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 事後報告、として葛原さんを誘ったことをみんなにメールした。

 みんな正直驚いたようだけど、それでも「了解」って返事だった。



 しかし、当の葛原さんからは、芳しい返事はないまま数日が過ぎた。


 そして明日からテストだという日に、突然OKの返事がもらえた。

 葛原さんは、自宅にその絵本があるから、それで練習していくってことだった。

 伍代君から渡された、予防接種の有無の紙を渡しながら、未接種なら今回の参加はもしかするとだめかもしれないと、葛原さんに伝えた。

 葛原さんはそれをざっと見ると、「多分、大丈夫」でも確認する、と言ってくれた。

 そして私は、テストが終わった日に小学校で上演することを伝え、当日はテストが終わり次第部室に来てくれるよう、頼んだ。







「いいものができたから、渡したい」と、生島からメールがきたのは、迷惑にもそのテスト最終日の朝の六時だった。

 そういえば、以前生島は、料理(だっけ?)に凝っていて、上手くできたら私にくれるとか言っていたっけ。

「今日渡したい」なんて言ってきたので、朝、駅で待ち合わせをして受け取ることにした。

 まったく。





「伍代、発熱。早退」

「……そっか。今日は、手話は、なしだね」

 テストが終わり、部室へ向かう廊下で会った四条君に、伍代君が体調を崩したことを聞いた。

「ねぇ、大丈夫?」

 一緒にいた岡村さんに、聞かれる。

 今日は、伍代君と四条君と私と葛原さんの四人で、ミチカの小学校に行く予定だった。


 伍代君が抜けてしまうのは、正直痛い。


「やるしかないし」

 自分に言い聞かせるように言う。

 そこに、葛原さんが来た。

 岡村さんはいち早くそれに気がつき、「今日はよろしくね」と彼女の肩をぽんと叩くと、「じゃあ、頑張ってね」と去っていった。


「岡村さんは、来ないの?」

 葛原さんに訊かれる。

「うん。ナレーション撮りがあるとか、なんとか」

 葛原さんは、ふーんと言った。

「今からさ、部室で通しで練習したいんだ。で、あっちでのスケジュールの確認もしようと」

 葛原さんに、「子どもは大丈夫?」と訊くと、「普通」と返された。

 


 とはいえ、やっぱり葛原さんを誘って、大正解だった。


 岡村さんが読む「八郎」もいいけど、葛原さんのはもっとよかった。


「いいね、故郷の言葉って」

 「八郎」の余韻にひたりながら言う。

「そうかな。自分の家では普通だと思っていた言葉やイントネーションが違う時、いやになるけど」

「ふーん。そんなもんなんだ」

 へぇ、と言ったところで、お腹がなった。


「昼にしようか」と四条君が言ったので、私は生島に渡された自信作とやらが入った紙袋を覗いた。

 もしこれでお昼が済ませそうなら、買う必要はないし。

 

  ……。


「あら。ねぇ、どうしたの、三矢さん」


 袋を覗いたまま動けなくなった私に、葛原さんが声をかけてきた。


「ど、どうもしない。大丈夫」


 急いで袋を閉じる。

 本当は、もう、どうかしちゃっているし、大丈夫でもありません。

 心臓が、バクバクいってます。

 

 結局みんな、お昼の用意はしていなかったので、売店に行ったのだが。


 


 私は、我が友の感覚が、さっぱりわからなくなっていた。


 生島がくれた紙袋に入っていた「いいもの」とは、ビニール袋入りの「血」(当然偽物)だったのだ。



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