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フタリノミライ

 あの日からちょうどひと月!

 あたしとユキは今までのことが嘘だったみたいに、週に何度も体を重ね、愛し合うようになっている。

 飽きるとだとかマンネリだとか、そんなことは全然ない!

 夜になると――まあ、朝からとかお昼からとか外出先で(!?)って時もあるけど、とにかく自然に、どちらからともなくキスをして、そのままHまでしちゃうってことが日常になりつつある。

 そしてあれ以来、あたし達が“イケナイ”なんてことも、きれいさっぱりなくなってしまった。

 それまでのことがホント、嘘みたいにさ。



 ……そう言えば、あの夜のピロートークでも言ってたっけ。

「こんな簡単なことに」って。

 確かに簡単なことだったなぁ。


“ふたりでしっかり話し合う”


 そんなの、恋人同士なら当たり前のことだったのにね。

 まさかSEXに限ってそれをしてなかっただなんて。

 おかげで紆余曲折あったけど、でもある意味ではよかったかも知れない。

 ユキがイケなかったのは、ユキの思いやりと愛情のおかげ。

 それがはっきりと分かったんだもん。

 ユキの残念なところは、ユキの素敵なところの裏返し! 

 まあ、そういうことにしておこう。




 まあ、そんなこんなで。


 あたしたちのお付き合いは今も順風満帆。

 夜のお付き合いだって、当然ながらそういうわけで――



「ふふっ、今晩こそは勝つからね。ユキ!」

「勝つ? どういう意味だ? 俺は今だってじゅうぶんハナに負けてると思うんだけど」

「もう、そうじゃないって! あたしとユキ、どっちがギブアップするのが早いか。これはそういう勝負なの! 昨日は先に眠っちゃったけど、今日こそは絶対にユキの寝顔を拝んでやるんだから!」

「ああ、そういう……。でもそれならなおのこと負けられないな」

「なんでよ?」

「俺だって見たいから。君の可愛い寝顔をさ」

「ば……っ、バカ! なんであんたはそういう恥ずかしいことを普通に……! うぅ……」


 あたしは間違いなく真っ赤に染まってるであろう顔を枕につっぷし、声にならない声をあげる。

 ホント、ユキはいつもそうだ。

 気取らず、さも当然のことのように、こんなことをさらっと口にする。

 あたしの気持ちなどおかまいなしに。


 さらに質が悪いのが、本人はそれに無自覚だってこと。

 天然で甘いことを言ってくるのが、ホント心臓に悪いんだよね。

 しかも、

 

「いや、これだけ互いのすべてをさらけ出しておいて、今さら寝顔くらい……」


 このデリカシーがない発言!

 まったく、こいつは全然分かってない! 



 ……まあ、でもやっぱそういうことなんだろう。

 どれだけ裸をさらけ出しても、どれだけ快楽に身を委ね合っても。

 それで相手のすべてを手に入れたかと言えば、そうじゃない。

 そんなこととは無関係に愛おしい部分はいっぱいあるし、そういうところをこれからももっともっと共有していきたいって、そう思ってる。

 

 だってあたしは、ユキのことが大好きだから。


 



 ……ただ、そうは言ってもさ。

 この瞬間くらいは――



「ハナ……」

「ユキ……」


 ユキの指があたしの肌にそっと触れる。

 くすぐったいような、心地いいような……。

 ドキドキするのに、同時に安心もできる、不思議な感覚。

 ずっとずっとこうしてて欲しい。

 でも、もっと敏感なとこも触って欲しい。

 相反する感情が身を焦がし、想いとなって溢れ出す。


「いいよ、ユキ……。なんか、こうされてるだけでユキの愛をすごく感じる。あたし、ユキに愛されてるんだって、もっともっとユキと繋がりたいって、そう感じちゃう」


 あたしの言葉に、ユキはほんの少しだけはにかんだような微笑みを浮かべた。

 その表情がたまらなく愛おしくて……。

 彼の首に手をまわし、ゆっくりと自分の方へと引き寄せる。

 そのまま唇をちょっとだけ重ね、また離し……。

 いつものディープキスじゃない、ファーストキスのような初々しい口づけで、ユキの存在を心に刻んでいく。


 少し驚いたように丸めた目を、じっと見つめながら。

 あたしは胸に灯る率直な想いを、正直に、ありのまま口にした。




 ――この瞬間くらいはいいよね。

 もっともっと求め合って、もっともっとさらけ出してもさ。


 だってあたしたち。

 もう“イケナイフタリ”じゃないんだから。


 だから――

  



「ね、ユキ……。今日もいーっぱい、愛し合おうね?」

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