07-2.潜入調査
「ここ?」
「洞窟、ではあるな。だいぶデカいみたいだし」
「まあとりあえず調べてみるか」
その前に、と三人は小声で確認をする。
「目的は調査だけ。高レベルの人たちでもクリア出来てないってことは我たちで勝てる可能性なんてゼロやろうし」
「妥当だな。もし子どもたちを見つけた場合は?」
「数にもよるけど……保護、かなぁ」
「了解。会敵に気をつけるのね」
三人はマントのフードを被り、洞窟の中に入った。
天井でコウモリが目を光らせていることに気付かないまま。
※
暗い洞窟の中、マントのフードを被った三人組が進んでいた。
奥から吹いてくる生暖かい風が薄気味悪さをよりいっそう強めている。
「特に何もないな」
「うーん……」
時折小さく言葉を交わしながら奥へ。
すると、突然王兎が先頭を歩く奏の肩に手を置いた。
奏はこくりと頷き、歩を緩める。示し合わせたように三人は黙り込んだ。
「…………は、ここだ」
三人とは別の、男の声。
壁に映しだされ、揺れる影が見える。
どうやら声はそこから聞こえるようだ。
『行けると思う?』
ぱくぱくと口を動かして玲音は問う。
奏は少し考えるような素振りを見せると軽く首を横に振り、でも、と前を指さした。
一行は出来るだけ距離を詰め、壁に張り付くようにして様子を窺う。
影の形からして【月夜の音楽隊】の指揮者と仮面女でまず間違いないだろう。ただ、ねずみの姿が見受けられない。
これ以上下手に動くとまずいと悟った三人はその場に留まり、代わりに聞き耳をたてていた。
「もうすぐ下見に行かないと」
「そうだな。子供は今何人いる?」
「えーっと……だから後二人ね」
「分かった」
二人組の会話に三人は首を傾げる。
「後二人」という言葉はどういう意味なのか。後二人を集めて何になるのか。
「そろそろ行くか」
「ええ」
その二言の後、ふっと光が消え、二人も消えていた。
そうっと確認しながら三人は二人がいた場所へと近づく。
「焚き火の後……だな」
「正解だったね」
バサリ、とコウモリが飛ぶ音がした。
「っわ! ……コウモリか」
「あいつらが戻ってくる前にある程度見ておこうよ」
三人は再び奥へと向かう。
と、暫く進んだ先でコウモリが輪を描くように飛んでいた。
「なんだ?」
「行かせたくないってことかな」
「……これは……あいつらの手先? なら尚更何かあるんでしょ」
見ると、その少し先には鉄格子のようなものが見える。薄暗くてよく見えないが、その中に子どもがいるようだ。
「ねぇ、あれ」
「ああ、うん。いるんだよな」
どうしようか、と三人は顔を見合わせ、
「よーし! 早瀬、ダッシュだ!」
「いや無理ですけど?!」
とふざけた後、子どもに向かって声をかける。
「おい。大丈夫か?」
返答はない。
「聞こえてる?」
「多分……」
「おーい。生きてるなら返事してくれ」
もう一度声をかけると、小さく反響しながら言葉が返ってきた。
「…………誰」
隠す気のない警戒の色を含んだ声。
交代、というように玲音は奏と視線を合わせると落ち着かせるように話しかける。
「大丈夫。我たちは敵じゃない。助けに来たんや」
「…………」
「うん、信じられんよな。……ロイ•ブラウンって子に頼まれたんや。ルカちゃんはいる?」
「お兄ちゃんを知ってるの?!」
驚いたような少女の大きな声でコウモリがどこかに飛んでいった。
三人はたたたっと小走りで牢に近づく。
中には少女、少年が合わせて十一人いた。
「誰なんですか」
近づいてきた三人に警戒心を向けながら、奥にいる少年が問うた。見たところ、どうやらこの中で最年長のようだ。
その少年の前にいる少女に三人は心当たりがあった。
栗色の髪と、暗闇の中でもわかるような紅色の瞳。
「君が……ルカちゃん?」
少女を庇うように少年が前に出た。
「なんで知ってるんですか」
「頼まれたの。助け出して欲しいって」
「勿論、ルカちゃんだけやないよ。クエストになって、色んな人が助けようと動いたんや」
少年は少し考えた後、首を縦に振った。
「分かりました」
次話投稿未定です。
書きだめと今までの投稿作品の改稿等するつもりです。ご迷惑をおかけしますが、気長に待っていただけると幸いです。