9+1=10
子ども向けの友情童話です。
今日は9月1日。
小人小学校の始業式です。
登校中、青くんは前を歩いていた黄色くんに挨拶しました。
「黄色くん、おはよう!」
「おはよう、青くん。元気がいいね、どうしたの?」
黄色くんも挨拶をかえしました。
「今日は幸せなことがあるんだ。」
青くんがうれしそうに言いました。
「幸せなこと?」
黄色くんが不思議そうに聞きました。
「今日は9月1日だろう?月と日の数を足して10になる日には幸せなことが起きるんだよ。」
「9月1日だから、9+1=10…。本当だ、10になるね。」
「だからぼく、ごきげんなんだ。今月は誕生日もあるから嬉しいな。」
青くんは、とても嬉しそうです。
それを見て、黄色くんも嬉しくなりました。
しかし、それを後ろで聞いていた赤くんが馬鹿にするように言いました。
「そんなのうそに決まってるだろう。8月2日とか、4月6日とかいつも幸せなことあったのかよ?」
それを聞いて、青くんはむっとしました。
「うそじゃないよ、きっと幸せなことあるんだから!」
「今日から毎日学校っていうのがもう不幸せなことだぜ。」
青くんがむきになって言い返すと、赤くんはからかうように言って、学校へ走っていきました。
「幸せなことあるもん…。」
青くんの元気は、すっかりなくなってしまっていました。
黄色くんの元気も、なくなってしまっていました。
学校に着くと、小石の椅子に座って青くんはため息をつきました。
隣に座った黄色くんが、心配そうに見ています。
「言うんじゃなかったかなぁ…。」
青くんはつぶやきました。
「黄色くんも、うそだと思う?」
隣に座った黄色くんに聞きました。
「僕は信じてるよ、青くん。今日は幸せなことがあるって。」
黄色くんがにっこりと笑って言いました。
「うそだぁ。」
「うそじゃないよ。」
青くんは、信じられないように顔をしかめています。
「だって、もう幸せなことあったよ。」
黄色くんが、青くんを見て言いました。
「え、なに?」
青くんは驚いて聞きました。
「今日から学校が始まったから、青くんと毎日話せるし、遊べるでしょう。幸せ。」
黄色くんが言いました。
「それに、今こうして青くんと話していることも嬉しいな。幸せ。」
青くんは目をぱちくりしています。
「ね、今日幸せなことあったでしょう?」
黄色くんがにっこりとわらって言いました。
「本当だ。幸せなことあった。」
青くんも嬉しくなって、にっこりわらいました。
そのあと、二人は学校が終わった後に遊ぶ約束をしました。
またひとつ、幸せなことが増えました。
遊んでいるとき、黄色くんはいいことを考えました。
「青くんの誕生日、9月21日だよね。」
黄色くんが聞きました。
「うん、そうだよ。なんで?」
「ううん、なんでもない。」
青くんが不思議そうに聞きましたが、黄色くんは誕生日までひみつにしておくことにしました。
青くんの誕生日は9月21日。
9+21=30です。
「青くんの誕生日は、三倍の幸せがつまっている日だから、たくさん幸せなことをプレゼントしようっと」
青くんに聞こえないように、黄色くんは小さな声でつぶやきました。
卒論で作ったお話でした。
閲覧ありがとうございます。