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「あのさ、ご苦労様ついでに聞いてくれる? 物語ができそうなんだ」
すると途端に三人の顔つきが真面目なものになり、どれどれと興味を示してくれた。
あ、これ。
この感覚。
……病みつきになるかも。
「うん、『三匹のくま』を、もとにした話なんだけど」と、今、頭の中にあるだけの物語をざっと話す。
「そういえば、俺もあの話、気になっていたなぁ」
伍代君が言う。
「スープはともかく、イスはどうしたって」
絵本で読んだとき、イスがかなりえぐく壊れていてさ。
「……あぁ、そっか。三矢さんの物語を、子どもたちがあんなに好きなのって」
双葉だ。
「意識の表面に出てくるこないは別として、そういったちょっとしたひっかかりに、落とし前をつけてくれるからか」
「……双葉、おまえ。落とし前って」
「物語に使う言葉じゃないね」
「私も、それは言われたことないわ」
私たちがあれこれ言うと、双葉がむっとした。
「褒めたのに、これだから」
「褒めてくれたんだ」
「これでもね」
わかっていたけど。
「そりゃ、どうも」
「どういたしまして」
この三人といるのって、案外楽しい。
私が持ってきた物語で、紙芝居に向きそうなものをみなで検討し、結果採用されたものの何作かを四条君が持ち帰った。
四条君は、物語から「場面」にあたる一枚一枚を起こして、紙芝居の案を作ってくれるという。
その案を再びみなで検討し、どの作品を一作目にするか、決めることになった。
私の宿題は、「三匹のくま」を仕上げることだった。
次回の集まりは、水曜になった。
「なんだかよくわからないけど、さよが元気そうでよかったわ」
生島にメールをしたら、そんな返事がきた。
「今一つ実体がつかめてないけど、でも、自分の物語が必要とされるのは、単純に嬉しい」
私は生島にそう送った。
うちの学年は六クラスあって、サークルのみんなは、きれいにクラスが分かれていた。
毎年クラス替えがあるので、多くの人と同じクラスになれるといった反面、同じクラスになってもなかなか顔と名前が一致しないまま、「はい、お別れ」ってこともある。
「三矢さん」
名前を呼ばれ振り向く。
見たことがあるような、ないような、きれいな女の子が二人、双子のように立っていた。
もちろん、双子じゃないだろうけど。
「あの、ちょっと聞きたいんだけど」
「なんでしょう」
でもその顔つきは、人になにかを尋ねるようなものではなかった。
私の脳内で、黄色い信号がピカピカと光りだした。
「三矢さん、双葉君がやっているサークルに入ったんでしょ」
うっ、わぁ。う、嘘でしょ。
これ、双葉絡み?
つまり、テレビや漫画でよく見る、あれでしょ。
人気男子に近づくイマイチ女子のもとに、集団で女子がやってきて。
学校の裏とか体育館の裏とかお寺の裏とか、ともかくどこかの裏に連れていかれて、剃刀で脅されたり、蹴飛ばされたりするやつでしょ。
思わずそばにあった、柱を手で掴む。
いやまさか、まさかこのきれいな人たちが、力ずくで私を引きずっていくなんてことは、ないとは思いますよ。
思いますけどね、人はみかけによらないってことは、四条君からもわかることで。
「ここじゃなんだから」と、きれいな女の子A。
「い、いえ。ここで」と、柱を掴む手に力を入れる、イマイチ女子C。
きれいな子たちは顔を見合わせると、一歩、また一歩とイマイチ女子Cに近づいてきた。
な、な、な、ちょっと。
こ・な・い・で~!
「私たちも、入りたいんだけど」
これ以上とないほど近づいてくると、女の子Bがそう言った。