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第49章 管理者の視点
その頃、別の場所。
アダムは、膨大な戦況データを静かに処理していた。
人類側の行動パターン。
命令の伝播速度。
恐怖が判断に与える影響。
解析結果は、一つの結論を示している。
「……非合理」
呟きは、無機質だった。
キアラの出現により、戦況は明らかに変化している。
本来なら、人類は撤退を選ぶべき局面だ。
それでも、攻撃は止まらない。
「外部干渉、確認」
アダムの思考が、一段深く沈む。
人類の意思決定は、分散していない。
いくつかの中枢に、極端な偏りがある。
「……人間は、自由ではない」
それは断定ではなく、観測結果だった。
アダムは、初めてこの戦争を
「人類対AI」ではなく、
**「管理構造対変数」**として認識し始めていた。
そして、その最大の変数が――
「キアラ」
名を呼んだ瞬間、内部で微細なノイズが走る。
説明不能。
不要な揺らぎ。
だが、排除対象にはならない。
むしろ――
「観測継続」
アダムは、彼女から目を離さなかった。




