前編
あるところに銀色の髪に青い瞳を持ったお姫様がいました。
両親たちは自分達に似ても似つかない色を持ったお姫様を疎みました。
まだ子供のお姫様に女狂いの王様が珍しい色が気に入ったから、後宮に来るようにとお達しが来ました。
両親は、新しい領地がもらえるとのこともあって大喜びでお姫様を差し出しました。
後宮の中には、様々な美しい女たちがいました。
それは、知らない国の美しい花のように目に鮮やかでした。
お姫様は貴族でも力のある家の生まれだったので沢山の人にかしずかれました。
お姫様はいつも美しくある努力をし、彼らに笑顔を振りまきました。
そうしなければ、ここでは生きていけないことが分かっていたからです。
お姫様は、成長するごとに美しくなって行きました。
王様の執着もそのたびに深まっていったのです。
やがてお姫様は、王様に自分以外の人間を見るのも、自分以外の人間と話すのもいやだ
と言って高い塔に閉じ込められてしまったのです。
お姫様は、嘆き悲しんで倒れてしましました。
それでも王様は姫様を外に出すことは決してなかったのです。
不思議なことにお姫様の体の成長はそこで止まってしまいました。
数年たっても胸は膨らまず、体はまるみを帯びません。
そんなお姫様の中性的な魅力に王様はますますひきつけられました。
そんなある日のこと。
とうとう、重税にあえいだ民衆が革命を起こしたのです。
王様は、奢侈にふけり国庫を無駄にした暴君として処刑されました。
そして、そんな王様に寄り添った妃たちも次々処刑されて行きました。
塔に住むお姫様に仕えていた侍女は彼女を外に逃がしました。
お姫様は、きらきらする豊かな銀の髪をバッサリと切りました。
動きやすい格好に着替えたお姫様は、どこから見ても少年のように見えました。
世間知らずのお嬢様は無我夢中に逃げていると倒れてしまいました。
けれど、そこで運良く人のいい旅人夫妻に助けられたのでした。
夫妻はお姫様の世間知らずぶりに驚きました。
夫妻は、高価な服から何処かの貴族に囲われていた少年が逃げてきたのだと思いました。
夫妻は少年を哀れに思いました。
そうして、子供に恵まれなかった夫妻は、お姫様を自分の国に連れていくと2人の子供にしました。
夫妻はあまりに線の細い少年を心配して、剣の稽古をさせました。
お姫様は、剣の才能がありました。
そうして、見る見るうちに腕を上げていったのです。
夫妻に自分が女の子だということを知られてからも続けました。
暫く月日が流れると、夫妻に子供が宿りました。
夫妻はあきらめていた子供を得ることが出来ることに大喜びしました。
それと反比例するように姫様への扱いはだんだんと冷たくなって行きました。
お姫様は、家を出ることに決めました。