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どこの部位が美味しい?


「ねえ。雨宮君てやっぱり頭が美味しいよね?」


 今は昼休み。右手に箸、左手に英単語帳。完璧な装備で俺は弁当を食べている。突然、隣の席で同じく弁当を食べている笠野がそんなことを聞いてくる。

 どうして彼氏と食べないのかと聞いたら、「司は生徒会の仕事があるから生徒会室で食べてるんだよ」と言われた。だったら一緒に生徒会室で食べればいいのにと思わなくもなかったが。


「何の話だ?」


 奇妙な質問に思わず聞き返してしまう俺。一度答えたら終わりだと分かっているのに。


「人間のどこの部位が美味しいかなって話。雨宮君は脳に栄養が全部いってそうだから、頭が美味しいのかなと思って」


「今食事中なの知ってる?」


 そういうグロい話はやめてくれ。食欲がなくなる。


「あ、雨宮君食事中にそういう話ダメな人?」


「逆にダメじゃない人がいるのかよ」


「私」


 そう言って自分を指差す笠野。お前は人間とは別枠だ。


「それでさ。私はどこが美味しいと思う?」


「その話続けるのかよ」


「いいじゃん。どうせ雨宮君ほとんど食べ終わってるんだし」


「食べ終わったら勉強するんだよ」


「うわー。これだから天才君は」


「前から思ってたんだけど、俺は天才じゃないから」


「なんで? 頭良いじゃん」


「それは努力の結果だ。努力しなきゃできないのは天才とは言わない。それは所詮秀才だ」


「うーん。それって同じじゃないの?」


「どこが」


「私さ。勉強できないの」


「知ってる」


 何を当たり前のことを。


「即答だね。まあ、いいや」


 いいのかよ。


「私はさ、多分努力したら雨宮君より勉強ができるようになれる気がするの」


「そうだろうな」


 だってお前は"天才"だから。俺みたいな要領の悪いやつとは違う。


「でも、しないの」


「......何が言いたい?」


「うーん。私もよくわかんないんだけどね。努力できることも才能だと思うんだよね」


「努力なんてやろうと思えばできる」


「それだよそれ!!」


「は?」


 どれだよ。


「やろうと思えば、なんだよ。つまり逆に言えば、やろうと思わなければできない」


「その、やろうと思えることが才能だってか?」


「そう。だから雨宮君は"天才"なんだよ」


「......」


「ところで、どこだと思う?」


「何の話だ?」


「私の美味しい部位の話!! そういう話をしてたでしょ!!」


 そう言えばそうだったか。笠野の美味しい部位ね。


「あ!! 胸とか言わないでよね!! セクハラだからね!!」


 そう言って胸を両手で抑える笠野。


「な!? 言うわけないだろ!!」


 少し目線がいったのは内緒だ。まあ、でも多分そこを除けば美味しいのは、


「目、かな」


「目? あ、もしかして自分が目が悪いから私の視力の良さを奪っちゃおって考えでしょ?」


「まあ、そんなところ」


「やっぱりね。ふふ、私は雨宮君のことなら何でも分かっちゃうんだよ!!」


ふふん、と世の男子が俺と同じ質問をされたら真っ先にそこを答えるであろう胸を張る笠野。


 本当は笠野の見ている世界はきっと綺麗で、それを見る目もきっと何の不純物もなく美しいと思ったからなのだが、それを言えば間違いなく今以上に調子にのるのでやめておく。



 


 「君はどこが美味しい?」

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