第2話 アイドルvs鎌
引き続きフーロ目線です
私はベッドで寝たはずだ
寝たはずなんだけど
周りは人気のない街並み
二階建ての並んだ街で
パルクールのしやすそうな、つまりは屋根伝いに動きやすそうな土地だ
…光の街だったかな、これに似た街は
ただ人気がないのはいただけない
『今回は自分の獲物だけどこっちの用意した靴を履いてもらうをを』
頭に響く可愛らしい声音の胡散臭い声
足元、靴を見ると魔法陣が模様のようになっている
「…あ、すごーい、冒険者ならみんな羨むウィンドシューズじゃん」
ウィンドシューズは足裏から風を起こすことの出来る靴
魔力のこめ方によって風の力強さが変わる
しかもシューズの中でさらに良い奴で無意識にサポートしてくれるタイプ
つまり宙を駆けて大空に飛び上がり滑るように走れるスグレモノ
…魔力が続けば、空中ジャンプ、大ジャンプ、ダッシュ加速ができるものだ
「クソスマホ、私の魔力量…」
『そこは公平になるように靴の出力を調整してるをを』
…そうですか
せいぜいガス欠にならないよう頑張りますよ
私は具合を確かめるように足を踏み込む
加速…
景色が一瞬で後ろに流れる
「これ…は!足は固定した方がいいな」
ホバー移動、多分壁も走れるんじゃないかと思う
ジャンプ、空中ジャンプ…大ジャンプ
宙返りしながら3階相当まで飛び上がる
…背の高い塔、時計塔かな?があって、知ってる光の街にあるはずの魔物侵入防止の壁が無い
二階建ての家が並ぶ
…バトルフィールドだね
着地の際に風を発生させてふんわりと着地する
少し広い街の広場
噴水の横に上手く着地する
「…へぇ、上手いな、この靴支給品だろ?なに?普段から使ってんの?」
気楽に話しかけてきたのは…
「やー、私はサラ、見ての通り、鎌の魔法少女……少女っていう見た目でもないけどね」
相対する魔法少女だった
黒髪をサラリと腰まで伸ばし、前髪の一部は赤メッシュになっている
服装は黒いTシャツに…ジーパンのようなズボン、見た目だけね、ヒップホップダンスでも踊りそうだ、赤いキャップを被ったら完璧だったね
手に握るのはサラの背丈ほどにもある大きな鎌
漆黒の鎌で手遊びする感覚で振り回して私を見ている
靴は私と同じウィンドシューズ
サラ…聞いたことあるはず、しかし頭にはモヤがかかっているのか思い出せない
「おい…無視か?まぁ…敵らしいしな…アンタに恨みはないけど、まぁこんの夢から出るには倒さないといけないわけだ」
『説明してるけど夢じゃないをを、空間ズラしをを…靴の関係上大きめにズラしたから現実と少し違うだけをを』
少し…?建物の様子も変わっているのに?
まだ夢の方がしっくりくるよ
「あ、えっと、ごめんなさい、サラさん、聞いたことがあると思ってたんだけど思い出せなくって、考えてたの」
「奇遇だな、私もアンタは知ってるはずなんだけどよく思い出せない」
ピッと鎌を止めて腰を落として構えた
…
まぁ…殺し合いしますよね
私もなかなかキモが座っている
腰から閃光玉を用意する
「…私はアイドルの魔法少女フーロ
よろしくね!」
私は閃光玉を光らせた
◇
「ぐわっ!?てめっ!きたねぇ!」
私は大ジャンプをして宙に躍り出る
前回は武器が違ったから正面切って戦ったが今回は自分の武器、加えて相手は鎌
私の知ってる冒険者の鎌の使い方なら多少癖はあるが火力の出る太刀、大太刀だ、普通に危険
何より刃の範囲が独特で初見の対人で距離感を掴むことは難しい
なら逃げる、今回はウィンドシューズもあるから足音を消すのも容易だ
宙で腰のベルトを引っ張る
ベルトはするりと手元にきて
留め具扱いしていた四角く、黒い小さなドローンがいくつも飛び立つ
これでこの街のマッピングとサラの追跡は確定できるはず
私は何歩か宙をかけて家に飛び乗った
すぐに伏せて広場の様子を確認する
「…結構視界を奪えてたなら一撃くらい入れとくべきだったかな」
サラはまだ腕で顔を覆って片手で鎌を振り回している
背中からなら…まぁもう回復するだろう
魔力充電を可能にしていたベルトを腰に巻き直してドローンと感覚を、魔力をリンクさせる
頭に浮かぶ街の構造
距離感、高さも分かる代物だけど
…さすがに屋根を貫通して中に何があるのかとかは分からない
固定砲台になるドローンを靴から…
「ねぇ…クソスマホ、私は普段、靴に良いドローンを仕込んでるんだけど」
『ないをを、あの物理的に二段ジャンプするドローンシューズををよね?ないををよ』
こいつ……
魔法世界の魔物に対抗するには機械世界の人は体に魔力が通う量が少ないから不利って知ってんの!?
『なら変身するをを、むしろそのための魔法少女をを』
「をっをっ、をっをっ」うるさいな…
変身すると服が弾けたのはよぉく覚えている
私は色々と仕込んで罠にかけて魔物を狩るタイプだ
武器なんて放電が一回できるスタンガンくらい程度
太ももに触れる
警棒のようなスタンガンはある
むしろこれしかない
屋根伝いに移動して役に立つか分からないものを準備はするけど…
「普段の戦い方って知ってる?」
『閃光玉よろしく燃える玉、水、砂、煙とかで搦手ををよね?』
知ってんじゃん…
「私ここに手ぶらで呼ばれたんだけど」
『メイン武器はその太もものやつををよね?』
あーはいはい、そうですね
そうですよ、変身しろって言いたいんですね分かります
「…をーい!でてこーい!」
さっきからサラは街を練り歩いている
…変身せずに電気ショックで一撃で倒れてくれないかな
『そんな甘い戦闘調整してないをを』
……
それって搦手使えば勝てるから…的な意味含まれてる?
まぁ対魔物用の製品だけど
ドローンを全体把握から集中的把握へと切り替える
全てが目となるリアルタイム情報で実質的に私の死角を潰す
私はシューズに魔力を込めながら空を駆ける
頭上から…!
スタンガンを…!
「なかなか気配を隠すのが上手いな」
サラは私の一撃を鎌で容易に受け止める
「…っ!?」
放電させようとした瞬間目を見開き無理体制ながらも距離を取られた
奇襲は完全に失敗した
「面白い武器持ってんね雷魔法?ガワが耐えれてないよ」
「…ガワ?」
「武器から電気が漏れてるってこと」
なにそれ漏電じゃん
「アンタには悪いけど私はインファイトタイプでさ」
次の瞬間には目の前に鎌を振り上げたサラがいた
遅れて地面が割れて風が発生している
「はっ!やっ!?」
咄嗟に構えたスタンガンが鎌の柄の部分とかち合う
鎌は刃の部分を柄を軸に回転させながら引いていく
今の位置は背中に荷物を背負っていたら貫かれていた…
左右が反対の方向から鎌が迫る
先程より更に刃の部分は後方に
…サラの口元が歪む
私は咄嗟に前に踏み込んだ
放電させながら…当てる!
「…っ!」
サラは腰を低くして私のスタンガンを下から払い除けた
更にお腹を力いっぱいに押される
「うっ…」
背中に鎌の刃が押し付けられた
「ひぐっ…」
「…よく前に逃げれたね、みんな後ろに飛び跳ねるから鎌の餌食になるんだけど
…アンタは変わってるよ」
サラは俯いているが
…対人はよくやっている口調だ
背中が燃えるように熱い
痛みが熱く感じる
体をねじってサラの後方へシューズの力も借りて飛び込む
追撃は来ずに鎌から逃れられた
しかしねじった時に更に深く切り込まれたのが分かる
「…つぅぅ」
「あり…逃げられちゃった」
長い髪を前面に垂らしてその髪の隙間から私を見る
鎌は自身の方に引くように刃があった
…下手に上下に逃げようとすれば頭が取れるか足がもげるかなっていただろう
鎌の内側に入るとその時点で追い詰められた状態になるわけだ
サラはすぐに近づいて振り回してくる
体に痛みが生じ先程よりも鈍くなった
何とか回避出来ているのは建物の壁を上手く使いながらと鎌の角度をドローンで見ることができているから
近距離だと鎌の内側がデッドゾーン
中距離だと直接、刃で刺すか斬るかしてくる
何度も振り回される鎌を刃の届かないところにバックステップでひたすら回避する
「はあぁあぁあ!!」
めちゃくちゃな振り回しだ…例えるなら滅多斬りの振り方だけど
どれも一度受ければ一撃必殺になりそうな振りだ
その追いかけっこも私の後ろに壁が見えてきて終わりになる
サラは少しニヤけたが、ドローンで見えていた私は大きく後方に下がって思いっきりジャンプする
跳躍はシューズのおかげで一気に屋根の上まで飛び上がった
「まてっ!」
サラが吠えた
着地して
すぐに後ろを向いて四つん這いとなる
「くらっ…えっ!!」
飛び上がって来たサラもドローンで見えている
タイミングよく
私は馬蹴りをサラのお腹に叩き込んだ
…さらにシューズに思いっきり魔力を込めた
「おぐぅっ!?」
ゴリッとサラのお腹に私の蹴りがめり込む
そして風も相まって結構な距離を吹き飛んでいく
綺麗な放物線をえがきながら時計塔の方へ
「…起爆」
…………ズガンッ
結構なラグがあるがここから距離のある時計塔が爆発した
根元が折れて瓦礫が吹き飛んだサラに降り注ぐ
遠目で見る感じ対応されてそうだ
空中ジャンプも使って近寄る
油断しているように見せかけれるといいんだけど…
「…大きな瓦礫って斬れるようなもんじゃないと思うんだけど」
「人の上に瓦礫を落とそうとするのも大概じゃないか?」
サラの周りだけ瓦礫はない
にわかには信じ難いが自分に迫る瓦礫だけ斬ったのだろう
「にしてもアンタ策士だね…加えて周りに飛んでるそれら、アンタの目でしょ」
機械世界の人がドローンを使うのは結構広まっているはず
…だから単なる情報収集不足だろうけど
雑に褒めとく?
「さすが、やっぱり分かるもんかな?」
にヘラと笑う
ちょっとぎこちなかったかも
「あぁ、断ち切るは魔力、汝、魔女也や?」
「……?…っ!?」
にやぁと笑うサラ
今のは、詠唱だった
なめらかに発せられたその言葉の異質さに気づくのが遅すぎた
サラの衣装は「既に変わってる…!?」
鎌の魔法少女に既に変身していた
あまりにも変化が少なく気づかなかった
それとも最初から変身していたのか…?
息苦しくなり体が縛られていく
両手を頭の上で縛られ、足が浮く
ドローンを使った目線から、私は吊るされるタイプの異端審問、魔女狩りにあっていた
…負けた、呼吸するので精一杯で魔法少女になる言葉を紡ぐことも出来ない
「ギルティオア……トリックオアトリート?」
「…はっ……はっ…一思いに……やりなさいよ……」
「あはは、ごめんごめん
…ちなみに変身してないからね?」
「…なっ!」
「魔女狩り」
紫のオーラを纏った鎌がウィンドシューズで宙を歩いてきたサラによって振り下ろされる
その一撃に痛みはなかったが、意識は刈り取られていった
◇
『負けぺけ』
「うぐぅ…」
重い体を動かして起きる
起きた場所はベッド
寝たはずの場所だ
『魔法少女は変身しないとただの少女に決まってるも、そりゃ負けるも』
スマホに表示されるのは男の子向けじゃないか?と意識した結果脳内だけの会話になったマスコット
そんな元クソスマホがタラタラ説教してくる
ちなみに魔法少女対決はトーナメント方式らしく優勝者が決まるまで私に出番はないらしい
『次回は主人公目線じゃ無くなるも、仕方ないもね』
「そうですねぇ…」
つまりは対人しなくて済むわけだ
よかったよかった
…あっ
サラという人物
雷の街のヤバい集団、第六遊撃隊の人じゃん…
そりゃ対人戦も上手いよ
そんなわけで、私、アイドルの魔法少女フーロ……元、は負けてしまったのでした
◇
フーロ
機械世界から来た人の一人
いわゆる支援型の魔力の流れ持ちの為前線に立つタイプではない
逆に魔法と機械を織り交ぜて作られた製品は上手く使える
ドローン
カメラから射撃、足場に電気ショックまで1つ1仕事だが用途ごとに用意すれば無限の可能性を産む存在
安くない
スタンガン
名称はスタンガンだけど警棒チック
流した魔力が電気になってしびれさせる、元の魔力の持ち主は痺れない
内部のギミックで一度だけ超火力の放電ができる
強度はなかなか、ミニ棍棒的な
安くない
各種○○玉、球、弾
閃光玉、フラッシュバンから火炎玉、爆発弾、圧縮された物を魔法で遠隔で解放する使い方をフーロはする
安くない
魔力水
多分出ないからおまけ
低魔力者が飲むと魔力増強、普通以上が飲むと魔力暴走する飲み物
普通に自作可
ただし低魔力者は作るのに時間がかかる…
フック&ワイヤー
フーロが勝ってれば次回にでも出そうと思っていた装備、いわゆる立体機動装置
アクション撮影とかのワイヤーを日常的に出せるんだったら強いよねと
まぁウィンドシューズの方が手間が少なそうですけどね?
ウィンドシューズ
靴裏の溝から紐まで使った魔法陣はまさに魔法の靴、殴られると魔法陣がズレる…ということも値段が張る物は無い、防御魔法やらかかってるからね
冒険者なら持っとけと最近の流行り
安いものから安くないものまで様々
本当は屋根伝いに鬼ごっこさせたかった
鎌の魔法少女
サラ
第六遊撃隊所属
魔法世界の人ながら魔法が使えない人
その鎌は魔力を吸い取り吐き出す機能付き、魔法使いキラー
魔法使わなくってもキルするけど
メリッサよろしく同作者別作品から引っ張ってきたけどサラメインの話は一話分のみだったり
男運が無い
外付け魔力で魔法少女化、したかどうかの判断はお任せしますがダイス運は初手クリティカルと強かった
これで負けたら嘘だ
ダイスロールはノリのいい友達に手伝ってもらってます
豪運はゲーマス泣かせなのはどこでも変わりません
るび振れた!