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「世の中って、不公平だよね」
そう思わない、と聞かれる。
「世の中は、そりゃ、不公平だよ」
うん。
「だよね。ほんと、打ちのめされるよ」
世の中は不公平だ。それは、そうだ。
でも、そのことに、この双葉が打ちのめされるって、どういうこと?
「どちらかというとさ、国府田君は、他の人を打ちのめすほうなんじゃないの?」
「うん。そうなるんだろうね」
双葉はそう言うと、拳を握った。
「でもさ、三矢さん。殴った奴と、殴られた奴。そりゃ、殴られた奴が痛いのはもちろんだけど、殴った奴だって痛いとは、思わない?」
まじまじと双葉の拳を眺める。
「……素手、なら」
「素手っ!」
素手、か。素手ときたか! 素手発言が受けたようで、双葉は笑いだした。
「あぁ。ぼくたちが子どもの頃に、三矢さんがお話のお姉さんだったら、よかったのになぁ」
「ぼくたちって、伍代君や岡村さんのこと?」
三人は幼なじみだ。
「うん。そう」
ふーん。
「……国府田君は無理だけど、国府田君に子どもができたら、お話ししに行ってもいいよ」
ん?
ちょっと、今の発言はNGか?
「な、なぁんてねっ」
あはははは、と笑って誤魔化す。
「え、まじで。予約しとこうかな」
国府田君も、その気になったフリをしてきた。ノリがいい。
「ところで、その前髪さぁ」
ぎくりとする。
「昨日のことで?」
双葉の語調から、疑問系で聞きつつも、そうじゃないってわかってる。
「国府田君。……ごめん」
言い訳なんて、できない。
だから、国府田君に言える言葉は、それしかない。
「三矢さんって、ほんと損な人だよね。女の子なんだからさ、泣いちゃうとか、甘えちゃうとかして、うやむやにしちゃえばいいのに」
「えっ。そ、そんなこと」
ちょいと国府田君、巷で女子はそんなことをしているのかい、と小声で聞くと、よくあるよ、と返ってきた。
「こ、国府田君」
両手を目に当てる。
「ご、ごめんなさい」
ついでに、えぐえぐとか言ってみる。
「お、いいねぇ」
双葉の声がする。
「よかないだろっ」
手を離し、じっと双葉を見る。
双葉もじっと、こっちを見ていた。
「……ほんと、ごめんしか言えない。あんな、国府田君を、身代わりにするような」
本当は「売るような」と言いたいところだが、それはあんまりな表現だ。
「そうか。三矢さんは、すごーく気にしてくれたんだ」
「そりゃ」
そりゃ、そうだ。
「ふーん。でもさ、例えばさ。ぼくが喜ぶとか、思わなかったの?」
「え、喜ぶ?」
「あんなかわいい子たちを、紹介してもらって」
「あ……」
ほんとだ。