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ASP

「これから私が話すことは、ここにいるあなた方に一つの共通点がある事、それを前提としてお話します」

 アキラは中学の頃からカズヒコを知っている。しかし今までにこれほど真面目な顔をした所は見たことはなかった。続けて口を開くカズヒコ。

「私はある裏組織を追っています。その組織の名はASP、『アナザセンスプロジェクト』」

「アナザセンス……プロジェクト?」

 サトミが問い返す。

「はい。アナザセンス、それはつまり『その他の感覚』第六感の事を言います。世間一般でよく知られているのは予感、霊感など。……そしてさらに常識では考えられないような人知を超えたものがあると私は見ています」

「予感に霊感? そんなものが本当にあるとでも? ふっ…バカバカしい」

 サトミはその顔を隠すように紅茶に口をつけた。

「サトミさん……演技が下手ですね」

 カズヒコのその言葉にムッとするサトミの様子がうかがえる。

「重要なのはここからです。ASPとはつまり、その能力、感覚を持つ者を付け狙う非合法な裏組織です。最近ではASの研究のため、常人に対し後天的にその能力を持たせる実験をしているという噂も耳にします。特に彼らには十分注意してください」

「その言い方だと、私たちがまるで能力を持っているみたいじゃない」

「だから最初に言ったじゃないですか……一つの共通点、それを前提に話すと」

 サトミは最後までシラを切るつもりでいたが、カズヒコがここまで知っているとなると嘘を吐き通すのに無理があった。ましてや話はいっこうに進まない。マキとアキラは二人の会話の様子を黙って見ていた。

「いいわ。その前提をもとに話を進めることにして……私たちにどうしろと?」

「ASPの捜査協力をお願いします」

 サトミは少し考えるようにして口を開く。

「いいでしょう、協力します。――ただし条件として私たちの協力もしてもらいます」

「ちょっとサトミ! ……本気?」

 マキが問う。

サトミには一つの悩みがあった。それはここ数日間の予知夢の増加と、それに伴なう事故事件の多発。サトミとマキの二人だけではとてもさばききれなくなっていた。このタイミングでアキラやカズヒコが現れ、協力してもらえるのであれば心強い。

「もちろん協力します。それに……全く関係がない事だとは思えませんしね」

 カズヒコはアキラに鞄を取るように言うと、中から小汚い名刺入れを取り出した。

「これ、私の探偵事務所です」

 マキとサトミに名刺を渡す。

「へぇ……事務所も構えてるんだ」

「なにかあったら、ここに来てください。この場所を私達の拠点とします――」


 長らく話すこと数時間。その場は解散する事になった。その別れ際、カズヒコは言った。

「最後にマキさん……八年前の事件の事、思い出しておいて下さい」

 その瞬間、マキの顔色が悪くなったのをアキラもサトミも見逃さなかった。


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