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第31話 島から放たれる砲撃

沖縄の目前まで迫ってきている台風。

沖縄に上陸するまでに残された時間は、あとたったの20分ほどしかない。


だが、鳩ノ島は既に沖縄に着いていた。

あとは、台風に向かって突き進むだけ。

鳩は満を持して配信を付けた。




―――チャット欄―――――――――――――――


『マジかよ!?』


『台風って止められるもんなのか?』


『いくらハトるんでも流石にそれは……』


『見ろよ……この能天気な顔……』


『いや、能天気かは分からないだろ』


『止めるとして、どうやって止めるんだ?』


『ハトるんと田中さんも台風に巻き込まれるぞ』


『怖いよ……』


『命が何個あっても足りねぇぞ?』


―――――――――――――――――――――――




今回の配信タイトルは『行ってきます』。

黒い背景に白色の文字で『行ってきます』とひと言だけ書かれた鳩にしては珍しいサムネ。


いつもとは180度違う配信に、約4万人の視聴者達は皆で不安の声を上げた。



「うわぁぁぁぁ……。ハトるんちゃん……。風が凄いってぇぇぇぇ……本当に……大丈夫なの?」


「大丈夫だよ! 私の目標は台風1号、2号、3号。だからさっそく台風殲滅作戦を実行するよ」



『コォォォォォォォォ』



鳩ノ島は、強風を押し退けながら台風に向かってぐいぐいと突き進んで行く。


鳩ノ島の外、地上から見えるのは、1匹の鳩が台風に向かって跳んで行く姿だけ。


避難所にいる人のだれもが現在進行系で鳩ノ島が台風に向かって飛んでいることを知らなかった。




―――チャット欄―――――――――――――――


『風の音が凄いな』


『ハトるん吹き飛ばされねぇか?』


『ハトるん以外の鳩は家の中に避難してるな』


『このまま行けばひとたまりもないぞ……』


『どうなるんだ……』


『ハトるん……命賭けてねぇか?』


『本人はなんかノリノリだけど……』


『田中さんがビクビクしてるよ……』


『そりゃあそうだろ』


―――――――――――――――――――――――




鳩ノ島が突き進んで行った結果、鳩と田中さんはとうとう台風の前に到達した。


台風は目に見えないが、雲、景色、太陽光の屈折、風、湿度ですぐ目の前に台風があると鳩はすぐに理解した。



「良し! ここらへんで良いね!」


「ハトるんちゃん!? 台風殲滅作戦って今から何をするの? 本当に大丈夫なんだよね!?」


「大丈夫だよ! でも、田中さんは島から振り落とされないようにしっかり壁に捕まっててね!」


「へ!?」


「砲台……よ〜い!」


『ゴゴゴゴゴゴゴ……ガシャンッ……ガゴンッ』


「ハトるんちゃん!? なんか変な音がするんだけど……それに、地面が揺れてるよ……(泣)」



島中からする不安な音と共に、鳩ノ島の中央にある鳩の家が突然変形していった。


家の形は以前と比べると見違えるほどにまで変わり、1つの巨大な砲台のような形となった。


あまりにSFな砲撃。


いくらダンジョンがある世界とはいえ、田中さんも視聴者も混乱した。




―――チャット欄―――――――――――――――


『は?』


『やばいって』


『ゴツすぎるだろ』


『まさか……超電磁砲レールガンか?』


『超電磁砲は洒落にならないぞ!?』


『前の家が見る影もなくなってる』


『これで台風を殲滅するのかよ』


『見た感じ100メートルは超えてるよな?』


『100メートルを超える超電磁砲はやばい……』


『アメリカの空母とか戦艦どころか、余波だけで主要軍事基地を壊滅できそうだぞ?』


―――――――――――――――――――――――




田中さんは腰を抜かして、膝を付いた。


早起きして、ワックスで整えていたはずの髪の毛は全て逆立ち、髪がボサボサになっている。



「ハトるんちゃん……やばいってぇぇぇぇ」

「チャージ満タン出力超過」


『ゴォォォォォォォォォォ』


「た、助けて……ママぁぁぁぁ」


神滅電磁砲トールガン発射!」



『ビビビビビビビビ…………ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォン』



放たれた砲撃は、爆音と共に台風を貫き、台風の目まで到達した後、台風もろとも霧散した。


圧倒的な電磁波による台風の霧散。


雲も、風も、雨も、台風の何もかも圧倒的な電磁波により完全に消滅した。



「完璧!」




―――チャット欄―――――――――――――――


『フィクション!?』


『AI!?』


『規格外すぎるだろ』


『流石にネタ動画……だよね?』


『やばいってぇぇぇぇ』


『今来たけど何が起こってるんだ!?』


『これって……冗談抜きで戦後に決まった日本国憲法に完全違反してるだろぉぉぉぉ』


『いや、鳩だから違反してないぞ』


『AI生成画像か、ネタ画像か、ガチのやつなのか……一体ハトるんに何が起こってるんだ?』


『超電磁砲で台風って無くせるのか?』


『いや、どんな質量だよ……』


―――――――――――――――――――――――




視聴者が盛り上がり、様々な声が上がる中で突然配信は終わった。


どうやら配信機材が、鳩ノ島が放った砲撃に耐えられなかったようだ。


しかし視聴者はそれを知らない。


何が起こったかも分からない。


だから、4万人を超える視聴者は、すかさずニュースをチェックし、スレを立て、開くのだった。

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