00.三人と予兆
朽ちて苔むした石煉瓦造りの壁。少し湿った石の床。薄暗く巨大な地下迷宮で、3人はかれこれ小一時間ほど同じ場所を歩き続けていた。
そして18回目に同じ部屋に着いたとき、1人の少女__ 風見 玲音が大きな声で叫んだ。
「ああー! なにこれ、どんだけ歩いても同じ場所。18回目やで? 多分。流石に見飽きたわ!」
「うるっせ。身長に反比例して声はデカいんですかね」
早瀬 奏が言ったように玲音の身長は可愛らしい。
加えて学校では常に自転車の鍵につけた鈴を鳴らし、左近 王兎からは鈴ちゃんという可愛らしいあだ名で呼ばれているのだが、
「あ゛? 何か言った?」
「だからその声どっから出てるんだよ」
残念ながらこの低い声と態度はあまり可愛らしいとは言えない。
「何で数えてるん? っていう質問は置いておくとして、確かにおかしいなぁ。マップ見ててもこんな場所に辿り着く感じじゃなかったし」
玲音の言葉に同意するように王兎は言った。
王兎は玲音と対称的に少し間延びして高めの可愛らしい声をしている。
ただ、ふとしたときに出てくる闇が底なし沼なみに深過ぎるところが少し……いや大分変わっている。というか怖い。
ゲームでは”やられたら何倍にもしてやり返す”なプレイスタイルのため、玲音にはネメシスから取ってネメちゃんと呼ばれている。
「まぁ流石におかしいな、これ。18回目? か。普通迷ったとしてもここまでなるか?」
辺りを見回しながら奏は言う。
王兎と玲音に比べると個性が薄いようだが、2人曰く「3人の中で1番変」だそう。
さて奏と王兎、玲音の3人の関係だが、友達……否、違う。
どう表せば良いのだろうか……ああ、同類という言葉がしっくりくる。
どこが、と具体的には言えないがなんとなく似通うものがあるのだ。
要するに、この3人は同類であり一緒にオンラインゲームをする廃人仲間、というところだろう。
本人達の名誉のために言っておくが、廃人とは言っても成績は全然危険ではない。運動も並だ。
今3人が居るのはとあるRPGの中。正確に言えばとあるRPGをプレイしているところだ。
このゲームはVRゴーグルを付けてプレイすることが出来、しかも高画質でバグが少ないこともあって最近人気である。
「てかさ、このセーブポイントの赤い版って感じのヤツなんなん? これのせいとかじゃないん?」
玲音が宙に浮いた赤い正八面体を眺めながら言った。
このゲームのセーブポイントはこれと全く同じ形だが色は青色だ。
赤い物体は先ほどから一行が迷い込んでしまう部屋の中央で浮いている。
玲音の横に来た王兎はその物体を眺めると
「確かに……バグかな? 隠しステージっていう訳でも無さそう」
と言って奏に視線を向けた。
玲音もそれにならう。
無邪気な子供のように輝いた目が示すのは「ちょっと触ってみる?」といったところだろう。
「まぁ……面白そうだし。どうせ此処から出れないんだったら触ってみるか」
奏は楽しそうな声音でそう言うと玲音と王兎の間に入り、赤い正八面体に手を触れた。
瞬間、辺りが物体と同じような赤い光に包まれ、一行は正八面体に吸い込まれていった。
はじめまして。結声 寝子です。
この小説は絶対完結させます。