表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

錯誤ホラー短編集

通常枠にとらわれない考え方

作者: 錯誤

 

 さあて、今日もお話の時間だ。……なに? 退屈だ? まあ仕様がない。これを無くすわけにはいかないんだからさ。


 それでも、きみの気持ちは理解できるかな。痛いほど。……うん? 『痛い』ってなんで? だって?


 気にするなよ、言葉の綾さ。そう上手くもないけどね。


 さて。じゃあ、こうしよう。きみの気持ちがわかる、親切心溢れるぼくからの、出血大サービスだ。


 文字通りの意味で。……だから気にする必要ないってば。律儀だなあ。そういう生き方って疲れないかい? 別に? あっそ。


 今日はちょっと趣向を変えた話をしよう。……うん? 別にいいって? 別に別にってきみの口癖かい? いけないな。それにきみに拒否権はないよ。


 嘘だけど。でも、まあたまにはぼくにも好き勝手話させて欲しいな。……いつもだろって? その通り。けど、今日のはちょっと違うんだ。きみにも関係ある話かもよ?


 まあ、まったく関係ないかも知れないけどね。それならそれで……だからきみって律儀だなあ。ツッコミはほどほどにしようか。関係なくても聞いてみろって。


 じゃあ、話し始めよう。ご静聴ください。……静かにし……おおっと? きみ、今何も言ってないね? 聞こえるかい? この声が……。


 なんて冗談だって。びくびくするなよ面白いなあ。


 睨むな睨むな。恐くないから。


 気を取り直して。では話そう。首をもがれた子供の話だ……。


 その子供は、言ってはなんだが”異常“だった。


 と言っても、別段目に見えて異常だったわけではない。


 普通に遊び。普通に笑い。普通に恋をした。どこにでもいそうな子供だった。


 けれど、その”普通さ“が”異常“だった。


 その子供は、テストでは常に平均点を取り、身長体重も平均。運動能力も平均だった。


 これだけでは、普通の普通でしかないけれど。


 じゃあ、全国平均と、校内平均と、クラス平均が、すべて”同じ“だったとするならば。


 これは、異常だ。なにがって、全てが。


 子供のやることなすこと、全てが平均的。 恋も勉強も笑いも何もかも。


 なぜそんなことが起きたかは、わからない。


 わかりたくないっていうのが本音なのかも知れないけど。


 ともあれ、子供は首をもがれた。


 なぜって……なぜだろうね?


 わからないよ。ぼくには。


 わかりたくない……ってわけじゃないよ。


 わからないのさ。それを考えるのが、ぼくの宿題。


 ははっ。きみは本当に面白いなあ。『大人なのに宿題があるの』って。


 あるよ。だってぼく、大人じゃないし。


 ……体が大きいのは、別に大人じゃなくてもいいだろ。バカかきみは。


 ううーん。体が伸び始めたのは、そういえば首をもがれたあとからだなあ……うん?

 

 どうしたんだい。顔色が悪いけど。……うん? あれれ。言ってなかったっけ。


 ぼくはとっくに死んでるよ。もちろん、きみもね。


 ははは。気づいて無かったんだ。間抜けだなあ。実にきみらしい。


 まあ語れるほどきみのことを知ってるわけじゃないんだけど。


 関係あったみたいだね、この話。


 きみ、どうやって死んだか覚えてる? 覚えてないなら教えてあげよう……。


 うん? なんでお前が知ってるかって? 理由にはならないけど、まあうん。


 きみも、もがれたんだよ。きみの場合は、両足だけど。


 さあ……多分同一犯なんじゃないかな?


 知らないよ。ぼくはとっくに死んでたんだから。


 え? ぼくらは幽霊なのかって?


 そうなんじゃないかな? ここ、廃校処分にあった小学校だし。


 つまり、ぼくの通ってた学校だよ……うん? 『わたしの学校』……? ああ、そうかそうか。きみ、あの子かあ。そうだったんだ。へえ。見違えたよ。大きくなったね。


 知ってた? ぼく、きみのこと好きだったんだよ。……知らないか。まあ、今言ったんだけどね。


 だから睨まないでよ。笑った顔の方がぼくは好きだよ。


 ちぇ、つれないなあ。


 ……そういえば気になってたんだけど、ぼく、なんでこんなことしてるんだろうね。


 こんなことって、だからきみとお話ししたりさ。うん? 知ってるの?


 『天国に行くための準備』、ね。なるほど、ロマンチックだね。きみらしい。


 え? 褒め言葉だよ? なかなか女の子らしくていいセリフじゃないか。


 あはは。照れた照れた? さっきは冗談だったけど、やっぱりきみのこと好きなのかな、ぼくは。


 まあ、これは希望だけどね。あーあ。普通に恋くらいさせろっての、神様よー。


 さっきまでの戯れ言は全部一旦置いておこう。


 うん。まあ実は全部知ってるんだけどね? 犯人とか。


 それはつまりきみなんだけど。ちなんで言っておくと、きみの両足をやったのはぼくのお父さんだ。


 お父さんはぼくのことが大好きだったからなあ。運が悪かったね。


 ああ、お父さん? 生きてるよ? ……なんで自殺なんてする必要があるんだよ。きみが悪いのに。


 で。聞いておきたいんだけど。


 なんでぼくの首をもいだんだい?


 うん? 『ぼくのことが好きだから首が欲しかった』? はは。やったー。相思相愛だね。


 けれどやっぱりいかれてるなあ。ぼくたちらしい。


 ぼくたちは果たして天国に行けるのかな? 


 『あなたと一緒なら、ここでも天国よ』……嬉しいことを言ってくれる。


 まあ、そこらへんの話は、追い追い……


 プツッ

 この物語はフィクションです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ