表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/67

30

 朝、私の顔を見るなり、両親は口をあんぐりと開けた。

 声も出ないようだった。


「そ、それは、今の流行はやりなのかい?」

 先に立ち直ったと思われるお父さんからそう聞かれたので、しらっとした顔で「一部で」と答えた。


 内心、そこまで驚かれるとは思っていなかったので、念のために自分の写真を撮り生島に送ると、「生で見せろ」とすぐに返ってきた。

 さらに、「最近料理もどきに凝っているから、いいのができたらあげるね」とも。

 「いいの」かぁ、とあれこれ想像する。

 未だかつて、生島が言う「いいの」が、私にとっての「いいの」だった例は、一度もなかった。




 通学路でも、会う子会う子に、微妙な顔をされた。

 そこまでかなぁと思いながら歩いていると、「三矢さん、おはよう」と伍代君の声がした。

 くるりと振り向くと、伍代君だけでなく、そこには四条君と国府田君までいた。

「おはよう」

 三人の顔を見て挨拶をする。

 均等に見たい気持ちはあったけど、うしろめたい気持ちのせいか、国府田君を見る秒数は三秒ほど少なかったかもしれない。


 私の顔を見た三人は、両親と同じようにびっくりした顔になった。


 伍代君に至っては、顎が外れるんじゃないかって、こっちが心配するほどだ。

 「十センチくらい切ったの?」と四条君に聞かれたので、「そこまでいかない、七センチかな」と私は、ほとんどない前髪を摘んだ。



 昨夜、お風呂に入る前に、突発的に前髪を切った。

 最初は、二センチくらいだったと思う。

 でもそれじゃ、全然足りない気がして、どんどんと切っているうちにこうなった。


 昨日、国府田君をエサにして逃げてしまったことに、私は罪悪感を感じていた。

 たとえそれが、国府田君の指示だったにせよ、そういった状況を招いたのは自分だからだ。

 

 自分を戒めたかった。

 もう、こんなことはしないように。

 あんな思いを、人にまでさせてしまったことが、嫌だった。



「三矢さんのその前髪って、そこはかとなく昭和の香りが漂っているよね」

 路地裏で石蹴りしていそうな。

「へぇ、国府田君。男の子でも、石蹴りしたんだ」

 私の周りでは、石蹴りはもっぱら女の子しかしていなかった。

「以知子に付き合って」

 もう膝が、がくがくなるほどやったよ、とうんざりした顔で国府田君が言う。

「あぁ、岡村さんと幼なじみなの?」

 それは知らなかったなぁと言うと、「うん、あと、ここにいる夢も」と国府田君は伍代君をつついた。


「えっと、じゃ、四条君は?」

「ぼくは、伍代と入院仲間」

「え? 入院?」


 ぱっと伍代君を見ると、居心地が悪そうな顔をしていた。


「ぼくが骨折して入院したときに、伍代もいて」

 あぁ、なるほど。

「病院の小児科病棟で、会ったんだよ」

「四条君が、小児科……」

「三矢さん、四条だって人の子なんだから、そりゃ小児の時もあったでしょ」

「はは、ごめん」

「……でも、充分でかかったぞ、四条は」

 ぼそりと伍代君が言う。

「うん、あの頃はまだ、でかいだけ、だったもんねぇ」

 四条君が、伍代君に視線を向けた。

「今だって、たいして変わんないだろ」

 伍代君が渋面を作ると、反対に四条君は笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
web拍手 by FC2

cont_access.php?citi_cont_id=270017545&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ