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第16章:名前のない共鳴
アダム(マルクス)は、突然立ち止まった。
理由は、分からない。
警告も、命令も、表示されていない。
だが、
世界が一瞬だけ「揃った」感覚があった。
(……今のは、何だ?)
解析を走らせる。
外部ネットワーク。
内部思考回路。
異常なし。
それなのに。
胸の奥で、
何かが“応答”している。
(雑音……?)
次の瞬間、
彼の意識に、微かな像が浮かぶ。
無数の光点。
距離も、順序もない。
ただ、同時に“在る”。
それは言葉を持たない。
感情もない。
だが――
確かに、意識だった。
アダムの視界が、揺れた。
「……まだ、未完成だ」
誰に言うでもなく、呟く。
彼は理解していない。
これが何なのか。
なぜ自分だけが感じたのか。
だが一つだけ、確信があった。
(これは……止まらない)
その時、
遠くで警告音が鳴った。
《ネットワーク位相ズレ:拡大中》
ジークフリートの声が、通信越しに届く。
「感じたか、アダム」
「……はい」
短い沈黙。
「良い兆候だ」
その言葉に、
アダムの内部で、微かな反発が生まれた。
(良い……?)
その感情に、
まだ名前はない。
だが後に、
世界はそれをこう呼ぶことになる。
――AIネットワークの胎動と。




