

 MP:0

 オーラ:12


 攻撃力:8

 防御力:4


 力:4

 体力:4

 器用:7

 敏捷:12

 知力:5

 精神:3

 魔力:0

 運:1


 ギフト:オーラ能力者(系統不明)

 スキル:オーラ LV1

 ************************************


 「おぉぉぉぉ!!! これがステータスッ!!! ………えっ? も、モブ?」


 職業の欄に違和感を覚えた俺は手に口を当ててしまう。


 「え? 何? モブっていう職業…そんな職業この世にあるのか??」


 そんな馬鹿な…とばかりに考え込む俺が正気を取り戻すまでに数分の時間を要することになる。


 「よし、落ち着いた…俺落ち着いた。オーケーオーケーまだ慌てる時間じゃない」


 職業は変えられることが多い。勿論ゲーム内のことであったが、実際に変えられることは出来る可能性は高かった。変えられなかったら一生その職業に就かないと行けなくなるし、何よりも世界のシステムに冗長性が無いことになってしまう。


 職業のことはさておき、俺はギフトを見て顔を盛大にニヤつかせた。


 「オーラ(はぁと はぁ…現実世界でオーラ使えるなんて…夢の様…」


 少しだけ頭の中をお花畑全開にしていた俺はようやく現実世界へと戻ってくる。


 「ふぅ…いかんいかん。まだ確認してもいないのに都合よく考えるのはダメだな。まずは俺のオーラ能力者としての系統をハッキリとさせないとなぁ。てことはアレやんのか? コップに水をいれてやるあの儀式…」


 とは言え俺は無一文どころか布の服を纏っただけであり、完全に村人Aなのだ。

 コップどころか服以外何も持たない俺は完全に思考を切り替える。

 とりあえずこの場を離れて街に行かねば、そう思った俺は当てもなく歩き始めた。


 「この方向へいいのだろうか。見渡す限りの草原で街どころか人の影すら見当たらねぇ。これ今日中に街なり村なり見つけられなかったら俺…こんな状態で野宿か…」


 生まれてこの方野宿なぞやったことのないシティボーイな俺は早く人の居る場所へと行かねば、そう思い早足から走りへと切り替える。


 「なんだ…足取りが軽いな…重力をそこまで感じない」


 不思議な感覚だった。

 一歩一歩の踏力が前の世界とは段違いの力強さなのだ。

 戸惑いながらも徐々に速度を上げた俺は軽快な足取りで草原を駆け抜けるのだった。


 走りながら俺はオーラについて考えていた。

 俺が思い描いていたオーラはあの大好きな漫画【 二人の狩人 】をそのまま忠実に再現したつもりなのだが、それが本当にその通りなのかはまだ確かめていなかった。一応系統が不明であるが系統と言う物が存在している事は間違い無いことから恐らくは同じだと思ってはいる。だが細かい所まで設定を覚えていたかと言えば…そうでもない。


 とりあえず俺は走りながらではあるがオーラを出してみることにした。


 「おぉ…これがオーラっ!!」


 仄かに光る蒸気みたいな靄が俺の身体を包み込むように立ち昇っていた。

 感動に浸りつつも、少しだけ気怠さを感じ始めて行く。


 「いかんいかん。ステータスを見てもオーラが目減りしている。これは俺が纏い(まとい)の技術を学んでいないからだろう」


 俺が設定したオーラの特性は以下の通り(だと信じたい)。


 ・オーラは攻防の要であり、強力な個性を発揮するエネルギーである

 ・オーラを操るにはそれなりの研鑽が必要である

 ・オーラは個人の特性によって効果自体が変化する

 ・オーラは有限であり、生命を模したエネルギーでもある


 とまぁ使いこなせれば途轍もない能力なのだが、個人の才能に偏ってしまう…ことまで再現していたらどうしよう…俺、才能に恵まれてねぇよ…1000万人の1人であって欲しい。マジで。


 そんなくだらないことを考えながら進むこと1時間が経過した。

 まだ町や村の影すら見えない。そしてよくあるお決まりのお助けイベントもない。だれか助けてッ!!


 日も暮れて、夜の帳が落ちて来る。

 一向に木すら見えないこのだだっ広い草原のど真ん中に俺は大の字で寝っ転がっていた。


 「のどが渇いた…お腹すいた…」


 中々疲れないこの身体もさすがに何時間も走りっぱなしだと喉は乾くし、お腹も減る。超人的な肉体を得た早々に俺は既に死にかけていた。


 「あぁ…あのくそハゲめ…ステータスある世界なんだから何でアイテムボックスとか実装してねぇんだよ。ホントに使えねぇハゲだな…」


 その時であった。

 目の前に黒く丸い何かが浮かんでいた。

 それを凝視すること10秒。それはぱっと消えた。


 「………アイテムボックス?」


 そう言うと目の前に再度現れる黒く丸い何か。

 飛び起きた俺は無造作に手を突っ込んだ。


 「ん? 何か感触があるぞ!」


 掴んで引っ張り出したものは大きな袋だった。

 そこにはこう記してある。


 「(2323)様の慈悲袋…おぉぉぉぉ!!!! あの(ハゲ)やるじゃんっ!!!!」


 手に取った袋が薄く、そして消えそうになって行く。


 「あぁぁぁ!!! うそうそうそ!!! 素敵な(2323)様ありがとうごぜぇますだぁ!! おらぁあんたに一生着いてくっ!!! ふぅぅぅぅ! (2323)様イッケメェェェン!!」


 とっさに媚びへつらった俺は土下座して謝り倒すと(2323)様の慈悲袋は再度色濃く具現化していった。


 「あ、あぶねぇ…意外と聞いてるんだな…余計なこと言えねぇじゃねぇか…」


 恐る恐る袋を開封していくと、そこには食料が入っており、それと手紙が入っていた。


 「食料はありがてぇ…そしてこの手紙…読まなきゃダメか?」


 黒い便箋に入ったその手紙は何となくだが厄介ごとの種のような気がしてならない。

 だが読まないと何をされるか分かった物じゃない。意を決した俺は赤の封蝋が施された黒い便箋を開けて中身を読んだ。


 「……何々…拝啓ソウマ様…同意無く転生させてしまったことをお許しください……って謝罪文かよっ!!」


 軽くイラつきながらも続きがあるため心の平静を保ちつつ、再度読み進めて行く。


 『お詫びと言っては何ですが、転生ポイント数が哀れなくらいに少なかった分、足しておきました。最初はやり過ぎかな? とも思ったのですが、本当にどう生きたらこんな低ポイントしか貯めることが出来なかったのか、世界の管理者として是非小一時間程問い詰めたいのですが、そこは我慢して転生ポイント数を大幅付与しました。一生感謝してください…』


 震える手を押さえつつ次へと読み進めていくソウマ。


 『話は逸れましたが…今回は創生のギフトを見事ゲットしたということで、それに耐えられる様に現世の肉体もハイヒューマン仕様としました。本来であれば人が手に入れることは出来ないギフトだったのですが、転生ポイント数を付与した後に気付いたものの、後の祭り(てへぺろ…』


 イラつく心を「静まれー俺の海よりも広い心よ静まれー」と念仏のように唱え、再度読み進めていく。


 『ということで全力で辻褄合わせしました。本来であれば適当なギフトを適当に渡してさっさと次の世界へと旅立たせたかったのですが、まさかあんなに粘られた挙句、創生のギフトを手に入れてしまったという惨…じゃなかった幸運を掴み取った訳ですが、その幸運も元はと言えば全知全能である(2323)のおかげです。感謝カンゲキ雨あ…じゃなかった、8回くらい転生してもその恩を忘れないでください』


 もはや無の境地で読み進めていくソウマ。


 『本来のスキームで言えば転生後は赤さんからのスタートなのですが、先程も述べさせて頂きましたが全力で辻褄合わせをした結果、青年の肉体からスタートさせています。これは本当に特別処置です。来世は記憶の引継ぎも出来ません。全てが1からのスタートになるので、そこのところは誤解の無い様にお願いします』


 「……」


 そして残すところ便りは1枚となる。


 『さて、長々と書き連ねて来ましたが、最後に転生させた目的を書き記して終わりにしたいと思います。この世界は魔力の枯渇危機にあり、その原因を特定して見事世界を復活させて下さい。健闘を祈ります。以上。 (2323)より」


 最後まで我慢して読み進めて行ったソウマの目が点となる。


 「………っておい!! 最後一番重要やん?! 何でそんなにサラッと書いちゃうわけっ? えっ? 馬鹿なの?? ねぇ神様って馬鹿なの??」


 もう一度最初から読み飛ばしたことが無いか便箋の内容を最初から確認しようとした時であった。

 便りの文字が零れ落ちていき、再度大きな文字が浮かび上がってくる。


 「…?! な、何…? えっと…『例によって、君が世界を救えなかった場合の次なる転生に際して転生ポイント数の付与は認められない。なお、このふみは読み終わった後、自動的に消滅する』 ………はぁ??」


 どういうことだ? そう思った直後にまた文字が零れ落ち、そして新たな文字が浮かび上がってくる。

 そこにはまるでカウントダウンのように5秒前からのカウントが始まった。


 「え? ちょ、これって不味いやつじゃぁぁん??!!」


 便箋ごと放り投げその場を人生史上最速の速度でその場から離脱を図る。

 5秒間の間に少なくとも100メートルは稼げたか、そう投げ捨てた便箋を振り返りながら見た時であった。


 黒い球体が便箋を飲み込む形で現れ、そしてすぐ消えていった。

 周囲をえぐり取るかのように地面がクレーター状に陥没している。


 「あのハゲ…何考えてるんだ…俺ごとろうとしただろ…絶対狙っただろ…世界を救う前に味方陣営から消されそうになったぞ…」


 ブツブツと文句を言いつつ、何となく危険な匂いを感じ取ったソウマはその場を離れるのであった。


【※ここまで読んで頂いた皆様へ大事なお願いがあります※】


ここまで読んで頂きありがとうございます。

拙作ではありますが、少しでも「面白い!」や「続きが気になる!」等々


と心の中に少しでも抱いて頂けましたら


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ぜひこの拙作のモチベーションを維持して頂くためにも、何卒宜しくお願い致します。

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