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迷子の迷子の子猫ちゃん

ショッピングデート編第5話

前半 笠野葵(ヒロイン)視点

後半 雨宮緑(主人公)視点


「こんにちは!! お名前、なんて言うの?」


 ぐすんぐすんと泣いている女の子の目線にできるだけ近づけるため少し屈みながら私はそう声をかけた。すると、少女は顔を上げ、涙でべちょべちょになった顔を私に見せた。そのまま女の子は私の方をジッと見たと思ったら思わぬ一言を発する。


「ぐすっ。......ガンバルマン?」


「え?」


 いや本当に訳がわからなかった。開いた口も目も鼻の穴も塞がらなかった。

 ガンバルマンってさっきのヒーローショーのヒーローだよね? 私はヒーローじゃなくて囚われの姫だったはずなのだけれど? いやまあ確かに怪人の一人(?)や二体(?)を放り投げた記憶はあるけどその()()じゃヒーローは名乗れないよね?


「パパが、知らない人には名前、教えちゃいけないって」


「あ、そっか。偉いね、パパの言うことちゃんと守れるなんて」


 一瞬名前? ってと思ったけどよく考えたら最初の質問に答えてくれただけだと思い直す。小さな子ってよく突拍子もないこと言うからなぁ。びっくりしちゃう。

 でも弱ったなぁ。名前聞かないとこの子のお父さん探しづらい気がする。「〇〇ちゃんのお父さんいませんか!?」的なことができないってことだもんね。


「リエ」


「え?」


 またまた突然女の子が何かを言う。リエ? え? もしかして。


「お名前、リエちゃんって言うの?」


「リエチャンじゃなくてリエ」


 おう。雨宮君みたいな返しするじゃん。ってパパとの約束どこやったのこの子!?


「ガンバルマンは知らない人じゃないから大丈夫」


 なるほど。いや私ガンバルマンじゃないんだけどね!? まあでも今だけ名前お借りします!!


「そっか。それもそうだね。リエちゃんはここにパパと来たの?」


「うん」


「ヒーローショー見に来たんだ?」


「うん」


「パパのこと好き?」


「うん」


「きんとん」


「?」


 キョトンと首を傾げるリエちゃん。うん、可愛い。


「いやごめんね、なんでもないよ。パパとはどこではぐれちゃったか分かる?」


「ショッピングモール」


 バッ。おっと、思わず手が出そうになった。危ない危ない。この子は小さな女の子だぞ。あの大悪魔とは一線を画すんだよ。


「ショッピングモールのどこかな?」


 ニコリと微笑み返し、そう聞く。あれ? なんか顔引きつってる?


「リエがクレープ食べたいって言ったらいなくなっちゃった。リエが、わがまま、言ったから。パパはママがいなくなってから大変なのに、リエがわがまま言ったから。だからパパはいなくなっちゃったの。ぐすん、ぐすん。パパーーー!! うえーーん!!」


 あわわわ。ど、どうしよう!? とてつもない地雷踏んじゃったよーー!! 雨宮君、助けてーー!!



 ◇◆◇◆◇◆



「どうぞ」


 近くの自動販売機で買ってきた水をショッピングモールの通路に設置されたベンチに座っている男性に渡す。


「すみません」


 男性は申し訳なさそうに水を受け取り、よっぽど喉が渇いていたのかペットボトルの半分程を一気に飲み干した。


「いえ。......落ち着きましたか?」


「はい。ご迷惑おかけしました。もう大丈夫ですので。本当にありがとうございました」


 男性は頭を下げてから立ち上がろうとする。


「まだ顔色悪いですよ。休んだ方がよろしいかと」


「お気遣いありがとうございます。でも、急いでいますので」


 男性は、俺の言葉には耳を貸さず、その場を去ろうとする。しかし、その足取りは見るからに重い。


「急いでるならなおさらですよ。話くらい聞きますので」


「......」


 背中越しにそう呼びかけると、男性はその場で立ち止まった。俺はもう一つ念押しする。


「急がば回れ、ですよ」


「......娘を」


「......」


「娘を探してるんです。まだほんの4才なんです。つい最近保育園に通い始めたばかりなんです。ここには、娘とヒーローショーを見に来て、それからクレープを買いに行こうとしたら見失ってしまって。......父親失格です」



「君のことは雨宮二世と呼ぼう。えっへん」

「?」

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