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13.良い夢を

「こんにちは、ご用件は?」

「クエスト達成の報告です」


 そう言って奏は官憲から受け取っていた証明書を提出する。


「承知しました。それではお預かりしますね」

「お願いします」


 受付嬢は証明書を見て一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに元の表情に戻る。


「はい、ありがとうございました。こちらの証明書はお預かりしますね。それと、こちらが報酬の100万レンドです」

「ありがとうございます」


 報酬を受け取った一行はテーブル席に着き、分配を始める。


「まず早瀬が多くもらうのは決定な。一番所持金少ないし一番労力使ってたと思うし」

「ども」

「とりあえず60万。で、我たちは正直要らんのやけど……」


 玲音が金貨を奏の方に寄せながらチラリとその顔を見る。

 不服そうな顔をして、「俺が納得できん」と。


「だと思うので6万は貰います」

「それでもなぁ……」

「私らは金なら大分あるんだよね」

「クソ、言ってみてぇ」


 はいー、と6万を二人は受け取る。


「残りはギルさんとか協力してくれた人に」

「渡すか」


 報酬をしまい、三人は立ち上がる。


「次は広場の噴水だね。ルカちゃんたちもう戻ったみたいだしロイくんに会えるかも」

「その後、あの酒屋によるか」


  ※


「あ! お兄ちゃんたち!」


 約束をしていた広場に行くとロイの家族が待っていた。

 そこにはルカもいる。


「おー、ロイくん久しぶり」

「ルカちゃんもありがとうね」

「おにいちゃんたち、ありがとー!」


 顔のよく似た兄妹は一行の元に駆け寄った。


「この度は本当にありがとうございました」


 頭を下げた兄妹の両親に一行は分かりやすく狼狽する。


「やめてください。僕らは何もできてないですから」

「でも……」

「そうですよ。色んな人に手伝って貰ったので」


 なおも礼を言おうとする二人の言葉をあからさまに遮ると、二人は渋々といった感じで引き下がった。


「それでは僕らはもう行くので」

「あ、そうやロイくん」

「はい?」


 玲音はしゃがみ込み、ロイと視線を合わせる。


「君の持ってるもんは全部武器になるよ。欠点だと思ってるとこでも。我は君の能力が羨ましい。折角貰ったなら利用した方が得やで」


 その言葉にロイは半分分かったような、半分分からなかったような顔をした。


「また分かるようになるわ」


 玲音は苦笑し、立ち上がる。


「じゃあな」

「ばいばーい」


 手を振って別れた。


  ※


 酒屋は今日も賑わっていた。


「おー、お前ら待ってたぞ」

「ギルさん!」


 三人はいつものギルの隣の席に座る。


「好きなの頼みな。奢ってやるよ」

「やった、あざす」


 遠慮なくカウンターのマスターに注文する。


「あ、そうだギルさん。これ預かってくれますか?」

「あ? なんだこれ」


 奏の差し出した金貨の入った袋をギルは怪訝そうに見る。


「報酬の一部です。協力してくださった皆さんに渡したいんですが、俺らは把握しきれてないんでギルさんに渡してもらいたいなと」

「受け取らねぇよ」


 即答し、ギルは続ける。


「俺たちの目的はそれじゃねぇからな。誰も受け取れねぇんだよ」

「かっこいいですけど、これはもう三人で決めたんで受け取ってくれないとこっちが困るんすよ」


 奏も食い下がる。


「第一、ギルさんには今日奢ってもらってますし色々協力して貰ってるんで」

「それとこれとは別だ」

「俺たちには多すぎるんです」


 不服そうな奏の顔を見てギルは笑った。


「……頑固だな」

「ギルさんには言われたくないです」

「分かった。とりあえず今回は受け取っとくが、次からは受け取らないぞ」

「ありがとうございます!」


 金貨の入った小袋を受け取り、ギルは立ち上がる。


「じゃ、俺はもう行くよ。支払いはこれ使いな」

「わーい。ありがとうございます」

「お前らも今日は疲れてるんだし食べたらさっさと寝ろよ」


 そう言ってギルは店を立ち去った。

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