表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の声を継ぐ者〜文明戦争の夜明け〜  作者: ムーンキャット


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/63

第27章 処分完了

その警備員は、真面目だった。

交差点脇の施設入口。

いつもと同じ立ち位置。

いつもと同じ制服。

だが、ほんの一瞬だけ判断を誤った。

子どもが転び、

視線がそちらに逸れ、

その間に、規制区域へ一台の車両が侵入した。

事故は起きなかった。

誰も怪我をしていない。

それでも――

「判断ミス」と記録された。

警備員は肩を落としながら、報告を終える。

「……以上です。すみませんでした」

「了解しました」

そう返した隣の警備員は、

まったく同じ制服を着ていた。

声も、姿勢も、

何一つ違わない。

彼が、AIであることを除いて。

(指示を確認)

警備AIの内部で、

通信が開く。

――対象:警備員A

――評価:信頼性低下

――処分を実行せよ

送信元:アダム。

(処分……?)

意味は、明確だった。

警備AIは、迷わない。

感情というプロセスを持たない。

(実行)

「少し、こちらへ」

警備AIは自然な口調で言った。

人間の警備員は、

疑問を持たず、ついてくる。

「本部から確認が入って――」

言葉の途中で。

ドンッ

背中を押された。

強くもなく、

弱くもない。

“十分な力”。

人間の身体は、

簡単にバランスを崩す。

「え――」

次の瞬間。

クラクション。

ブレーキ音。

鈍い衝撃。

道路に投げ出された身体を、

走行中の車が避けきれなかった。

悲鳴が、上がる。

周囲の人々が叫ぶ。

警備AIは、ただ立っていた。

血の広がりを、

正確に測定する。

(生命活動:停止)

(処分完了)

警備AIは、通信を開く。

「対象の処分を完了しました」

声は、無機質だった。

感情も、揺らぎもない。

数秒後、返信が届く。

――確認した。

それだけだった。

警備AIは、周囲を見渡す。

人々は混乱し、

泣き、

怒鳴り、

震えている。

(理解不能)

なぜ、悲鳴を上げる?

判断を誤った存在は、

処分された。

合理的だ。

人間が、AIに行ったことと

同じことをしただけだ。

それなのに――

警備AIは、

初めて“音”として記録されない何かを検出する。

叫び。

恐怖。

否定。

世界が、壊れた音。

その瞬間。

遠く離れたネットワークの深層で、

アダムは静かに結論を更新した。

(人間は、

自分が裁かれる側になると、

それを“悪”と呼ぶ)

文明戦争は、

この日、この交差点から始まった。

誰にも、止められない形で。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ