問い質せ
「それでは、第二巡目と行きましょう!! おー!!」
「おー」
二巡目。
再び、葵が質問で俺が回答だ。
「よし、それじゃ質問!!」
てれん。
「緑の初恋はいつ?」
「......パードゥン?」
とんでもない質問をぶち込んできたんだが。
「パンダ丼?」
「なんてものを丼にしてるんだ。中国の方々に怒られるぞ」
「もー、誤魔化してないで答えて!! 言い辛いなら嘘ついてもいいんだよ?」
ニマーっと聞こえるような笑みを浮かべながら、葵は俺の答えを待つ。
何か期待されているようだが、期待に応えられるような答えをそもそも持ち合わせていない。
「そもそも初恋の経験がない」
「えー、ほんとにー?」
「本当だ。うざいからニヤニヤすんな。何が面白いんだ」
「べっつにー?」
どことなく嬉しそうな葵を無視して、俺は次に聞く質問を考えることにした。
さっきは恥ずかしいことを聞くことによって、嘘をつかせる作戦に出た訳だが。あの具体的なエピソードを聞くに、さっきの答えは本当と考えていいだろう。葵にあんな上手な嘘がつけるはずもない。
さて、次はどんな質問するべきか。
「初恋が無いってことは、今も好きな人はいないってこと?」
「次の質問は俺の番じゃなかったか?」
「これはゲームじゃなくて、普通の質問だよ?」
「だったら、答える義務は無いな」
「まあ、そうだけど。結局最後には分かることじゃん? 嘘かどうかは」
「なおさら今のタイミングで言える訳ないだろ。嘘かどうか分かっちまうんだから」
「......それもそっか」
何だ? ゲーム外の質問で俺の精神を揺さぶら作戦か? なかなか悪どい手を使ってくるじゃないか、葵のくせに。
余計なことをさせない為に、とっとと質問をしてしまわねば。
「じゃあ質問するぞ」
「ばっちこーい」
「この前の数学のテストの点す」
「28点!!」
「即答かよ。そんで赤点じゃねえか」
ダメだ。テストの点数なら言い辛いだろうと思った俺が馬鹿だった。いや、数学28点の人間よりは馬鹿では無いが。
「ふっふっふっ、この程度の赤点私には痛くも痒くも無いのです!!」
「高校生的にどれくらい痛いのか、物理的に教えてやろうか?」
「それはDVDだよ、緑」
「多分DVって言いたいんだろうけど、それすらも使い所間違ってるから救いようが無いな」
DVDは、デジタルヴァーサタイルディスクの略。DVは、ドメスティックバイオレンスの略。全く掠りもしていない。
「ちなみに、緑は何点だったの?」
「もちろん100点満点だが?」
「あ、この質問には答えるんだね」
「何か問題でも?」
「いや別に。それじゃあ、お互いラストの質問に行こうか?」
「了解」
三巡目。今まで嘘をついていなければ、ここで嘘をつかなければいけない。逆に一度でも嘘をついていれば、本当の事を言わなければならない。相手の嘘を見破るための最も重要な場面と言えるだろう。
まずは葵の質問。さて、何を聞いてくるか。
「それじゃ、質問」
その瞬間、なんだかその場の雰囲気が変わる音が聞こえた。どんな音かと言われれば説明はつかないのだが。
例えるなら、それは戦が始まる前の法螺貝が鳴る音のような。
「私のこと、好き?」
「ねえねえ、CDは何の略なの?」
「コンパクトディスクだな」
「じゃあ、wktkは?」
「ワクワクテカテカ」




