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和風ダークファンタジー系乙女ゲームに転生したけど、死亡フラグは全力回避します。  作者: 蒼井 百年
第一章幼少期 ~まずは死亡フラグを撤去します!~
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4話 ~どうしてこうなった~

 修行がしたいと言った、自分に怒りたい。 

 正確に言うなら、西園寺家当主おとうさまの前で言ってしまった自分にだ。

 

 西園寺凜わたしは今、非常に後悔している。前世を含めた三十五年間の中で、最も後悔しているといっても過言ではないだろう。むしろ、断言できるレヴェル(れべる)である。



 何故なら、今!私の!目前に!非の打ち所の無い、かの絶対王者にして、四方神の長「黄龍」が擬態する桐生(きりゅう) (つかさ)が立っているからだ。

 だって!思いもしないでしょう?自分の父親が知り合いと言う人が、悠久を生きる愛を知らない神獣だなんて!


「こんにちは、お嬢さん。御機嫌は如何かな?」


 とっ取り敢えずは平常心を保とう。相手は紳士的な神獣だし、どんなキャラにあっても、いきなり死んでしまうなんて事は無いから、大丈夫、大丈夫。


「ごきげんよう、えっとお父様のお知り合い?の方ですか?」


「あぁ、お嬢さんに聞かせてしまうなんて済まないね。私の名は桐生司、君のお父様の先輩じょうしみたいな者だよ。」


 おぉそう来るか。確か桐生が黄龍であることを知らされるのは、十歳の「現之世うつつのよ入り」という神譲渡(神の子から人又は妖の子となるという儀式)から三年、神の世界から現の世界に魂が定着した御祝いの儀式を終えてからだったはず。

 それまではこんな風に言われるのか~。本当にヒトメグの世界って感じだ。


「はじめまして!桐生様、わたくし西園寺 虎次朗こじろう雪白ゆきしろが娘、西園寺凜ですの!」


 そういって屈託のない笑みを浮かべる。何だか、彼の近くに居ると落ち着くなぁ。これって神獣だからなのかな。

 人間としての年齢は、私と同級生である主人公ヒロインの二十歳歳上だから―今、二十七歳か。男盛りの時期じゃないか!いや、あくまでも見た目の話だけどさ。前世の血が騒ぐなぁ。


「おぉ、しっかりしたお嬢さんだ。凜ちゃんと呼んでも?」


「わたくし、桐生さんのことを師匠だと思って、修行します。だから凜とお呼びください。」


「なら、私の事は師匠で良いよ。それに言葉遣いも楽して構わない、言葉遣いは乙女のための修行さ。これは強くなる為の修行だからね。」


 やった!凜の口調掴みづらかったから、凄い嬉しい。前世の私だった頃から、同級生には男勝りだとか、さっぱりした性格だって言われてたからなぁ。崩しているほうが性に合うわー。


「それでは師匠!これからお願いします!」


「あぁ、これから一年間宜しくな。この一年で凜を変えてあげよう。」


「一年間……ですか?それは何かしら理由がおありで?」


「私は魔法と妖術の基礎を教えに来たからな。それから先は、凜が伸ばしたいと思う魔法分野(木火金水土)妖術分野(式神呪術等)によって専門家の担当になるだろう。」


 一年間で基礎か。高校の理科みたいだな。懐かしい、私自分でいうのもなんだけど上の中の学力だったから、結構難しいのとかやってたんだよね。楽しかったなー、実験とか。まぁ、結局OLで落ち着いちゃったけど。前世の知識が生かせることを願うよ。



「そういう事なんですね、把握しました!頑張ります。」


「ふふっ。じゃあまず、魔法分野と妖術分野における凜の特性を見てみようか。」


「はいっ。でも、どうすれば良いのでしょうか?」


 実を言うと知ってるんだけどね、調べかた。伊達にヒトメグのファンやってないしね!

 魔法石という青黒白赤黄(五色)が混じった拳程の水晶玉と、陰陽石という白黒の太極図を球状にしたような拳程の玉を、それぞれ持って、ある特定の言葉を唱えれば良い筈だ。

 只、その玉ってそれぞれ、所有者や採掘場所によって言葉が違うから、分析魔法を使わない限り、一般的には公的な場所じゃないと使わないのよね、例えば入学式とか、ね。まぁヒトメグでも主人公ヒロインが使ってたしね。

 魔法石と陰陽石の色がみるみる円グラフみたいに色の割合が変わっていって、自分の得意分野が分かるんだよね。それに、色の濃淡で強さも分かる優れもの!


「じゃあ、私の手を握ってくれるかい?」


「えっ?握る……のですか?」


「あぁ私はちょっと特殊な体質でね。分かるんだよ。」


 ……ちょっと?絶対ちょっとじゃないと思うんだけど。恐すぎる。

 この人は敵にまわさないようにしよう。


 それにしても大きい手だなぁ。七歳の凜だと余計に大きく感じるなー。


「えっと、これで良いですか?」


 なんか緊張するな。手を握るのって何年振りだろう?

 てか、凄いなコレ。手を握っているだけで、神気というか神聖な空気が伝わってくる。


「おおぉ!バランスが良いな、それに魔力妖力共に濃い。鍛え方次第で何にでもなれる資質を備えている。」


「本当ですか師匠!やった!それにしても、濃淡でなにか変わるんですか?」


 そうそう、作中でも何回が力の濃淡が出てきてたけど、詳しくは分かりづらくてあやふやだったんだよなぁ。


「そうだなぁ。濃ければ濃いほど、威力や効力は強まる。濃い力は薄めることが容易いが、薄い力は濃縮するのが難易でな。濃い力程珍しく貴重だと言われているんだ。実際に私も君ほどの濃い力を持った者には、久しぶりだ。」


 !!!えぇぇ!それって凄いことじゃないか!

 普通に聞いたら二十数歳分の経験の中で、って意味になるんだろうけど、悠久の時を生きる神獣の経験って考えると、本当に凄いことだよ。


「有難うございますっ!」


 どうしよう、表情筋が緩まる。嬉しい。

 これからの修行が楽しみだ。


 ……乙女のための修行については何も触れないでおく。

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