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近づいてくる崩壊というやつの足音


「頭痛が、痛い」


 笠野との波乱の買い物が終わったその翌日、月曜日の朝。目が覚めた途端訪れた頭痛に、思わずそんな言葉を俺は発した。

 その日、俺は熱を出して学校を休んだ。

 高校生活が始まって以来、初の欠席であった。








「誰だ?」


 熱があることを確認してから学校に欠席の連絡を入れ、その後すぐ眠りについた俺は誰かが階段を上がってくる足音で目を覚ました。


 部屋に置いてあるデジタル時計の画面にはと『11:30』と言う表示が。

 親は仕事へ行き、妹の奏は『今日は休んでお兄ちゃんの看病をします!!』とかほざいていたが、何とか学校へ行かせたので今は家には俺以外誰もいないはずである。


 やがて、足音は俺の部屋の前まで来たところで止まった。


 俺はすぐに警戒体制に入った。必殺、寝たふり!!


「お兄ちゃん大丈夫?」「ヤッホーイ、ダンさんが遊びに来たぜー」


 毛布にくるまり、最強の防御魔法を展開した俺がいる部屋の扉をノックもなしに開いて入って来たのは学校に行ったはずの妹、奏であった。朝は確かに着ていたはずの制服は着替えられており、今はいつもの部屋着である。


「俺は大丈夫なんだが、奏は大丈夫じゃないな。今すぐ学校へ行ってこい」「おーい、みーどりー」


「大丈夫大丈夫。ちゃんと学校には兄の看病をするので休ませていただきますって連絡を入れたから。先生も何も言わなかったし」「オレも緑の看病をするって言って学校を休んできたぜ」


「それは奏がすぐに電話を切ったからじゃないのか。いったいそれのどこが大丈夫なんだ。きっと今頃は職員室の話題ランキングで"雨宮奏さんブラコン疑惑"が急上昇中だぞ」「"ダンさん友達思いの優しい男疑惑いやもはや確実"も急上昇中だな」


「おお。私とお兄ちゃんで学校中の話題は持ちきりなんだね。この調子で外堀は埋めていって、結婚もそう遠くない未来だね」「オレは愛人でいいぜ。もちろん緑のな」


「そんな未来は引き出しに詰め込んで机ごと燃やせ」


「全く奏ちゃんは相変わらずブラコンだねぇ」


「全く雲坂さんは相変わらず蜘蛛野郎ですね」


「それどういう悪口!?」


「おい奏。せっかく虫してたんだから反応しちゃダメだろうが」


「"虫"じゃなくて"無視"だよね!? 虫するって何!?」


「あー、ごめんなさいお兄ちゃん。うっとおしい蜘蛛、いや虫がいたから我慢できなくて」


「いやそれあんま変わってないよ奏ちゃん。オレの名前蜘蛛坂じゃなくて雲坂だからね?」


 さっきから突然現れてうっとおしいこの男は、雲坂弾(くもさかだん)。俺とは違う高校に通っていて、同い年で幼馴染みだ。それ以上の関係ではなくそれ以下ではある。


「一応聞いとくがなんで弾までここにいる?」


「そりゃ奏ちゃんから緑が倒れたって聞いたらねぇ。駆けつけないわけにはいかないじゃん?」


「奏?」


「ごめんなさいお兄ちゃん。お母さんたちは仕事で朝からいなかったから、私だけでは心配だったので。こんな蜘蛛野郎に頼らざるを得なかったんです。雨宮奏、一生の不覚です」


「そこまで言うことなくない!?」


「そもそも俺は倒れてないんだが。ちょっと疲れが溜まってだだけだって朝も言っただろ?」


「そうだけど、もしものことがあるかもしれないし。雲坂さん程度なら呼んでもいいかな、と」


「オレもそれなりに忙しいんですよ奏ちゃん」


「心配してくれるのは嬉しいが、それで学校休むのは良くないな。奏は受験生なんだから、1日でも休んだら大変だぞ」


「はいお兄ちゃん。次からは気をつけます」


「なら良し。とりあえず今日のところはしょうがない。俺が勉強を見てやる。熱も多分下がったしな」


「はいはーい!! とりあえずお昼食べようぜー。緑作ってくれよ」


「先に昼ごはんを食べることとそれを俺が作ることに反対はしないが、弾の分を作るのだけは気に食わない」


「さっきからオレの扱いが酷い!!」


 騒がしい奴が若干一名いるが、たまにはこういう家でゆっくりする時間も大事だなと感じた今日という一日だった。




 


 





 ......やつが来るまでは。









「はいもしもし雨宮です。お? もしかして緑の彼女さん? あ、違うの? ただの友達? あーそれ恋人一歩手前のやつじゃん。え? オレ? あー、まあそんなところかな。あ、そうだ。良かったらお見舞い来てくんない? 緑もきっと喜ぶしさ」

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