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 この物語は、確かに私が書いて、四条君が場面を起こしたものだ。

 しかし、私の中で、この物語の紙芝居化順位は、低かった。


 デザート的物語というか、仮に紙芝居を五作品作るとしたら、五番目といった。

 そんな気持ちの物語なのだ。


「あのさ、私も、二作目は、もう少し性別を限定しないもののほうがいいと思うな」

 伍代君を援護すべく、そう言った。

「え~。三矢さんまで。もう、夢も三矢さんも私と同じように、こーいう美少女系が好きだと思ったから推したのに」

ぷぅと岡村さんはふくれると、「……だったら、これ」と「三匹のくま」を指した。

「ゴルディロックスで我慢してあげるわ」

 岡村さんの言葉に、私と伍代君で苦笑いをした。


「双葉は、作品決定は俺らに任せるって言ってたから、ここで決めちゃおう」

 五代君はそう言うと、三矢さんはどう思う、と聞いてきた。

「うん。『三匹のくま』ね、いいと思う」

 じゃ、場面の確認ねと、四条君の案を広げる。

「そうだ、夢。今日は、夢んとこで、晩御飯を一緒に食べるから」

 よろしくね、と岡村さんが言う。

「あぁ、うん」

 伍代君がそう答えると、「じゃ、帰る時にママにメールしよう」と岡村さんが言った。


 晩御飯。


「ほんと、仲いいね」

 詮索するつもりじゃないんだけど、ついそう言葉が出てしまった。

 すると、岡村さんが「あ、そうか」と言って笑った。


「夢は、私のお兄ちゃんなの」


 伍代君は、むむむむと苦い表情だ。

「いいじゃない。三矢さんとは、もう、同じ釜飯の仲なんだから」


 「釜飯」に突っ込みを入れたいけど、それ以上に「お兄ちゃん」発言に突っ込みたい。


「お兄ちゃんって。それって、リアルな意味で?」

 二人を交互に眺めるけど、似ているかどうかは不明だ。

「うん。双子じゃないけどね」

 そう言うと岡村さんは、夢は四月で私は三月生まれなんだよ、と教えてくれた。

「親が離婚したから、名字は違うけど」


 はぁ。

 ……離婚。


 そのあとは、「三匹のくま」どころじゃなくなった。

 岡村さんが語る、伍代君のヒストリーを、聞くことになったからだ。

 岡村さんの話を、何度も何度も伍代君が止めようとしたけれど、それはことごとく失敗していた。


「夢は、体が弱くて」

 小さなころ伍代君は、入退院を繰り返す生活を送っていたようだ。

「そうなると、ママが夢につきっきりになるでしょ。でもって、私の面倒をおばあちゃまがみるようになって」

 おばあちゃまって、パパのお母さんよ、と岡村さんのフォローがはいる。

「で、なんとなーく、雲行きが怪しいと思ったら、離婚、なんてことになってさ」

 あほらしくて、やってられないわよね。


「私なんて一時期、夢のお見舞いにも行っちゃいけないって」

 それって、どうよ、と岡村さんが怒りだす。

「だからそれは、離婚云々じゃなくて、以知子が来ると、病院が騒々しくなるからだろ」

 五代君が言う。

 そんな口調は、確かに「お兄ちゃん」だ。


「あら、夢。妹の愛をなんと心得るか。でも、私の代わりに、双葉が甲斐甲斐しくお見舞いしてたから、よかったけどさ」


 そこで、双葉が図書館で話していたことが、私の中で繋がった。


「もしかして、国府田君って、伍代君に物語を聞かせてた?」


 伍代君が少し顔を赤くして、「うん」と言うと、「『双葉ぁ、もっとお話しして、新しいお話してぇ』だもんね。もう甘えまくり。双葉もいい迷惑よね」と、岡村さんが言った。

 そして、双葉の暗記力はあれで培われたのよ、と。


「双葉だって子どもだったわけだから、そうなると本を持ってくのも重いわけよ。絵本ってさ、しっかりとした紙でできているじゃない」


 そうだ。

 絵本は、小さな子が繰り返し読むことが前提としてできているから、ペラペラの紙ではできていない。


「双葉はさ、夢が一冊で満足できないって分かっているから。そうなると何冊も持って行かなきゃならないでしょ。でも、それ、無理だから。だから、ひたすら物語を暗記よ」

 しかし、暗記しようだなんて、よく考えたもんよ。

「……悪いと思っているよ」


 ふーん、と半眼で岡村さんは伍代君を見た後、「三矢さん、どう思う?」と私にふってきた。

 そして岡村さんは私の顔を見るなり、「え、やだ。うそ」と絶句してしまった。




 恥ずかしいことに、私は泣いてしまっていたのだ。


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