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「え、ここ?」

「うん。今年潰れた部があって、そこの部室が空いたから、使っていいって。運がよかったよ」

「……誰が」

「え?」

「誰が、使っていいって?」

「えっと、国語の山中が」



 週明けの月曜。

 紙芝居サークルとして活動する部屋を、学校から融通してもらったと話す伍代君のあとをついていくと、そこは文芸部部室だった。



「文芸部、と。よし」

 伍代君は、預かった鍵と扉に掲げられたプレートの名を確認したあと、部室の扉をあけようと鍵を差した。


「あのさ、私が以前、どこの部にいたか知ってる?」

「え? 三矢さん、クラブに入っていたんだ」

 そう言いながら、伍代君が鍵を回した。

「うん。文芸部」

 伍代君の動きが止まる。


「あ、いじめっ子がいる」

 スタスタと廊下を歩く音とともに、双葉の声がした。

「固まっている」

 四条君がちょんとつつくと、「あ、あぁ、あ。み、三矢さん」と、伍代君は勢いよく私を見ると、「ごめん」と体を45度まで曲げて謝ってきた。


「なんで、夢が謝るの。部が潰れたのは、ひとえに三矢さんの営業努力が、足りなかったからでしょ」

 双葉がすばりと言う。

 その通りなだけに、ムカつく。

「別に、伍代君に謝ってもらいたいと思ってないから。そんなつもりで言ったんじゃないし」

「ただ言ってみただけだよね」

 四条君のナイスフォローに、大きく頷く。

「国府田君って、短絡的?」

 ここぞとばかりに言い返すと、カチャリと鍵の開く音とともに、「ほら、部室を開けたよ」と四条君の声がした。



 紙芝居は、一作だけでなく何作か作ろうというところまでは、ファストフードで決めていた。

 私はあれからすぐに家に戻ると、今まで書いたものの題名と簡単なあらすじを、みんなに送った。

 メルアドは、あの場で交換済み。

 その意見をふまえて、いくつか原稿を持ってきたけど、その中で一番尊重したのが、絵を担当する四条君の意見だった。

 あの場で、私の話を聞いた四条君が言った言葉が、「絵が浮かぶよ」だった。

 だから、描き手として、絵が浮かぶ物語と、そうでないのがあるかもしれないと思ったからだ。

 絵がないと紙芝居にならないし、絵が描けるのは四条君だけみたいなので、そこのところは大事だと思った。


 入り口ですったもんだあったものの、懐かしくもなじみのある席に座ると、まるで文芸部が復活したような気持ちになる。




 私が原稿を机の上に載せると、双葉や伍代君が手に取り、それらを読みだした。

 二人は「書かない人」だ。

「書かない人」に、目の前で原稿を読んでもらうのは、あまりない経験だ。

 思いのほか、恥ずかしいと感じた自分に驚く。



 私の横に座った四条君は、大きな布の袋から「これ、近くの図書館で借りたんだけど」と、紙芝居を出した。


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