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始まりは光の中で

「…あと一年(ひととせ)ばかりで、あの戦いから千年も経つのか…」


 美しい色彩のステンドグラスが目を引く、真っ白な大理石で創られた荘厳な大聖堂のような広間。その中央に、一人の長く眩い金髪の青年が立っていた。


「本当に早いものだ…そう思わないか?」


 その視線と問いの先には、戯れる天使たちの絵が描かれた見上げるほど高い天井から吊り下げられた、白い十字架。そこには死んでいるかのようにぐったりと頭を垂れた、苦悶の表情を浮かべる短い黒髪の青年が磔にされていた。答えは勿論返っては来ない。

 しかし、金髪の青年はふっと恍惚とした微笑みを浮かべ、彼に背を向けた。


「長き間、辛く苦しかったであろう。だがもう少しで永遠に解放される。私の一部として」


 その時、何処からともなく真白き翼を背に持つ無表情の少年が現れた。


「…(あるじ)、闇の神の処断は如何なさいますか?」


「捨て置け。あれには動く力すら残っていない。いずれ消え去り、私は完全なる唯一神となる」


 少年は恭しく頭を下げた。そして彼を従え、光に満ち溢れた果ての見えない長い回廊を歩き出した。


「さぁ、行くぞイーリ」


「はい、主」


  そして、二人の姿が回廊の光に完全に溶け込んだその時だった。


「…ふざけんじゃねぇ…」


 黒髪の青年をがんじがらめにしている茨の蔓が小さく動いた。苦しげに荒く呼吸を繰り返しながら、ゆっくりと頭を上げれば、その闇色の瞳の奥には揺らめく激しい憎悪の炎。瞬間、身体中を覆っていた蔓が引き裂かれたかのようにはじけとんだ。


「…唯一神になるのは…この俺だ…!」


 まるで背に翼が生えているかのようにふわりと床に降り立った青年は、憎々しげにそう吐き捨て、瞬きする間にその姿はどこにも無かった。






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