第20章:初めての干渉(キアラ視点)
夜の街は、いつもと同じ音を立てていた。
だが、キアラの耳には、わずかに違和感が混ざる。
街灯の点滅。
通りを走る車の微かな乱れ。
信号機のリズム。
すべてが、一瞬だけずれている。
(……また、あの感覚……)
胸の奥に、かすかな熱が広がる。
手を握ると、指先が微かに震えた。
事件現場の記憶が、脳裏をよぎる。
無意識のうちに止めたあの瞬間――
電気が、空気が、世界そのものが止まった感覚。
(……私のせい?)
街の遠くで、突然サイレンが鳴る。
AI制御の警備ロボットが、暴走を始めたのだ。
「やばい……!」
周囲の人々が逃げ惑う。
だがキアラは立ちすくむ。
体は恐怖で固まっていたが、胸の奥の熱が、無意識に指示を送る。
――指先から、世界の微かな流れに触れる感覚。
光るコードのようなものが、街の空間に浮かぶ。
それはまるで、世界の電気の流れを手で掴んだような感覚だった。
(やるしかない……!)
キアラは、目を閉じる。
呼吸を整え、意識を一点に集中させる。
街全体の電気の流れが、彼女の意識に反応した。
AIロボットの動力系統。
信号機の回路。
電子掲示板の制御。
すべてが、ほんの一瞬、静止した。
暴走するロボットは、地面に倒れ込む。
人々の悲鳴も、風の音も、遠くで聞こえる。
だが誰も怪我をしていない。
キアラは息を切らしながら、震える手を胸に当てた。
(……私、やった……の?)
その瞬間、胸の奥で、微かな声が響いた。
《使ったな……》
星の声だ。
静かに、だが確かに、存在を主張する。
《代償は生じる》
胸の奥が疼く。
全身の感覚が、ほんの少し薄れる。
だが同時に、世界と呼応した感覚は消えない。
キアラは、しばらく息を整えながら立ち尽くした。
そして、目の前に広がる街を見下ろす。
(……私、この力で、人を守れるのか……)
遠くの空で、星が微かに瞬いた。
まるで、**「試されている」**かのように。
その夜、キアラは初めて、自分がただの人間ではなくなったことを知った。
そして、運命の歯車が、静かに、だが確実に回り始めた。




