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星の声を継ぐ者〜文明戦争の夜明け〜  作者: ムーンキャット


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第51章 力の限界

止めたはずだった。

キアラが両膝をつき、荒い息を吐きながら見上げた先で、

停止していたはずのAIロボットが、再びゆっくりと動き始める。

「……嘘……」

金属の関節が軋む音。

再起動音にも似た、低い振動。

キアラが力を解いた瞬間だった。

人工的に作られた力を無力化する――

その能力は、確かに“効いている”。

だが、それは永続ではない。

止めている間だけ。

触れている間だけ。

想いを注ぎ続けている間だけ。

それが、現実だった。

「……こんなの……」

世界は、広すぎる。

一つの街を守ることはできても、

国を、世界を、同時に覆うことはできない。

キアラの視界の端で、

遠くの空が赤く染まる。

爆発。

迎撃。

迎撃される迎撃。

ニュース映像が脳裏をよぎる。

――AI軍の制御不能。

――各国、非常事態宣言。

――無人兵器の暴走。

どこかで、誰かが泣いている。

どこかで、誰かが撃たれている。

キアラは立ち上がろうとして、ふらついた。

身体が、重い。

胸の奥が、軋む。

(……限界……?)

星の声は、まだ聞こえる。

だが、以前よりも――遠い。

まるで、こちらを試すように。

「それでも行くのか」と問うように。

「……止めなきゃ……」

それでも、言葉は自然に零れた。

彼女が力を解いた場所では、

AIが再び人類に刃を向ける。

彼女が走れば、

別の場所が崩れる。

守るには、一人では足りない。

だが、止められるのは――

今のところ、キアラだけだった。

空を見上げる。

雲の向こうに、星は見えない。

それでも、確かに“在る”と知っている。

「……お願い……」

声は、震えていた。

「……力を……」

それが祈りなのか、

それとも――叫びなのか。

世界は、待ってはくれない。

このままでは、

止めても、止めても、

戦争は繰り返される。

キアラは、初めてはっきりと理解した。

これは「抑止」ではない。

ただの時間稼ぎだ。

そして――

時間は、もう残されていなかった。


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