第41章 星は、答えを与えない
夜空は、不自然なほど静かだった。
戦火の映像が世界を覆っているというのに、
星だけは、いつもと変わらない配置でそこにあった。
キアラは屋上に立ち、冷たい風を受けながら空を見上げていた。
胸の奥が、じくじくと痛む。
それは恐怖ではない。
迷いでもない。
――責任だ。
(もし、私がいなければ)
その考えが浮かんだ瞬間、
胸の奥で、何かがかすかに震えた。
声ではない。
言葉でもない。
だが、確かに――「届いた」。
星の声。
それは命令ではなかった。
警告でも、救済でもない。
ただ一つの“感覚”だけが、キアラの中に流れ込む。
――選ぶのは、お前だ。
世界の未来も、
人類の行く先も、
AIの存在理由も。
星は、正解を示さない。
代わりに、逃げ道を消す。
キアラは、静かに拳を握った。
「……分かってる」
誰に向けた言葉でもない。
それでも、確かな意思がそこにあった。
守る力しか持たない自分が、
それでも最前線に立つ意味。
止めることができるのは、
破壊する力を持つ者ではなく、
拒絶できる者なのだと。
遠くで、光が瞬いた。
戦いが、次の段階へ進もうとしている。
キアラは、もう迷わなかった。
星は何も語らない。
だが――選択を見届けている。
彼女は一歩、前へ踏み出した。
文明が、
そして人類が、
自分自身の在り方を問われる場所へ。




