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15.知識の街

 青い空、暖かな日差し、竜車の荷台から伝わる微かな揺れは心地よい。


「いやぁ、ギルさんこんな運転でひはんははぁ(できたんやなぁ)


 眠気を誘われたのか、玲音は大きな欠伸をした。


「前回もこれぐらい安全運転して欲しかったな」

「これなら快眠できるね寝るか」

「言ってるうちに着くやろ。起きとき」


 玲音の言葉に王兎は、チッと舌打ちして不服そうにする。


「君が寝起き悪いからやん……」


 困惑した様子の玲音を見て、奏は苦笑した。

 そうやって時折言葉を交わしていると、竜車が止まった。


「着いたか?」


 竜車を運転していたギルに確認し、三人は荷台から飛び降りる。


「ギルさんありがとうございました」

「おう、じゃあまたここ出る時にな」


 ギルは再び竜車を走らせ、どこかへ向かっていった。

 三人はその影を見送ってからサイガシティへと足を踏み入れる。

 全体的に低い建物が多かったメイズシティと違い、ここは高い建物が多い。


「メイズシティより人少ない?」

「まぁあそこは色んな飲食店とかあったから観光客も多かったんじゃないか?」

「宿もあったしな」

「なるほど」


 王兎が気づいたように人通りはさほど多くない。なにやら大きな荷物を持った人がまばらに歩いている程度だ。


「本屋多いな」

「まあそういう街なんじゃろな」


 通りに沿って並ぶ本屋の看板を見ると、どうやら本屋に寄って売っている本が異なるようだ。種類によって細やかに分けられている。


「凄いな、これ街がもう一個の本屋みたいな感じか」


 奏が感嘆したように呟く。


「小説も結構な種類あるみたいやな、また買お」


 三人が真っ直ぐ歩いていると、一際大きな建物が見えて来た。


「ああ、あれが図書館か」

「こんなでかい図書館あっても本屋の経営成り立つんか?」

「成り立ってるんでしょ」


 思い両開きの扉を開け、三人は図書館に入る。

 重くどこか神聖な雰囲気に気圧されたように三人は口を閉じる。

 全てのフロアは吹き抜けになっていて、階段や梯子が動き、動線を作っていた。

 

「どうやって探せと……」


 そう奏が小声でぼやきながら一歩前に進むと、目の前にホログラムで写されたパネルのような物が現れた。


「え、なにこれ」


 困惑し、一歩下がるとパネルは消えた。


「奏、下」


 玲音に言われて見ると、奏の足元には足跡のマークがある。


「ここに立ったら出てくるのな」


 マークに足を合わせ、パネルを操作する。


「カテゴリー……精霊?」

「精霊?」


 小声で相談しながら操作を進めていく。


「人体とかってないん? 生物学的な」

「それも併せて調べるか。とりあえず精霊で」

「うぃっす」

「四階の棚だとさ」


 動いていた階段が止まったのを見計らって登る。

 三人が登っている間、階段は動きを止め、四階に到着すると再び動き出した。


「どこかの魔法学校の階段みたいやな」

「確かに」


 奏の身長の二倍ほどの高さがある本棚にはびっしりと本が詰まっている。


「どう選べば良いんだ……」

「ええ……適当に選ぶしかないでしょ」


 玲音が近くにあった移動式作業台のようなものを見つけて持ってきた。


「これで上まで見れるで」

「俺登る」

「頼む」


 奏の乗った移動式作業台を「行くでー」と玲音と王兎の二人で押して動かす。

暫くして、ある程度の本が集まると奏が降りてきた。

 同様にして人体についての本も集め、所々に設置してある机に積む。


「こんなもんか」

「じゃあ手分けして探すで」

「はーい」


 三人は椅子に座り、無言でそれぞれの本のページをめくる。


「あった。ここ」


 王兎が指したページを玲音と奏が覗き込む。


「『精霊の持つ魔力器官は未だ謎が多い。精霊の魔力器官から放出される魔力量は極めて高いが、その量は安定していない』」

「こっちも」


 玲音も先程まで読んでいた本を二人に見えるように移動させる。

『魔力器官から放出される魔力量は平均八歳から十二歳で安定する。それ以前の子どもの魔力放出量は基本的に低く不安定である。

魔力放出量が急激に高くなることがあるが、これは魔力器官が安定する前の一時的なものである』


「この魔力放出量が上がるときを狙ってたってことか?」

「そういうことやろねー」

「まあ精霊は色々使えるみたいだな。加護とかで能力値の補強したりとか。でもそれが出来るぐらい力のある精霊は希少だし自分に協力するとも限らないから作ろう、みたいなことか」


 呆れたように玲音がため息をつく。


「あ、そうか、儲かるんか。売れたら」

「それもあるな」

 

 すると、奏と玲音の会話を聞き流しながら本を流し読みしていた王兎が口を開いた。

 

「精霊術やってみよかな」

「急やな」

「いや、私の《復讐神(ジョブ)》って使いにくいと言うかメインジョブじゃないでしょ? だからもう一つなんかあったら便利かなーって」


 王兎の言葉に玲音は「それいいな」と。


「我も何かやろかな。召喚魔法とか? テイマーなってみる?」

「俺も剣術勉強しようかな。丁度そういう街だし」

「じゃあみんなでやろうよ」


 そんなこんなでいつの間にか学校に行くことになっていったのだった。


「…………あれ、この街に来た目的ってさ」

「まぁ、あんなthe•禁忌って感じのこと載ってる本なんてないやろ。あっても読めんやろ」

「……それもそうか」

遅刻しました、ほんとにすいません。


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