44、呼び出し
あれから三ヶ月が経とうとしている。私は除籍処分を言い渡され、あの数日後に正式に大学を追い出された。もう何だっていい。あんな学校なんか、こっちの方からおさらばだ。
あの日、マイロニーが事故に巻き込まれたという情報が、警察から学校に報告された。生徒側には詳しくは知らされていない。だが知らされていなくとも、テレビで報道されていたので教えられる必要もなかった。
最近よくある急性大動脈解離を発生したドライバーが運転する車が、速度100キロメートルで渋滞している反対車線へ乗り越えた。そして次々と車が玉突き状態に衝突していき、その中に運悪いことにマイロニーもいたということだ。マイロニーは左足を複雑骨折。全治三ヶ月として、入院した。死ななかっただけ、運が良いとも言える。
『先生も退院なさる。俺は明日卒業する。午後には終わるから、明日大学の門まで来い。フィレール先生からの指示だからな。』
これは昨日、中里から送られてきたメールの内容だ。私は今、これを見ながらベッドに横たわっている。
中里の卒業制作は、この大学史上一番の好評だったらしい。自慢する文章が送られてきていた。中里は良くも悪くも変わっていなくて、少し安心した。
以前の私だったら行かなかったかもしれない。変な自尊心で、誰かの言いなりになんかなるものかと気を張っていたあの頃。マイロニーがこの学校に来る前……約半年間で、私の心は随分と変えられていたようだ。
お昼時間が近くなると、私は携帯をポケットに入れ、財布は持たずに家を出た。
約三ヶ月ぶりの再開。入院中、見舞いには行かなかった。やっぱり、なんとなく後ろめたかったから。せっかく認めてくれたのに、私は自分から道を断ってしまった。
驚くほど私は穏やかだった。血の繋がりのある家族もいない、つらい時相談しあえる仲間もいない、日本で独りぼっちの私。なんだか、宙に浮いた気分だ。だが足はしっかりと地を踏みしめ、前進している。
雲一つない空は、コアブルーの絵の具を水に溶かした色。まだ咲かない枝垂桜の木が、大学の門を囲うように指を伸ばす。その下には、松葉杖をついた色素の薄い外国人と、丸い筒状のものを持った、スーツ姿の男が私を待っていた。




