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「そう言われると、そうだよね」
「しかも、二股双葉でしょ。女の子大好きな」
「あぁ。……うん」
でも。
「私、二股双葉のうわさを聞いたとき、そんな人、嫌だなって思った。でも、自分には関係ない人だと思ったし、私の中でも現実にいる人って感じじゃなかった」
まるで芸能ゴシップのように、私はそれらの話を聞いていたから。
「でもさ、今は違うじゃない。つまり、なんて言うか」
……「友だちだから」、なんて言うと引くよね。
うん。
「『血の雨』の真相も知っちゃったし、サークルでの国府田君と、二股双葉が結びつかなくなっちゃったっていうのもあって。あの子たちが、自分たちで国府田君を誘うなら問題ないんだけど、そこに私が入ってっていうのが、なんかなぁ……と思ったんだよね」
でも、誘えって女の子たちをけしかけたのは、私なのだ。
そして、彼女たちはそれを私に頼んだ。
ええと、つまり。
頭がこんがらがる。
ん。
-- あぁ、そっかぁ。
そっかぁ。
「あのさ、すっごく酷いことを言ってもいい?」
「三矢さん、アナタいつも散々言いたいこと、言っているじゃない。なにを今更」
双葉が笑う。
うむむ。
私って、そんなに言いたい放題かな。
……まぁ、この際それは置いておいて。
「私ね、彼女たちに国府田君を誘えばって言ったのは、誘ったところで、断わられると思ったんだよね」
酷い。
断わられるだろうと思いつつ、エールを送ったのだ。
双葉と知り合ってまだほんの少しだけど、噂に聞いていた二股双葉とは違うって、思い始めていたから。
「それに、彼女たちのサークルへの興味が、国府田君によるものなのかなぁと思った時から、このことは全部、国府田君に投げようとしたんだ」
「それで、正解だと思うけど」
「……そう、かなぁ」
「あのさ、三矢さん。なんでも自分で解決できると思う方が、おかしいんじゃない? そもそも、あの子たちは、ぼくの件で来たんでしょ。なのに、なんで、三矢さんが前髪をパッツンするほど、気に病むのか」
国府田君が、私の前髪をぱらりといじる。
「三矢さんはさぁ、その前髪を見て、ぼくがなにも感じないとでも思ったわけ?」
「はぁ? え、国府田君が?」
なんで?
しかも、何を?
だってこれは、自分への戒めのためにしたことだ。
「三矢さんの前髪を見るたびにさぁ、ぼくは自分の不甲斐なさを感じるじゃないさ」
そう言うと双葉は、ごそごそとポケットから小さな紙袋を出し、「以前、以知子に買った店でいいのがあったなぁと思い出して」と、私の前髪をそこから出した小さなピン二つでとめた。
「え」
とめられた前髪を押さえる。
「そんな長さならさ、もういっそないほうがいいでしょ」
「で、でもっ。これじゃ、意味ないっていうか」
「意味? もうそんなの、どうでもいいじゃない。終わったことなんだから」
国府田君はそう言うと、この件はおしまいとばかりに、「『北風』をさ、もう一回通して最後まで読んでみてよ」と言ってきた。
でも。
「あのさ、このピンのお代は……」
いくらなんでも、ただで貰う訳にはいかない。
すると国府田君は怖い顔をして、「無料!」って言うと、私にでこピンをしてきた。




