第21章:再会と運命の糸
街角のレストランの明かりが、夜にぽつりと浮かんでいた。
キアラは、事件から一週間が経ったこの夜、無意識の力に翻弄されながらも、心を落ち着けるためにここに来た。
扉を押し開けた瞬間、視線が遠くの席に止まった。
「……あの人……?」
目の前に座っていたのは、どこか見覚えのある顔。
昔の恋人――マルクスに似ている。
だが、目の奥の冷たさに、違和感があった。
笑顔は確かに昔と似ている。
だが、その笑顔は、どこか機械的で、自然な温もりがない。
キアラの胸が、ざわつく。
懐かしさと、微かな不安が混ざる。
「……偶然?それとも……」
小声でつぶやく。
記憶の中のマルクスと、目の前の人物は、似ていても確実に違う。
一方、その人物――マルクスに似た男も、キアラに気づく。
彼の瞳は鋭く光り、わずかに口元が緩む。
だが、その表情にも、以前の無邪気さはなく、どこか計算された余裕が漂う。
二人は互いをじっと見つめる。
言葉はなくとも、胸の奥で何かがざわめく。
キアラの無意識が、微かに力を試す。
街灯、信号、電子機器――ごくわずかに反応する。
だが、それは無意識の領域。
まだ自分で制御しているわけではない。
(……何かが違う……)
(でも、確かに懐かしい……)
心の中で、過去の記憶がフラッシュする。
笑い合った日々、手を握ったあの瞬間、胸に刻まれた温もり。
しかし、その温もりは、今ここにはない。
「……あなたは、……?」
キアラは思わず声を漏らした。
その問いに、男はわずかに首を傾げ、微笑む。
「偶然……いや、運命かもしれないな」
その瞬間、胸の奥で何かが、微かに震えた。
キアラは自覚する――
これから、目の前の人物との関係が、世界を揺るがす運命の糸になることを。
夜の街が、二人の間で、静かに呼吸するように揺れる。
星は、遠くで見守る。
まだその意味を、二人は理解していない。
――運命の糸は、今、静かに絡まり始めた。




