表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/67

21

 大ぐまと小ぐま。


「どっちに興味があるわけ?」

 思考が遮られる。

 双葉だ。

 双葉を見る。

 こいつは、中くらいのくま。


「あ、そっか。『三匹のくま』だな」

「……それ、トルストイの?」

「あ、トルストイが原作ってわけじゃないよ、あれ。日本では、トルストイの翻案が有名だかからね」



 「三匹のくま」は、ロシアの民話だ。

 ある日森に迷った女の子「ゴルディロックス」が、三匹のくまの留守中に彼らの家に入り、大、中、小のスープを飲んだり、椅子に座って壊したり、挙句の果てにはベットで寝ているところを見つかり、すたこらさっさと逃げる物語だ。



 伍代君に四条君、そして双葉とこうして部室にいると、私はゴルディロックスになった気分になった。


 あの物語を読んだ時。

 そう、あのあと三匹のくまは、どうしただろうってことと、女の子だってあのまま逃げちゃいかんよな、ってことだった。

 私なら、壊したものがどうなったか気になるし、できるならそれを修理したいと思うから。


 あ、これ、使えそう。


 でも、そもそもあんなことしちゃうゴルディロックスは、少し甘えんぼうでわがままな子かもしれない。

 そんな子が、スープを作ったり、壊した椅子を直したり、できるだろうか。


 そうだ。

 出来なかった子ができるようになったとき、自分のしたことが、とても相手の迷惑になったと知るのだ。


 知ったらどうするか。

 謝りに行くだろう。

 椅子を直したり、スープを持って行ったりするだろう。

 でも相手はくまだ。

 怖いに決まっている。

 だったら、くまがいない時に、それらのことをするのはどうだろう。

 でもって、念のために――。


「――さん。三矢さん」

 大丈夫? と双葉に聞かれたので、「妄想していた」と答えた。


 妄想っていうより、想像? それとも創造?


「え、夢と四条で?」

 双葉はそんな怪しいことを言うと、顔をしかめた。

 ふーん。

「うん。そうだよ。あの二人を見てちょっと妄想をしてたの。で、二人じゃパンチがないんで、そこに国府田君も含めてね」と中くらいのくまに言うと、すっごく嫌な顔をされた。


 誓ってもいい。

 双葉は、私がそっち系の妄想をしているって、思っているに違いない。

 なんつーこと考えるんだろうね、この男は。

 うんにゃ。

 もしや、して欲しいのだろうか?


「あの、つかぬことをお伺いしますが。国府田君って、女の子が好きな人だよね」

 双葉にそう訊くと、「今までの歴史では、そうでした」と返ってきた。


 ふむ。

 そうか、そうか。

 しかし、その歴史とやらは、さぞ激動であったことでしょうよ。


「ご苦労様です」と私が言うと、「とんでもございません」と双葉が言った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
web拍手 by FC2

cont_access.php?citi_cont_id=270017545&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ