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06.リミュレア山

 ザクザクザク……。

 無言で落ち葉を踏みながら歩く。

 整備された道はもちろん、獣道すらもないため所々で誰かが木の根につまづく。


「ぅわっ?!」


 今回つまづいたのは王兎だった。


「なんでこんなとこに根あんの?!」


 凄い逆ギレだ。

 その様子を見ていた奏と玲音は苦笑する。

 何を隠そう、さっきから一番つまづいているのは王兎なのだ。


「結構歩いたな〜」


 玲音が歩いてきた方向を向いて言う。そして、リュックから取り出した地図を開き、王兎と奏を手招いて寄るように示した。


「今この辺。んで、ここからもうちょっと歩いたら濃霧地帯に入るんよ。昨日我が一番可能性高いって言ってた洞窟がこのどっかにあるねん」

「「………………?」」


 玲音のぼんやりとした説明に二人は首を傾げた。


「どっかってどこ?」

「知らん」

「…………」

「しょうがないやん! この山自体が謎に包まれてるっていったやん。我悪くないからな!」


 じとり、とした視線を二人から向けられた玲音は必死に弁明する。


「濃霧地帯って言っても結構広いぞ……この辺りなのか?」


 玲音は奏の問いに答える代わりにリュックから地図を取り出して広げた。

 それからマントの内ポケットから鉛筆を取り出し、地図のある場所にグルグルと印をつける。


「ここが現在地」


 鉛筆の先である一点をさし、次は先程つけた印を示す。


「ここは洞窟が出来やすい地形って製図家の人が言ってはった」

「鈴ちゃん、いつそんな人と話してたの……?」

 

 半ば呆れたような顔の王兎の問いに玲音は少し思い出すような素振りを見せると、


「ロビーに行く前、廊下で荷物ぶちまけてる人がいたんよ」

「竜車の荷台でのお前みたいに?」

「ちょっと黙っててくれます?」


 奏からの野次を切り捨てるように返して続けた。


「拾うの手伝ったんやけど、見慣れへんものがいっぱいあってん。それでジョブを聞いたら《製図家》とその人は答えました。ならこれは丁度いい、と私はリミュレア山の地図が、ある地点から白紙のままであることについて尋ねたのです」


 いつの間にか一人称が”私”になっていて、口調も変わっている。


「すると、その人は『そこからは濃霧地帯で全く先が見えない。謎に包まれているんだ』と言いました。私が『濃霧地帯のどこかに洞窟があるみたいですが、どこか分かりますか』と聞くと、この印のついた場所を示したのです」

「なんで語り口調……」


 王兎のツッコミは華麗にスルーして説明に入る。


「地図によると、ここからとりあえず上……こっちかな。登ると印の場所に着くみたいやから、そこ目指して行こか」

「分かった。けど俺、そろそろコイツ使ってみたい」


 そう言って奏が鉄球の鎖に手を触れると、鎖はジャラと音を立てた。


「おっけ。広そうなとこでね」

「よし、行くぞ」


 と、奏の声を合図に歩き始めたは良いものの、すぐにあたりに霧がかかった。

 濃霧地帯から先は地図として存在していない。

 もし、このぼやけた視界ではぐれれば無事に山から出られるかもわからない。

 こういうとき、三人の役割分担は早い。向こうのゲームと同じだ。

 奏は状況把握と同時に思考を回し、王兎は些細なことも漏らさないよう五感を研ぎ澄ませる。玲音は二人の様子と周囲を見ながら警戒を怠らない。

 だが、特に何も起こらない。


「うーん、埒あかないね。何か行動起こそうよ」


 早々に集中力を切らした王兎が言う。

 先程から気配は感じているが、敵意は全く感じ取れないのだ。


「あ、じゃあ鉄球振っていい? 霧が晴れたら儲けもんってことで」


 と、奏はオリハルコの鉄球を構えた。


「なぁ、嫌な予感するの私だけ?」

「我もする。巻き込まれそうやな」


 王兎の言葉に玲音は頷いて答え、離れられないのでとりあえず伏せておくことにする。


「あのー、早瀬さん? 巻き込まないでくれませんかね?」

「善処ハスルヨ」

「あ、嫌な予感」

「HAHAHAHA」


 大仰に笑ってから、親指を突き立てる。


「グッドラック」


 良い笑顔で言ってから鉄球を振り回し始めた。

 凄まじい音を立てて回り始めた鉄球が玲音と王兎の上を通過する。木に鈍器が当たったような音も聞こえてきた。


「めっちゃ怖い!」


 伏せたまま王兎が絶叫する。

 鉄球がまたその上を通過して行った。


「あ、でも霧は晴れたで」


 確かに、白くぼやけていた視界がはっきりと見えるようになってきた。

 といっても、目に入ってくるのは木が薙ぎ倒されていく惨状だが。


「おっとっと……」


 そう言いながら奏は鉄球の回転を遅くさせ、止める。

 鎖についた木片をはらってからしまった。

 玲音と王兎も立ち上がり、服や髪についた木片を払う。


「おう、生きてたか」

「お前に殺されてたまるかいっ!」


 悪びれもせず言った奏にギャン、と玲音が噛み付いた。


「まぁまぁ、霧晴れたから良かったじゃん。行こ」


 王兎がそう言って洞窟へ向かうべく歩き出す。

 が、


「ネメちゃん。待って、ネメちゃん」

「左近、そっち反対」


 元の世界から自前で持ってきた方向音痴がこんなところで発揮された。


「ああもう! 霧が晴れてるうちに行くよ!」


 そう言って向きを変え、歩き出す王兎に二人も慌ててついて行った。


    ※


「しっかし、後どれくらい歩くんだ?」


 鉄球を体の横で小さく回しながら奏が問う。


「ん〜、この辺に洞窟あるはずなんだけど……」

「また霧かかってきたし早く見つけんと」


 王兎の言うとおり、少し前に奏が払った霧も薄らとかかり始めている。


「昨日、使えるかなって練習してた探知魔術使う?」


 チリン、と玲音が首元の鈴に触れる。


「いや、お前それMP消費するだろ?」

「あー……せやな。やめとくか」


 確かにこれから向かおうとしているのは敵のアジトかもしれないところ。魔力を温存しておくのは賢明な判断だろう。


「あ」


 ふと、さっきまでどこか一点をぼんやりと見つめていた王兎が声を漏らした。

 不思議そうに首を傾げる玲音にゆるりと首を振って応える。


「あのさ、なんか違和感あるなーって思ったら霧動いてない?」

「んぁ、確かに」


 奏が少し、思案顔になる。


「気温が高いところに上昇気流だから……もし焚き火してたら……風の吹き込む先に洞窟があるかも?」


 ぶつぶつと呟いた言葉を拾い、玲音はとりあえず風の吹いて行く方向に向かうことを提案する。

 暫く歩くと見つかった。

 洞窟がぽっかりと口を開けていた。

昨日投稿できなかったのでこんな変な時間になりました。すいません……許してください……


次の投稿は2週間後金曜日

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