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水彩のフィヨルド  作者: 佐藤産いくら
34/49

33、Air France・Japon ligne

 雨上がりの夕暮れは寒かった。湿った肌に風が吹き、首の後ろを冷やしていく。ガラガラと鳴るキャリーバッグの車輪の音が、妙にうるさかった。

 もう暗いので泊まるのかと思っていたが、マイロニーはまっすぐ空港へ向かった。着替えの服がもうない身としては、それは助かったと言える。頼めば現地の服を買ってくれそうだが。


 [Air France ・ Japon ligne]

 ―エールフランス・日本行―


 やっと日本へと帰る。私たちの旅は終わった。日本へ帰ってどうしよう。迷いは断ち切れた。このあとどうしようか。

 油絵を描こうか。水彩画を描こうか。…新しい世界に目を向けるという手もワンチャンある。いや、現実的に考えてそれは難しいか。

 頭の中は冷静だった。考えは散らばらず、一つ一つ考えることが出来た。

 白い紙袋の中に入った絵本を取り出す。ノルウェーの絵本屋で買った本だ。タイトルは、『Pétiller』。さっき翻訳アプリで調べたら、『煌めき』と出てきた。表紙をひらく。中は、文字のない色のみの世界ー………。

 マイロニーはこのあとどうするのだろうか。泣き腫らした顔をして、すやすやと眠っている。本当に子供のようだ。

 私はもう大丈夫。マイロニーは?もう、平気?きっと大丈夫だ。心が痛んでいても、私達は歩き続けないと死んでしまう。周りは私たちなんか置いてさっさと次の時代へと移り変わってしまう。

 学校に帰ったら、水彩画を描こう。やっぱり私は水彩画が好きだし、こんな旅に連れてこられたら描く以外ない。


 私は、これから先どんな困難でも乗り越えられるような、そんな気分がしていた。だけど、現実とは甘くないんだと改めて思い知らされることになる。

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