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 その夜、伍代君からメールがあった。

 そこには、週明けから、色塗り作業にかかるとあった。


 更に、双葉からもメールが入った。

 明日の放課後、部室に来て欲しい、と。

 迷った挙句、了解のメールを送った。



 本来なら、今日も作業日だった。

 もうすぐできるね、なんて話しをしながら、作業をしていただろう日だ。

 そのことを考えると、落ち込むなと言われても落ち込んでしまう。

 でも、今、一番大変なのは四条君だ。

 また同じ絵を、描くわけだから。

 今朝、隣のクラスに顔を出して謝ると、「大丈夫だよ」と、言ってはくれたけど。

 だからって、それを鵜呑みにする、私ではない。

 大丈夫なはずは、ないのだ。

 責任を感じる……。







 放課後、部室に行くと、既に双葉は来ていた。

 気のせいか、空気が重い重い。

 昨日、私は伍代君に双葉の名前は、出さなかった。

 昨晩、双葉からメールが来た時、双葉に何をどの程度伝えるかを考えていたら、眠れなくなった。


 そもそもが。

 そもそもが、私なのだ。


 あぁ、あの日の余計なひと言が、ここまで尾を引いてしまったなんて。

 双葉には、あの日の尻拭いだけでなく、今回も迷惑をかけてしまったのだ。


 怒られるかな。

 怒鳴られるかな。

 あぁ、でも、それで気が済むのなら。

 いやいや、気が済むす済まないって話じゃないし。



「三矢さん」

「は、はい」

 情けないことに、返事をする声が裏返ってしまった。

「ごめん」

「いえいえ……はぁ?」


 なんで双葉が謝るの?


「来たんだろ、葛原さん」

「あ、うん」


 あぁ、そっちか。

 葛原さんで、正解か。


「ぼくを探しに来たんだと思う」

「彼女が、部室に、国府田君を?」


 昨日は、双葉は、来ない日だった。


「それは、見当違いだったね」

 でも、彼女はそんなことは知らないか。

「国府田君は、今日は来ない日だよって、言えば良かったのかなぁ」


 たられば話だが、そうなるのだろう。


「いや、違うんだ」

 国府田君が、ためらいがちにそう言った。

「昨日、サークルに行くって彼女に言ったのは、ぼくで」

「国府田君が? なんで?」

「帰る途中で、塾が休みなのを思い出して。……だから、行くつもりっていうか、行ったっていうか」

「あ、来たんだ。もしかして、私と伍代君が、紙芝居を探しているときじゃない? 部室に鍵をかけちゃったから、入れなかったでしょ」


 それはそれは、と双葉を見ると、双葉は「まぁ、うん」と、煮え切らないような返事をしてきた。


「こんなこと私が言うと偽善なんだけど、私、彼女が紙芝居を取るところも、池に入れるところも見てないんだよね。それでも、なんていうか、彼女がやったなんて思ってて」

「やったの、彼女だよ」

「……もしかして、本人に聞いたの?」

「聞いた」

「それは」


 見てないのに、彼女がやったと思ってしまう私と、直接ずばりと問い正す双葉のどっちがいいか。

 どっちも、どっちなんだろうな。

 でも、やったことを素直に双葉に言ったってことは、もしかして双葉に問われることを待っていた、とか?


「あのさ、彼女もサークルに入ってもらえば?」

 彼女は、「三匹のくまの」のゴルディロックスだ。

「一緒にやるうちに、何か見えてくるかもしれないし」


 ふいに、双葉が笑いだした。


「だから、三矢さんは、お子さまだっていうの」


 あほらしい、となおも双葉が笑う。


「三矢さんって、世の中の人みんなイイヒトだとか思ってる?」

「お、思ってないよ!」

「でも、そう聞こえる」

「そんなこと、言ってないよ」


 はぁ、と双葉は笑うのを止めると、「誰も彼もが物語みたいに、ハッピーエンドには、ならないんだよ」と、吐き出すように言った。


「三矢さんは、もしかして彼女が自分たちと一緒に行動するうちに、自分のしたことの重大さをわかってくれるとか、思っているのかもしれないけど」


 ず、図星だ。


「世の中にはね、自分がしたことが悪いって思わない人、多いの。明らかに、おまえおかしいだろって言っても、認めない奴がどれだけいることか」


 そんなこと、双葉に言われなくても、私だってわかっている。


「また、するかもしれない。あの子」

「えっ」


 それって、つまり。


「反省の色なしだよ。どうしたらいいの、こんなキャラクターが物語にいたらさ」


 三矢さん、教えてよ、と双葉が言う。

 そんなこと聞かれても、わからない。

 ……わからないよ。


「ってことで、ぼく、サークルを抜けようと思って」

「え、やめるってこと?」

「うん。ぼく、絵を描けるわけでも、物語を考えられるわけでもないし」

「で、でも、手話は」

「夢がいるから」


 そう言われたらそうだけど。

 でも、そんなこと知ったら、みんな反対するんじゃ。


「あ、もしかして、もう他の人には言ったんだよね」


 双葉にとっては私より、他の三人との結びつきが長く深い。

 きっと私には、つまりが事後承諾だ。

 三人が双葉をとめてないのなら、私にだってそんなことは、できない……そうだよね。


「途中で投げ出して悪いけど」


 双葉はそう言ったあと少し黙り、そして「夢をよろしく」と言った。

 

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