19話 ~女神様とご対面!~
「はじめまして、かな?私の可愛い愛し子よ。」
すらりと伸びた白い四肢、思わしげに伏せられた瞼から覗く漆黒の瞳、水も滴らんばかりの濡れ羽色の長い髪、紅の弧を描く唇。その身を包む白いチュニックスカートさえも煩わしく思ってしまうほどに、美しい女性だった。
ただ、見覚えは無い筈なのに、何処か懐かしいような気もした。
「えっ、っと?すみません、ちょっと記憶に無いのですが……?」
前世でも今世でも、こんな人にあった記憶がないのだけれど……。
まぁちょっとは、見覚えがあるような、無いような……?
「あらら、ごめんなさいね?名乗らずにいきなり。」
形の良い眉を下げて、その美しい顔に影を射した。
っおおぅ。何もかもが絵になるひとだなぁ。
「私はね、えーっと、貴女達の言葉で言うと……女神っ、かな?」
「へっ?め、がみ。ですか?」
うーん、分からなくもないかな。こんなに美しい人(っつーよりも女神だけど)なら、ひとならざるもの、って言われた方がしっくりくるし。
「うん。そうなの。言葉で表すのなら、三千世界の女神って感じかしら。」
「女神様が何かご用で?」
「あらっ!信じてくれるのね!嬉しい!私ずぅーっと、貴女に会いたかったのだけれど、現之世入りしないと貴女の魂が危険だったから、中々接触できなかったのよ。」
申し訳なさそうに言う彼女は、少し悔しそうにしていた。
それにしても、魂ってどういうことなんですかね?
「魂が危険?命、とかではなくて?」
「んー、どう説明しようかしら。この世界に貴女の魂が、まだしっかりと定着していなかったからね。そんな状態で魂に干渉しちゃうとね、引っ張られちゃうのよ、私の力に。
そうね。まぁ、初めから言っちゃうわ。ねぇ、貴女もともとこの世界の住人じゃないでしょう?」
「そうですけど。どこまで知ってるんですか?」
「どこまで?って聞かれると困っちゃうんだけど、言うなら私の管轄する魂の"全て"のことは知ってる、ってとこかしら。」
女神様は邪気の無い表情で、あくまで純真に、茶目っ気たっぷりの表情で笑った。
「では、私の魂は貴女の管轄内ということですか?」
「そうそう!察しがよくて助かるわ。それでね、貴女の魂ってちょっと訳有りなの。事の発端はね、貴女の前世の魂が、貴女の前世の肉体から剥離しちゃったことなんだけど。」
「剥離?肉体が死んだことで魂が離れてしまったってことですか?」
どういうこと?前世に死んだ記憶があるのに?
「実はね、貴女は死んだと思ってる前世、実はまだ死んでないのよ。本当は肉体もまだ損傷部は大きいものの死に至るまでじゃないの。」
「じゃあ、何故私の魂は剥離してしまったんでしょうか?」
死んだと思ってたのに、死んでなかったとは、いったいどういうことなんですかねぇ。
マジックショーみたいな?……すいません、ふざけました。
「貴女の魂は、あの身体に入る予定じゃなかったの。けど、世の理っていうのかしら、天災みたいなものは起きるのよ。それで、入っちゃったものは、いくら神でも間違えると、魂に障害を与えてしまうからどうにもできなくって。
予定外の結果になることは少ない訳じゃなかったから、様子見ってなってたんだけど。どうやら、事故にあって身体が死に近い状態になっちゃったでしょう?そのせいで魂が勘違いして、身体から出ていってしまったの。」
「それで、迷った魂はどうなってしまうんですか?」
迷ったままだと成仏出来ないし、魂は身体が死んだって思っちゃってるからもう一度いれることはできないし。
そのままだと、ヤバイよね?
「そのままだと危ないでしょう?だから、普段はしないんだけど、ちょっと時空間を弄ってね、貴女の魂をその身体に入れたの。」
「えっ、そんなこと可能なんですか。だってここは2次元ですよね?地球の別の人ならともかく……。」
「あらぁ、2次元ていうのは地球人が勝手に定めた限界よ?私からすれば、地球もこの世界も同じ現実なの。」
!!まじか!すげぇ!
じゃあ2次元旅行とかも神様なら夢じゃないってこと?
なにそれ、オタク歓喜じゃないですかー。
「そうなんですか。……あっ、じゃあこの凜の身体にもともと入る予定だった魂は、どうなってしまうんですか?」
「それなら心配ないわ。だって、もともとその身体に入る予定なのは貴女の魂だったもの。」
「!!なら、どうしてヒトメグでは、私の意思に関係なく凜が動いていたんですか?」
凜がもともと私?じょ、状況理解が追い付かないぃ。
「あれは、地球人が考えたもしもの話よ。確かに設定は酷似しているけど、あの凜に入っている魂は、私が創ったニセモノよ。意思を持たない、台本通りにだけ動く、ロボットみたいな、ね。」
うおぉ、これまたぶっ飛んでますわー。
じゃあ、基本的にはヒトメグと一緒なのに、私の存在が違うってことか。
「私の存在が異端、なんですか?」
「まぁ、貴女からすればそう捉えられるかもしれないけど、実際の予定からすれば、此方の、今の世界の方が正解なのよ?」
いろいろ、真理を知ってしまった気がするー。
でも、それって、私の存在が否定されていない、ってことだよね。良かった。
なんか安心しちゃうなあ。
「そう、なんですね。良かったぁ。」
「とりあえず、言いたかったのはこれだけなんだけど。私、貴女のこと気に入ってるから、またちょいちょい現れるわ。もし、何かあったら相談してね!」
そういって、にこりと笑うと、ふわりと消えた。
なんだか、嵐のような人?女神?だったなぁ。まぁ、色んな疑問が解決したのは良かったけど。
味方に、神様って心強いなぁ。
ややこしい上に、会話が多くて申し訳ございません。
後に分かりやすくまとめたものを、活動記録の方にあげる予定ですので、ご了承ください。