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迷子はどっち?

ショッピングデート編第4話 途中少し笠野葵(ヒロイン)視点



「これ、お願いします」


 厳しい選抜の末生き残った商品をレジの店員へと手渡す。


「2,775円になります」


 ジャラッ。事前に用意していた代金をすぐさま差し出した。


「お願いします」


「......はい、2,775円ぴったりお預かりします。レシートはいかがしますか?」


「いただきます」


 基本的に俺はレシートを受け取る派だ。受け取った商品になんらかの問題があっては困るからだ。


「ありがとうございました」


 目的の物を買い終えた俺はその店から出た。


 これで今日の目的はほぼ終わったと言っても過言ではないだろう。


 しかし、選ぶのにかなり時間がかかってしまった。おかげでこのショッピングモールに来たのは9時前だというのにもう今は昼の1時前である。だが、ようやく買えたのだ。そう、


 欲しかった()()()を。


「......」


 ん? 何も反応がない。いつもならこういう時は鉄拳、いやウルツァイト窒化ホウ素拳が飛んでくるはずなんだが。



 ......あ、忘れてた。



「はぐれてたんだったわ」


 先ほどいたヒーローショーのステージとはそれなりに離れた場所に位置する本屋の前にて。俺、雨宮緑は共にショッピングモールへと来ていたクラスメイト、笠野葵の不在に気づき、一人呟いた。



 ◇◆◇◆◇◆



「もう、一体全体どこ行ったのー!!」


 怪人二人組に襲われていた私をあろうことか見捨てて逃亡を選んだこの場にいない憎き無愛想なクラスメイトへのやるせない怒りを、叫ぶことによって紛らわせる。


 雨宮君が会場から颯爽と立ち去った後間もなく、私は彼への怒りをエネルギー源にして私を捕らえていた怪人2人を放り投げてすぐさま彼を追いかけたのだが、残念ながら見失ってしまったのだ。

 運動神経皆無な彼はどうやら逃げ足だけは速いらしい。


 30分ほど彼を探し続けているが全く見つかる気配がない。こんな時に連絡できる手段がないというのが本当に困り物だ。


 今私は、もしかしたら元の場所に戻ってきているのかもしれないと思い、再びヒーローショーのステージの近くへと戻って来ている。

 もうショーは終わったのか、さっきと比べて随分と人の量は減っていた。ステージ上に「ワタシの、ワタシの出番が」と半ばヤケクソ気味に呟いて座り込んでいる男性がいるが、大丈夫だろうか?


 一通り辺りを見回して探し人がいないことを確認した私は、その場を去ろうとしたのだけれど、


「ぐすんぐすん、パパー!! どこ行っだのーー!! うえーーん!!」


 助けを呼ぶ少女の声がして足を止めた。



 ◇◆◇◆◇◆



「意外と美味しいな、惣菜クレープ」


 笠野を探そうと笠野が行きそうである場所を回り、その一つであるクレープ屋にて買った、聞いたことはあったけど食べたことはなかった惣菜クレープとやらを食べながら俺は再び笠野の捜索を再開した。


 もうお昼過ぎだ。きっと笠野もお腹を空かせているはず。食べ物の匂いに釣られ、どこかの飲食店に行っているに違いない。


 俺はそう完璧な推測を立て、飲食店を中心に笠野を探すことにした。


「いやでもほんと惣菜クレープ美味、うぉっ!?」


 突然向かいから歩いて来ていた男性がすれ違い様にふらっと俺の方へと倒れかかってきて肩をぶつける。その瞬間、俺は思わずクレープから手を離してしまった。そしてそのまま、クレープは重力に逆らえず、ポトッ。その瞬間俺の好きな食べ物トップ3に入ろうとしていたそれは、食べ物からただのゴミへと姿を変えた。


 ......。ぬおおおおおおお!?


「す、すみません!!」


 一瞬当たり屋かと思ったが、その男性は本当に申し訳なさそうに謝ってきた。


「いえ、こちらも不注意だったのでしょうがないですはい、しょうがないんです」


 ああ、ダメだ。思ったよりショックがでかい。男性に悪気がないことを察し、平気であることを伝えようとしたのだが、言葉とは裏腹に俺の声のトーンは自然と下がってしまっていた。


 そんな俺の様子に男性は慌てたように、


「本当にすみません!! べ、弁償します!! おいくらでしょうか!?」


 ポケットから財布を出し、千円札を取り出して俺の手に握らせる。


「お釣りは要らないので!! すみません今急いでまして」


 何か切羽詰まったような表情をしたその男性は立ち去ろうと足を踏み出し、


 ふらっ。


「ちょっ!? 大丈夫ですか!?」


 バランスを崩し、その場へと倒れ込んだ。




「ギョギョギョ、人間恐ろしい」

「ブヒブヒ、JKマジパねえ」

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