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IRON WARS  作者: ウサギのスープ
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第三話

 俺の両親は二人とも軍人だ。

 俺が物心つく前から忙しく、家をあけがちだった。

 それでも、俺と妹は両親のことを慕っていた。

 休みの日は家族と過ごす時間を大切にしていたし、何より二人とも仲がよかった。

 そして十年前、家にいた両親のもとに『緊急事態』の連絡がきた。

 両親は大急ぎで現場に行ったのを憶えている。

 その日の夜中に帰ってきた二人は「化け物があらわれた」とだけ言っていた。

 そりから数日して、両親は軍が新たに作った特殊部隊『JSF』の配属になり、そりからは二人とも『JSF』で活躍している。

 そんな二人の背中を見て育った俺は、自分も『JSF』に入りたいと思うようになっていた。


*********************


「お前たちには今から、ある映像をみてもらう」


 赤ぶちの眼鏡をかけた、気の強そうなおねいさんはそう言った。

 そして俺たちは、壁に埋め込まれたモニターに注目した。

 なぜこうなったかというと、それは一時間前、俺と凛華りんかが『JSF』に着いたところから始まる。


 俺と凛華は『JSF』に着いてすぐ、目の前にある建物に入った。

 そこにたどり着く前にパッと周りをみてみたが、めちゃくちゃ広い。

 話には聞いていたが想像以上だ。

 そして建物の中も広くてキレイ。


「スゲーなココ!」


 つい口に出して言ってしまった。


「そうね、とても広くてキレイだわ」


 凛華もそう言っていた。


 俺たちは受付のおねいさんに道を聞き廊下を進んでいた。


「軍の施設だからもう少しゴツいイメージだったけど、以外とキレイだな」


「ゴツい……?まあいいわ、でも確かに思っていたよりもキレイだわ」


「あ、そうだ!次の道どっちだっけ?」


「え?ああ、コッチよ」


 などと話しながら歩いていた。


──あれ?


 窓から見える景色がさっきと同じような気がする。


「なあ凛華、受付の人に聞いた道コッチであってるよな?」


「え?ええ。あ、次はコッチよ」


「あの、凛華さん。この道さっきも通った気がするんだけど」


「キ、キノセイジャナイカシラ」


「なんでカタコト!」


 ここまできて、迷子になって遅れましたなんてシャレにならんぞ。


「なあ、道を戻ってもう一度場所を聞こう!」


「だ、大丈夫よ。ほらあそこ、扉が見えてきた!」


「いやさっきも見たってあの扉!会議室って書いてあったよ」


「じゃ、じゃあ次はコッチ!」


「いや、むやみに進んでもダメだろ!」


 結局、偶然通りかかった職員の人に試験会場まで案内してもらった。


 なんとか会場までたどり着き、中に入るとすでにほとんど席が埋まっていた。


「よお~お二人さん、そんな所突っ立ってないで座ったらどうだ。オレの隣あいてるぜ」


 そう話しかけてきた奴がいたから、俺と凛華でソイツの隣に座った。


「よう、オレの名前は的場まとばたかしっていうんだ。よろしくな」


「俺は白銀剣児しろがねけんじだ。それでこっちが─」


一凛華にのまえりんかです」


「剣児に凛華ね……。よし、覚えた」


 そう言って自分の額をトントンと人差し指で叩いていた。


「えっと、的場だっけ──」


「たかしでいいぜ。あ~たかしは平仮名で『たかし』って書くから覚えておいてくれよ」


「あ、あぁわかった」


「それじゃお互い自己紹介も済んだし、これから仲良くしようぜ」


「わ、わかったよ。よろしく」


「おう、よろしく」


 かなりマイペースな奴だが、悪い奴ではなさそうだ。


「ところでお二人さんは何、恋人かなんか?」


「こ、恋人!?」


 凛華が俺の横で驚きの声をあげた。


「いや、違うよ。今朝知り合ったんだ」


「そ、そう、違うわよ!」


 自分でも違うとは言ったが、ここまで全力で否定されると少し傷つくな。


「え?なんだ違うのか、仲が良さそうだったからさ」


 などと話していると、会場の扉が開いて赤ぶちの眼鏡をした、気の強そうなおねいさんが入ってきた。


「お前たち、静かにしろ!これより入隊試験を始める」


 ついに、俺たちの入隊試験が始まるのか。


「……と、言いたいところだが、お前たちには今からある映像をみてもらう」


 そう言っておねいさんは、ポケットから何かのリモコンを出して操作をし始めた。

 すると、大きなモニターに映像が映し出された。俺たちはモニターに注目した。


『こちらアルファチーム、本部応答せよ』


『こちら本部、アルファチームどうかしたか?』


 どうやら『JSF』のチームの映像のようだ。


『只今目標と戦闘中、相手の数が多いため増援を寄越してくれ』


『了解した。今からそちらにベータチームを送る』


『よろしく頼む』


 映像は着々と進んでゆく、すると、いきなり画面の中で大きな爆発が起こった。


『ぐああぁぁぁ』


『こちら本部、何があった!』


『只今、敵に攻撃を受けた、増援はまだか』


『今向かっている、もう少し持ちこたえろ』


『しかし、くっ……この化け物め!』


 映像の中で何かが腕を振り上げるような動きをする。


『ぐえっ』


 そして、腕を振り下ろすと同時に、喋っていた隊員の潰れたような声が聞こえた。


『こちら本部、応答せよ!繰り返す応答せよ!』


 そこでモニターの映像は終わっていた。


「今、この映像を見て怖じ気づいた者は、今すぐここから去れ!」


 おねいさんの声が、静まり返る会場に冷たく響いた。

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