無双するヒロイン
ショッピングデート編第7話
前半 笠野葵視点
後半 雨宮緑(主人公)視点
「ねえねえ君、俺たちとちょっと遊んでかない?」
クレープを食べていたリエちゃんとその食べ顔を堪能していた私に話しかけてきたのはなんだかチャラチャラした雰囲気の三人組の男達だった。
あ、もしかしてこれはナンパでは? 見たか雨宮君!! ほら!! 私だってナンパされるのだ!! はっはっは!!
「もしかしてその小さな女の子は妹さんかな?」
何やら変な笑みを浮かべながら、チャラ男その一がリエちゃんに近づく。リエちゃんは突然現れた男達に怯えているようだった。
男は撫でるつもりかリエちゃんの頭へと手を伸ばす。
「可愛いお嬢ちゃんだグハッ!?」
......まあ、触らせるわけないよね。
私がリエちゃんに近づいた不届きものの手首を軽く捻ってやると、諦めてソイツは手を引っ込めてくれた。
「え? さっきまでここにいたよな? は?」
さっき私が座っていたリエちゃんとはテーブルを挟んで正面に位置する今は空いた席と私を交互に見ながらその近くにいたチャラ男そのニは何かを言っているようだった。
ちなみに私はもちろんリエちゃんの隣にいる。
「てっめ、調子に乗んなっよ!!」
突然怒ったように顔を歪めたチンピラその三が私に握り拳を近づけてくる。ジャンケンかな? はい、パー。
瞬間、拳と拳がぶつかるような音がする。
実際は拳と手の平だけど。
「な!? 受け止めた、だと!?」
そんなにジャンケンで負けたことがショックだったのか、これでもかというくらい目を見開くチャランポランその三。
「よそ見してんじゃねえよ!!」
何やら叫びながらジャンケン好きその一がさっき捻ってやった手とは逆の手をはたまたギュッと握って私の顔へと向けてくる。
ん? あれ? これもしかして私を殴ろうとしてる? え? なんで?
「もらったああああ!!」
男の拳は私の顔へと直撃「よっ、と」する前に首を傾ける。
「ぬお!? 避け、へべらびゅ!?」
私にまさに間一髪のところで拳を避けられた男は勢い余ってテーブルへと突っ込む。
「ちょ、調子に乗るなよ!!」
諦めの悪い男そのニの声が後方から聞こえた。
「もういい加減に」
男たちのしつこさに流石の私も呆れながら振り返ると、そこには。
「なっ!?」
薄汚れた手でリエちゃんの腕を掴んでいる汚物がいた。
「このガキがどうなっても知らねえぞ!! 黙って殴られやがれ!!」
あー、そういうことしちゃうか。仕方ない。
......もう、ヤるか。
「「「ひ!?」」」
私の殺気に男達が気圧された、その時。
「はい、失礼しますよー」
聞き覚えがありすぎる声がしたかと思えば、突如リエちゃんを捕まえていた男の頭の上に何かが振り下ろされた。
「ぐへっ!?」
その声の主は、
「雨宮君!?」
そう、そこに現れた救世主は、会う度に憎まれ口を叩き合うクラスメイトで隣の席の男の子、雨宮緑、その人だった。
「頼むから、人殺しはやめてくれ」
私のヒーローは、心底めんどくさげにそうぼやいた。
◇◆◇◆◇◆
とりあえず、状況を整理しよう。
俺の足下には、怯えたように俺の右膝のあたりを両腕でぎゅっと掴んでいる女の子。十中八九この子が理恵ちゃんで間違い無いだろう。
そして、足元で倒れている男は置いといて、目の前の少し離れたところには、明らかにこちらにすごい敵意を向けている男二人。それと、......。
拳を握って空手名人の如き構えをしたまま、こっちを見て呆けているチートゴリラは放っておこう。
「てめえ、この女のツレか?」
男の一人、まあ、チンピラその一とでもしておくか、そいつが笠野を指差し、俺に問う。
「まあ、不本意ながら」
「不本意って何!?」
ギャーギャーうるさいなぁ。
「こっちはその女に手首へし折られた挙句、たった今、あんたに鈍器で一人殴られてんだよ。どう落とし前、つけてくれるつもりだ、あ?」
今時、落とし前て。てか、手首へし折られたって、何やってんだよゴリラ。
「手首の件は慰謝料なりなんなりソイツに請求してください」
「え!? 雨宮君なんとかしてよ!!」
絶対イヤ。




