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ミチカを相手に話すことで、物語はより上手い具合に、纏まっていった。
つくづく物語って、生き物だなぁと思う。
「あのね、こわいことあったんだよ。そよちゃん」
二人でおやつを食べだすと、ようやくミチカが話し出した。
「今日ね、集団下校で、五、六年生と一緒に帰ったんだけど」
どうやらそこで、五年生と六年生が喧嘩を始めたらしい。
「バカー! とか、すごく大きな声で言って、先生やお母さんたちが止めても、やめないんだよ」
側にいたミチカはそのとばっちりを受けて、五年の男の子に突き飛ばされたそうだ。
見ると、ミチカの膝には絆創膏があった。
かわいそうに。
上級生にもなると、体格のいい子もいるだろう。
そんな子たちの喧嘩は、ぴよぴよの一年生のミチカにとって、さぞ迫力あるものだったに違いない。
それはともかく、なにも一年生を押さなくてもいいだろうに。
「喧嘩なら、みんなで集まったときもあるけどねぇ」
いとこたちが集まると、楽しいことは勿論多いが、喧嘩だって負けず劣らずある。
でも、こんな風に関係のない子をまきこむことは、ないように思えた。
「大変だったね」
私が言うと、ミチカはそのことを思い出したのか、目がうるみ始めた。
「まぁ、ミーさん、飲みなせぇ」
お酒を注ぐようにミチカのコップにジュースを注ぐと、ミチカはにこりと笑った。
カサリと紙の音だけが響く。
ごくんとつばを飲み込む音が、やけに大きく感じられた。
水曜の放課後。
紙芝居サークル。
伍代君に四条君に双葉といった順番で、私の原稿が回し読みされていた。
原稿は、「三匹のくま(仮)」だ。
ミチカが帰った後、もう少し練り直しプリントアウトしたものだった。
その間、私は三人の様子を意識しつつも、四条君が作った紙芝居の場面案を見ていた。
四条君は一枚の紙を分割して、簡単な絵とその絵に付く一言程度の場面説明を書いていた。
いうなれば、四コマ漫画の十二コマバージョンだ。
自分が書いたものが、紙芝居になるってことは勿論わかってはいた。
けれど、こうして四条君が場面を絵に起こしてくれたことで、それが具体的に見え現実味を帯びてきた。
そして、震えた。
これって、もしかして、すごいことじゃない?
そもそも、自分の物語に絵がついたのだって、初めてのことだ。
それが全編を通し、「絵」になっちゃうんだから。
……こりゃ、大変なことだ。
「面白かった」
伍代君の満足そうな声で、顔を上げる。
「ほんと?」
「うん。女の子が『くま用心』として、くまの着ぐるみを着るとこなんか、絵にしたら面白そうって思った」
四条はどう、と伍代君がふると「うん。絵にしやすいと思うよ。場面起こしも、今しちゃうね」と、スケッチブックを取り出し、いきなり作業を始めた。
「ってことで、これからの予定だけど」
双葉がガサガサと、鞄から何かを取り出そうとしている。
「夢が訊いてきた病院のスケジュールと、ぼくが訊いてきた学校のスケジュールと、あとうちの学校の定期試験を擦り合わせて、とりあえずの予定を組んでみた」
まだ、相手さんには伝えてないと言いながらも、既にパソコンで作成し打ち出された予定表が、机の上に置かれた。